暴力地獄 3 ガエルの最後
地獄の遥か上空。紅蓮の空に魔法の障壁を張り、身を隠していたガエルがいた。
「なんだ、あの化け物は…くぅ、また分身がぁ…」
地獄や辺獄に散らばった分身たちが次々とシーマのせいで消失し杖を握りしめ焦っていた。
分身から送られた情報が頭に浮かび、亡者たちと融合し完全に異形とかしたシーマの亡者が原因だった。
分厚い魔法の壁はドワーフの腕とウンディーネの尾で破壊された。分身がいくら素早く空を飛び、魔法で姿を隠してもハーピィの力強い翼で追いつかれ、エルフの魔法で居場所がばれていた。
「一刻も早く、教会を探さねば…ん? これは…ついに見つけたか!!」
最後に残った分身からついに教会を見つけた知らせを受け、ガエルは全力で飛んだ。
あの化け物どもを撃退するには、一体でも多くの亡者を解体して調べるしかない。
教会の研究所に行けば人員も機材もそろっている。運がよければ保存している魔法の血を補充できるかもしれない。休まずに数時間飛び視界に白い教会が見えた。
教会の頂上にはガエルの分身もおり、まだシーマに見つかっていないと安堵したが、突如、疾風が起きた。
「みつけた…」
「ひぃ!?」
本物のガエルが悲鳴を上げた。教会の頂上にいたはずの最後の分身が、全身をバラバラに八つ裂きにされ消滅した。分身なので痛みはないが、目の前で八つ裂きにされた光景を見て恐怖で魔法の壁を作り、飛び出してきたシーマが壁にぶつかった。
「よくもよくもよくもよくも…」
「ば、化け物のくせに私を誘いだしたのか!! シーマ!! 孤児だったお前を拾ってやったのは私だ!! この恩知らずがぁ!! 」
亡者シーマが他の分身を消し、最後に教会にいた分身を残したのは本体をおびきよせるためだった。小娘の策にはまりプライドが傷つけられ醜く怒鳴り散らした。
頼りの魔法も効果がなく、自身を守っている魔法の壁をガンッガンッと豪腕や鋭い足の爪で攻撃されて傷が生まれる。
パリィン
「ぐぅ!! く、くるなぁ!!」
壁が割れるとガエルはそのたびに新しい壁が出現させた。シーマから背を向けて逃げようとしても疾風が吹いて気づけば周り込まれて逃げられない。分身を出し攪乱しようにもシーマの猛攻を防ぐのが精いっぱいで、ほんの一瞬でも気を抜けば壁が破られ確実に殺される。
(どんなに力があろうが、所詮小娘…私に逆らいおって。その体、研究させてもらうぞ)
シーマの攻撃が体を使った単調な物になっているのに気づきガエルは前方のみに分厚い壁を集中していくつも張った。
「あぁぁぁぁぁ!!!!!」
亡者シーマが躍起になり壁の破壊に集中している間にガエルは杖を両手に持つ。
(大量の血を消費するが、私さえ生き延びれば何度もでもやり直せる…)
「うがぁぁぁ!!!!!」
二人の間を遮っていた最後の壁が破壊され、亡者シーマが目の前にいるガエルをつかもうと腕を伸ばすが、シーマの動きが止まった。
「はぁ、はぁ…所詮力があっても知能が獣であれば…はぁ、はぁ…」
息を荒げるガエル。シーマの体を光の鎖が何重も縛りつけ動きを封じていた。
「がぁぁぁぁ!!」
獣のように吠え暴れるが鎖は軋むだけで壊れない。勝利を確信したガエルは高笑いし障壁を前のみ張りなおしてシーマの顔面前まで近づく。
「所詮知恵も足りぬ小娘が、私に逆らうなぞ万死に値する…貴様を解体して、他の化け物ども、あの死にぞこないの小娘も骨も肉も残らず解体してやる。ハハハッッッ」
「教王…ガエル…」
鎖がちぎれぬことに観念したのかシーマの動きが止まった。シーマの顔はジャンヌをけなされたのか唇を噛みしめ涙を浮かばせていた。
「ジャンヌ…ごめんなさい…」
「ハハハッッッ、お前たち小娘は黙って私の研究材料になればいいんだよ!! 後で、あの小僧の血も一滴残らず搾取してやる!! 全ての魔法は私の物だぁ!! ハッハッハッ!!」
高笑いするガエルに対してシーマはうつむいて動かない。
勝利を確信して、シーマに背後を見せ教会を上から見下ろす。
「さて、まずは血の補充をせねば…はっ?」
ガエルの背後からウィンドカッターが飛び、ガエルの首と胴体が落ちてゆく。
「へぇ、はぁ…あ…」
死の間際にガエルは何が起きたか気づいていなかった。殴る蹴るばかりを繰り返したせいでシーマも魔法が使えた事を忘れていた。生前のシーマは回復魔法が得意であったがエルフの亡者も取り込み魔法の力も増強された。
しかも、勝利を確信して前にしか壁を張っていなかった。自ら無防備な背後を自ら晒したことによる敗北。策を張り魔法を操っていた知恵者は最後の最後で、亡者シーマの策と魔法に敗れ、教会の天井に頭と胴体が突き刺さった。




