少女闘技場 1 聖女と双子姉妹
地獄のどこかにある地下コロシアム。観客席を見下ろすように造られ、檻に囲まれたフィールドの真中にジャンヌとドレスを着た双子の少女がいた。
「天国への道は開いています。さぁ、二人ともこっちへ」
ジャンヌが地獄に堕ちた双子に手を差し伸べたが、黒いドレスを着た少女が首を横に振った。
「…私はここで多くの命を奪って手を血に染めてきました…私は天国へ行けません。もし天国へ行けるのでしたら妹のアルをお願いします」
「ネロ姉様!! いやぁ!! 姉様がここに残るなら、アルも残る!!」
黒ドレスで姉のネロと白ドレスで同じ顔をした妹のアル。
生前、少女を闘いの見世物にした闘技場で人生を狂わされた双子の姉妹は地獄に堕ちても絆は失われていなかった。
双子の絆を見てジャンヌはジルと同様に救いの手を差し伸べたが、ネロは自分の犯してきた罪を清算したい。アルは姉と共にいたいとジャンヌの救いを拒んだ。
天国に行けば苦しみや理不尽から解放され、負の記憶から生まれた彼女達の亡者が罪人たちを責めるのだが、ジャンヌは再度ネロの意思を確認する。
「本当に良いのですか? この地獄には一切の希望も死もない。あるのは永遠の苦痛だけ…貴女たち双子を苦しめた者に再会し苦痛を思い出すだけ」
ジャンヌの言葉に双子の体が震えた。権力達に体も心も汚され好き勝手されたトラウマが蘇り泣きそうになるが、ネロは腰にある折れた細剣の柄を握りしめ必死に耐えていた。
(やはり、復讐のためですか…)
ネロが地獄へ残る理由に気づいた。元は貴族令嬢として闘いとは無縁だったネロとアルの手は闘技場で剣を握り闘い続け汚れてしまった。
既に両親は処刑され天国へいるのも伝えているが、ネロの頭の中には自分の家族の平和を壊した者どもへの殺意が出て、アルは姉を心配して本気で地獄へ残ろうとしていた。
(この子は私と同じ復讐に囚われている…でしたら、いくら言葉を費やしても意味がない…)
自身も既にグオウとガエルに地獄を与聖女から復讐者と成り下がっている。
今は最後の一人で、エルフの麻薬ポーションをキーリスと結託し世にばらまき、この見世物のコロシアムを支配していたヘルへの復讐に燃えるジャンヌ。
同じ復讐者同士通じあったのか、ジャンヌの目の前に2つの地獄の闇が出現した。
闇は剣の形になり、ジャンヌがアガの体をバラバラにした地獄の闇より造られし剣が双子に渡る。
「復讐を終えるまでこの剣をお貸します。復讐の気が晴れた時には、今度こそ天国へ…」
二振りの禍々しい剣を手にした姉妹。気が付くとジャンヌの姿はなく、残された二人は
「ありがとうございます、聖女様」と声を合わせるのであった。




