天国への階段 二人の祝福と最凶の亡者
天国の教会にて、二人の若者を祝福するため多くの者が集まっていた。
「シーマちゃん、結婚おめでとう!!」
「お幸せに!!」
花嫁衣裳のシーマが人々から声をかけられ、彼女の隣には白い衣装を着こんだジルが歩いていた。
二人は教会で偶然出会い、なぜか前からお互いを知っていたかのように仲良くなり添い遂げるようになった。
神の使いであったシーマはシスターを辞めるのに最初は悩んだが、何故かジルと一緒にいたい気持ちが強く、これからは一人の女性として夫と家庭を築いていく道を選んだ。
「その、シーマさ、ん…」
「もう、さんはいらないですよ、ジル」
「そうですか…なら、シーマも敬語はいらないな…」
ぎこちない会話だが、二人は幸せそうな笑みを浮かべ人々から投げられる花の雨を通りすぎていく
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ジルが天国へ昇った後も天国への階段は残されていた。
紅蓮の空の隙間から見える綺麗な天国の風景を目指し罪人たちは厳しい環境を乗り越え、亡者から逃げ階段を上がる。
「くそぉ!! どけよぉ!! この人族がぁ!!」
「や、やめてくれぇ!! うわぁぁぁ!!」
階段を独占しているドワーフ達が次々と人族を蹴落としていく。他にも空を飛べるエルフや翼のあるハーピィ。水の魔法で波を生み出しウンディーネらが天国を目指す。
さらに、地獄や辺獄の空だけでなく、天国の風景は鏡や水。瓶の表面などに映し出されていた。
「あぁ、メシ…水…くれぇ、俺にもくれぇ…」
「おれも、そっちへ行きたい…この痛いのはいやだぁ…」
飢えている者や拷問を受けている罪人は天国の風景を見て手を伸ばす。
罪人たちにとってどんなに願っても手を伸ばしても決して行くことができない天国の風景は止めの一撃でもあった。
「おねがいぃぃ、私もそっちへいきだぃぃぃ!! 」
「たすけでぇぇぇ!! こんなところ、もういやだぁぁぁぁ!!!!」
「なんで、なんであんたがそっちにいんのよぉ!! 私を助けなさいよぉぉぉ!!」
地獄にある孤児院や闘技場。学園などあらゆるところから絶望の声が上がった。
天国の住人達は笑顔で何一つ苦痛もなく穏やかに過ごし、生前見下し馬鹿にしていた者の幸せな姿を見て、加害者たちの心に嫉妬や焦燥感が生まれる。
そして、天国へつながる階段では。
「あぁ!? なんで人族のゴミがこんなところにいんだよぉ!!
「そこどきやがれぇ!!」
階段の途中で一人の男が立ちはだかった。ドワーフらは人族なら楽勝と馬鹿にして、男に暴行しようとしたが。
「う、うぁぁぁぁ!!」
「た、たすげでぇ!!! うぁぁぁぁ!!」
力自慢のドワーフ達が階段から落とされ地面に大きな穴と潰れたトマトの跡が作られた。
「なんだよ、こいつ人族じゃねぇのかよ!! うぁぁぁぁ!!」
人族の男、ジルの亡者が片手でドワーフを階段から落とした。
「な、何よあの男…あれも白い化け物なの…」
「ふん、化け物だって飛べなきゃどうって事ないわよ…」
ハーピィらがジルを見下して天国へ向かおうと飛ぶが、疾風が起きた次の瞬間ハーピィらの翼はもぎ取られ一体、また一体と絶望の声を上げて落ちて行った。
教王ガエルを仕留めた合成亡者シーマが空にいる者達を阻む。
そこからは蹂躙の時間だった。
階段にいたドワーフらをジルが落とし、上空にいたエルフやハーピィ。波を作り浮いていたウンディーネらをシーマが始末して、地上では落下の穴とトマトの跡が作られた。
「に、にげろぉ!! こんな化け物相手できるかぁ!!」
二人の最凶亡者に勝てないと判断して残りの者は逃げていく。ドワーフらは武器を捨て階段を降り、ハーピィらも階段から離れシーマに追いかけられる。
「…あぁぁぁぁ、ジャンヌ…全ては、あなたのために…」
階段にいたジルがうねり声をあげ、シーマと同様に各種族の特徴を持った合成亡者の姿になりドワーフらを一掃した。
地獄の主であるジャンヌが最も愛して信頼した二人の亡者は、最凶の番人として君臨し何度も天国行きに挑戦した罪人たちの心をへし折った。




