辺獄に潜む悪意 1 敗者の門を通った新たな奴隷達
「だずへでぇ、おれも、おれもつれて、いってぇ…」
かつてジャンヌの元で戦いを欲し虐殺してきたドワーフ傭兵のザドジ。
敵を何も考えず葬り、闘いを止めることができずこの地獄の闘技場で若さを失って老いた体で客席に永遠に縛りつけられていた。
「い、いやだぁ!! 俺はもうこんなところいたくねぇ!!」
「く、くそぉ!! この門、武器を捨てねぇと入れねぇ!!」
ザドジら老いた観客達が手を伸ばした先には「敗者の門」と呼ばれる、天井も囲まれたこの闘技場から逃げる事ができる唯一の道だった。この門は武器や鎧を捨てないと通ることができず、彼らは強くなっていく白い敵から逃れるため、愛用していた武具を捨て肌着のまま逃げ出していく。
「へぇ!! 腰抜けどもが…まぁ、お前らの武器は俺がありがたく使ってやるよ!!」
「よっしゃ!! これでうまい酒が飲めるぜぇ!!」
ザドジ同様に血の気の多いドワーフの傭兵らが逃げて行った人族やエルフを見て嗤い、彼らの残した武具を拾う。敗者の門に背を向け闘い続けたドワーフの男達は数時間後、若さを失い永遠に出現する白い敵に敗北し、ザドジと同じ道を辿ることになる。
「はぁ、はぁ!!」
「くそぉ!! ここはどこなんだよぉ!!」
敗者の門を抜けた彼らがたどりついたのは、針山や酸の雨も降らない地獄の中でも比較的安全な辺獄だった。武具もなく下着だけの彼らは紅蓮の雲に覆われた空と草木も生えていない荒れた大地に途方に暮れていたその時。
「「ひっひひひ!! 新しい奴隷だぁ!!」」
「「連れてけぇ!! 連れてけぇ!!」」
「「負けに犬には奴隷がお似合いだぁ!!」」
亡者の馬にまたがった亡者の集団が現れた。亡者の一団はロープを投げ敗者の門を通った者達を捕獲して引く。
「う、うぁぁぁ!! は、はなせぇぇ!!」
武具を捨てた彼らは体に巻き付かれたロープから逃れられず、固い大地や岩に激突しながら引っ張られる。中には亡者やロープに向け魔法を放つエルフもいたが、逃れることはできず体中に傷だらけで、中には頭をぶつけ死亡した者もいた。
敗北者らは亡者に連れられ、奴隷らが建設している城にたどりついた。
「はぁ、また新入りか、ほら。服を着てさっさと働け」
生気のないベテラン奴隷からボロ布を渡され傷だらけの敗北の新人奴隷達は震えながら立派な城を見上げた。
敗者の門を潜れば助かると思っていた元傭兵たちは辺獄で亡者に監視されながらさらなる地獄へと追いやられる事になる。
「「おらぁ!! 城が完成するまでお前らに自由はねぇ!!」」
「「死んでも生き返るから、死ぬ気で働けぇ!!」」
建設所のあちこちから容赦のない鞭と言葉が飛び交い、奴隷達の悲痛な叫びが飛び交う。城の高い部分を作業しているハーピィらの腰には逃亡防止用のロープを腰に巻かれ、重い石を積んでは、また石を運んでと繰り返して「自由に飛びたい」「殺してくれ」とつぶやきが地上にまで聞こえていた。
敗者の門を出た者達は始めの内は抵抗や逃走を考えたが、膨大な数の亡者相手に勝ち目はないとあきらめて奴隷となった。いつ終わるか分からない誰のための者か分からない城建設のため、蟻のごとく鞭を打たれ罵声を浴びせられて目や表情は死んでいた。




