表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/103

暴力地獄 1 ジルとガエル

多くの魔法の血を求め地獄をさまようガエル。右腕に鎖ごと巻き付いている白い杖には乾いた血がこびりついていた。


 「まだだ、まだ血が足りぬ…」


 魔法の追求はガエルの生きがいであり、そのために魔法を血を子供から大人まで一滴も残らず吸い取ってきた。


「白い化け物どもが邪魔だ、アガ達はどこにいる…」


 自身の手駒であるシスターらがいないことに舌打ちしながら、杖を振るうとガエルの分身が30体程現れた。

 

ジャンヌが生前使っていた不思議な現象を起こす杖。本来は魔法の血などないジャンヌに魔法の力を与えてくれた強力な矛だが、ガエルが無理やり魔法の血を吸わせたことで誰でも扱えるようになった。


 亡者どもの目を欺くのと、地獄の調査のため分身達が放たれガエルは血を求めて再び地獄の空をさまよう。



「ひっひ、な、なんで俺の体がそこにあるんだよぉ!!」


「だずげで、いだぃ…」


「お、おれの体、やめろぉ!! ただぐなぁ!!」


 ここは生前暴力を振るい続けた者が堕ちる暴力地獄。

 首と胴体が分かれ、身動きできない者の体を暴力の被害者の記憶から生まれた亡者達がひたすら殴り蹴り、石を投げ罪人を苦しめる。


 そこには生前、ジャンヌを救い出すだめ謀反を起こした際にジルを裏切り者の姿もあった。

 罪人たちは体を動かすことができず泣き叫ぶことしかできなかった。


「いっひひひ!! おあぁ、的当てだぁ!!」


「この悪魔めぇ!!」


「くらぇ!! おらぁ!!」


 子供の亡者達が逃げる罪人たちを石を投げ追いかけていた。無限の体力を持つ亡者に追いつかれ、一人、また一人と生前ジャンヌに石を投げていた者を囲い力強く石を投げつける。


「や、やめで、石なげないでぇ。いだぃ、いだぃ!!」


 亡者に囲まれ石を投げられている子供がおり亡者達は岩石を持ち子供に向け叩きつけようとして一人の男に止められた。


「やめろぉ!!」


 亡者の暴力を止めようと剣や魔法で亡者達を攻撃するジル。ジャンヌを助けることができなかった後悔から自分から地獄へ堕ちることを願い、ジルは目の前の子供を助けるために亡者達に攻撃するが無駄に終わる。


「や、やめろぉぉぉ!!」


 数の多い亡者に阻まれてジルの目の前で子供の頭に岩石が叩きつけられた。

 その子供がジャンヌに向け遊び感覚で石を投げていたなど知らずジルは膝をつき死体を抱きしめる。


「くっ!! お前達はいったい何なんだぁ!! どうしてこんな惨いことを!!」


 亡者達に怒りの声を上げるジル。亡者達は邪魔してきたジルを興味のない目で見つめる。

 すると、手にしていた石を落とし他に逃げた罪人たちを追っていく。


「どうして、どうしてこんな…」


 ジルはここはどこなのか? 自分は死んだはずなのにどうして生きているのか? 混乱していると


「ほぅ、貴様はジャンヌのところにいた…」


 上を見ると血に染まった白い杖を持ったガエルがジルを見下ろしていた。


「お、お前、その杖は…ぐぁ!!」


 ジャンヌが使っていた白い杖を見て声を上げると、ガエルの魔法により地面が盛り上がりジルの足を拘束した。


「その杖はジャンヌの!! お前は何者だぁ!!」


「知ってどうする、これから死ぬ…いや、この世界では死しても蘇るか」


 ガエルがつぶやくと、先ほど頭を潰された子供が蘇った。

 

「ひぃ、いやだぁ、痛いたすけてぇ…ひぎぃ!!」


「うるさいガキだ…貴様の血をよこせ」


 ガエルが子供の頭に杖を差し、血を吸い上げる。


「や、やめろぉ!! 何をしている!?」


 ジルの言葉に返事もせず血を全て抜き取り干からびた死体が誕生した。


「所詮子供では大した質も量もないか、だがここで貴様に会えたのは幸運だ」


 ガエルがジルに杖を向ける。


「くぅ!! アースウォール!!」


 自身を拘束している土を剣で破壊し、ジルの放った大地の壁がガエルに迫る。


「ほう、あの小娘の駒にしてはやるではないか。流石に貴族の血の質も量も違うか」


ガエルがつぶやき、杖を軽く振るう。ジルの生み出した大地の壁が砕け、今度は地面が揺れ大量の砂や土が巨大な手の形をしてジルを押しつぶす。


「ぐぁ!! 」


「その血、全ていただくぞ。小僧」


 白い杖を向けられるジル。


「お前、まさか、ガエルなのか…?」


「今更気づこうが、貴様には関係ない」


 杖がジルの額に刺さり、血を吸い上げる。


「ぐぁぁぁ!! や、やめろぉ!!」


 体内から血を抜かれ体温が失われる恐怖に暴れるが、拘束している大地の手から逃れられない。意識が薄れていくいなか、ガエルの声が聞こえた。


「実に愚かな。あの小娘のために地位も財も捨ておって、何もせずにいればこんな事にはならなかったろうに」


「ふざ、けるな…じゃ、あの人を…ジャンヌを侮辱するな…」


「ほぅ、貴様のおかげでだいぶ血が溜まってきたぞ…喜べ、その血で私の研究が完成に近づいたことに…ちぃ!?」


 地面から白い手が伸びガエルは空に逃げた。地面から人族からエルフ、ドワーフなど全ての種族の亡者達が現れ空にいるガエルに向け手を伸ばし「教王様」「血を返して」と繰り返し訴えた。


 「後少しのところを…」


 「観念しなさい、ガエル」


 地上にいる亡者達の中に禍々しい鎧を着たジャンヌが姿を現す。


「貴様はっ!? ジャンヌ!? 貴様がこの白い化け物を操っていたのか!!」


 まさかジャンヌがいるとは思わずガエルは叫んだ。大地の手に拘束されていたジルはかすかに残った意識でジャンヌを見つめた。


(夢なのか…ジャンヌがあそこに…)


 血を大量に奪われジルは気絶した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ