暴力地獄 2 復讐するシーマの亡者
「人々の命を弄び外道に走った教王よ、死すら生ぬるい罰をその身に受ける時がきました」
魔法で空を飛ぶガエルに向けジャンヌは剣を向けた。大地を白く覆うほど膨大な数の亡者達はガエルに向け恨みの言葉を吐き続け騒がしい中、ガエルは余裕の笑みを浮かべていた。
「小娘が一体何の魔法かは知らんが、相変わらず知恵のないのぅ」
ジャンヌが何かに気づき拘束されているジルを見る、そこには分身でもう一人のガエルがいた。
「しまった!!」
「動くな!! 動けばこの小僧の首を跳ねるぞ」
白い杖から氷の刃を出し脅しにかかる。ジャンヌは屈辱に顔を歪め、二人のガエルをにらむ。
「平民の小娘のくせにでしゃばるからこうなる。まずはその化け物どもを下がらせてもらおうか」
早くしろと氷の刃がジルの首皮を薄く切り血が流れる。ジャンヌは観念したのかうつむき小さく「わかりました」と告げ亡者達が地面に戻っていく。
「これでいいでしょうか? 言うとうりにしました、だからジルを…」
解放しなさいと言おうとして、3人目のガエルが背後からジャンヌの体を白い杖で貫いた。
「が、はぁ…」
「はっはっは!!所詮、知恵もない小娘だ。せいぜい、貴様の血も有効活用させてもらうか」
3人のガエルが高笑いした。そのまま杖でジャンヌの血を吸いさらなる力を得れると確信したのだが異変が起きる。
「な、なんだ…なぜ血を吸えん…ぎゃぁ!!」
背後から襲撃した分身ガエルの首が飛んで消えた。一滴も地を流していないジャンヌの体がボロボロと砕け白い亡者が姿を現す。
「教王…よくもジャンヌにひどい事を…」
「お、お前はシーマ!? くそぉ、小娘が姑息な手を!! こうなれば!!」
ジルを人質にしていた二人目のガエルがジルの首を跳ねようと手を動かした時。急速に地面やジルを拘束している大地の手から無数の白い手が伸びて分身ガエルを拘束した。
「う、うぁぁぁぁ!! やめろ、放せぇ!! 」
二人目のガエルは叫びながら最後の抵抗に大地を揺るがす。しかし、大地をすり抜けてしまう亡者には何も影響はなく分身体は消えてしまった。
「お、おのれぇ…」
上空にいたガエルは魔法の壁を自身の周りに貼り、急いでその場から逃げる。
亡者達は空にいるガエルに向け追い、中にはエルフやハーピィなど魔法や翼で飛べる亡者が追いかけてくる。
「くそぉ!! このゴミどもがぁ!!」
迫ってくる亡者達に向け魔法を連発した。分身体同士でも血の供給がされ、先ほど子供やジルの血を吸収した分身が消えても、本体や残りの分身も貯蓄していた魔法の血を共有して使うことができる
「ファイヤボール!! ウィンドカッター!! アクアブレッド!! グランドウォール」
人族やエルフが使える基本的な属性魔法を連発し迫る亡者にぶつけるが無駄に終わる。
亡者の白い体には傷には傷もなく、ひたすら追いかけてくる。
(無駄なことを…所詮は浅知恵しかない小娘だ…)
魔法を連発して抵抗が無駄に終わってもガエルは汚い笑みを浮かべていた。今、こうして上空に浮かんでいるガエルもまた分身で、本体は遥か上空にいた。地獄中にばらまいた分身たちも亡者の襲撃を受け本体を守る囮になっていた。
(私はこんな訳の分からない場所にいつまでもいてたまるか。教会に戻り、研究を続けなければ…そこらの者を人質にとればあの小娘も姿を現すだろう…)
ジャンヌをおびき寄せる方法を考える分身ガエル。ジャンヌを倒しこのおかしな世界と追いかけてくる亡者を黙らせる方法を聞き出す算段を立てていた。そして思考に没頭するあまりに亡者達の変化に気づいていなかった。
「ジャンヌ…ジャンヌ…ジャンヌ…」
膨大な亡者の波の中、逃げているガエルを追いかけるシーマ。何百も何千もジャンヌの名前を口にし、親友を助けきれなかった後悔や恨みがシーマの亡者に変化を与えた。
周りの亡者達とシーマの亡者の体が溶け合いその数は段々と増え、上空で追跡してきたハーピィやエルフ達も混じって変貌していく。
「教王…あなた、だけは、ゆるさない…」
数えきれないほどの亡者を取り込んだシーマの亡者は異形と化した。
エルフの尖った耳に長身の体。ドワーフ並みに筋肉が発達し尻尾にはウンディーネの強靭で鱗が生えた尾があり、背には巨大なハーピィの翼を持ち力強く動かし飛んだ。
「低能の化け物どもめ、貴様らごときに私が…ぐぇ!?」
突風が吹いたと思った次の瞬間、分身ガエルの体が上下に分かれた。
各種族の特徴を持った合成亡者ことシーマがガエルの頭を尻尾で捕らえ下半身だけ落下した。
「ひぃ!! ば、化け物!!」
「あなただけは、許さない…私がこの手で…」
大木並みの尾がわずかな力を入れただけで、ぐしゃと音が鳴り分身ガエルが消え去った。
恨みと憎しみにより合成亡者と進化したシーマが一瞬はるか上空を見上げた後、どこかに飛び去ってしまった。




