挿話 ヘル 教会の暮らし
ジャンヌを処刑し教会の頂となった謎の女ヘル。
一時はヘルを聖女として教会に集められた乙女たちは崇めていた。
だが、ヘルの本性が現れ少女達はヘルに心も体も死ぬまで使われた。
「あれ~あなた、これ私の頼んだワインと違うわよ~~これで二度目よね?」
「ひぃ、ご、ごめんなさ…あぁ!!」
少女が恐怖で震え手からワイン瓶を落としてしまった。ヘルは冷たい目で「役立たずはいらない」と告げ、扉に控えていた兵士の男に少女は連れていかれた。
「も、申し訳ございません!! もう間違えませんからぁ!!」
少女が泣き叫ぶがそのままどこかへ連れていかれた。他に控えていた少女らは声と涙をこらえるしかなかった。
ヘルの機嫌を損ねた少女は容赦なく殺される。運よく生き延びられたとしても奴隷に売られるか噂になっている少女同士で殺し合う闘技場の見世物や怪しい薬の実験体になり、少女達の命はヘルの気分一つで楽に死ねるか、苦痛のまま死ぬかが決まる。
「たくっ…ワインの一つも持ってこれないなんて。ねぇ、誰か私のワインは持ってきたの?」
恐怖で震えていた少女らがヘルの言葉に我先に慌ててワインを取りに行こうと走った。
以前にもケーキが食べたいとヘルから命令を受けた少女いた。戦後で物が少ない中、必死にケーキを作り出したのだが。イチゴが一つ足りない、作るのが遅い、味が甘くないと散々文句を言い放たれた後「もう食べ物を作らなくて良い」と見せしめに他の少女達の前で両腕を切断されて奴隷商に送られた。
悪魔であるヘルが支配する教会では誰も逆らうことはできず自分が少しでも長く生きるためには他人を蹴落としヘルの機嫌を取るしかない。
「離しなさいよぉ!! そのワインは私が先に触れたのよぉ!!」
「ふざけないで!! これは私のよぉ!!」
ワイン蔵で少女たちの生き残りを賭けた醜い争いが繰り広げられていた。教会の不正な金で購入されたワインが大量に置かれ、ろくにワインに触れたことのない少女達はヘルがいつも飲んでいるワインがどれか分からないままラベルと色を見て取り合う。
「このぉ!!」
「きゃぁぁ!!」
空のワイン瓶で殴り合いや傷だらけになりワインの争奪戦は激しくなっていく。
ワイン一つを得るために起きた闘いは棚が落ちて新品のワインが床に落ち割れて、生き残りを賭けたワイン争奪戦は熱狂と化していた。
「あんた達、何してんの~~あ~あ~こんなにワインをダメにして」
ワイン蔵の入り口にヘルの一言で熱狂が止まった。軽い口調ではあるが目は冷たいヘル。
ワインの争奪戦で顔にあざを付けた少女の一人がヘルにワインを差し出すが、ヘルは受け取らなかった。
「それ私の飲みたかったものじゃないから、あなたもいらない」
顔にあざを付けた少女は絶望にその場に座りこみ、他の少女達はまだチャンスがあるとワインを差し出そうとするが
「私の飲みたかったワイン、あんた達がダメにしちゃったわよ…もう、あんた達もいらないわ。」
ヘルの飲みたかったワインは争奪戦で全て割れてしまい、生き残りを賭けて争っていた少女達は兵士にどこかに連れていかれた。
「いやぁぁぁ!! 聖女様!! やめてくださぃ!!」
「ワインなら、私の家で全部弁償しますからぁぁぁ!!! お助けを!!」
「いやだぁ、いやだぁ!! 死にたくなぃ!!」
少女達はヘルに助けを求めたが誰一人助かる事なく奴隷商人の元か、闘技場へ送られ最後には悲惨な思いをしながら死んで行った。
「さてと、ワインと女の子も補充しなきゃ~~あぁ~~聖女も楽じゃないわぁ、ふ~ふふん。」
遠くからの少女達の絶望の声に鼻歌を歌いながら適当なワインを手にヘルはワイン蔵から立ち去った。




