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聖女の頼れる右腕 ジル・ド・レ

「ジャンヌ、また一人で無茶をしましたね?」


「えと、その…ごめんなさい」


 暗黒時代の戦時中、テントにて純白の聖衣を着るジャンヌと彼女を叱る若い貴族の青年がいた。

 彼の名前はジル・ド・レ。国王ブオウによりジャンヌの傍で監視を命じられたスパイでもあった。


だが戦を共に駆け懸命に戦うジャンヌの姿に惚れて、ブオウの命令を無視し今では信用できる戦友となった。


「転移玉は中の構造の分からない建物で使ったら、壁に埋まるどころか敵に見つかる危険があるのに…」


 ジルはジャンヌが神から授かった3つの魔法道具マジックアイテムを見てため息をつく。


「勝手に敵陣へ偵察に行って…魔法の杖だって、奇跡を起こすのには貴女の血が必要ですよね。砦から火の手が上がってましたけど?」


「そ、それは…」


 ジャンヌはまるで、いたずらがばれた子供のように委縮していた。人々から聖女と呼ばれ崇められた少女は一人の信頼できる相棒の前では一人の子供だった。


「ふぅ、あなたは嘘やごまかしをすると、すぐにうつむく…おや」


「あの、ジャンヌは帰ってこられてますか?」


 テントにシーマが入り、ジャンヌはすぐさまシーマに寄った。

 

「し、シーマ。ちょうどいいところに…」


「ジャンヌ、シーマ様に甘えても無駄ですよ」


「え、えとジャンヌ? それにジルさん?」


 事情を聴いたシーマは「一人で偵察なんて、なんて無茶を」と怒り、二人の説教は長く続いた。だが、説教が終われば3人はたわいのない話を愉しんでいた。


 ジルの領地で起きたおかしな事件や、シーマが治療した子供達が元気に花をくれた事など、3人の間で笑い声が聞こえた。


「まったく、ジャンヌはシーマ様を見習ってほしいところだ…」


「い、いえそんな!! 私は」


「ジル…あなたは、真面目過ぎなのですよ…」


 ジャンヌは恨めしそうにするが、自分を聖女や小娘でなく一人の人間として接してくれる彼の切実さに二人の聖女は信頼を寄せていた。


 そして戦争終結後にジャンヌは3人の権力者たちに陥れられ投獄された。

 教会に必死に掛け合うシーマとは別に貴族や王に無実を訴え続けたジル。だが、誰もジルの言葉に耳を傾けず、シーマがガエルにより囚われた時。


「ジャンヌ…今、お助けいたします…」


 全て財や権力を捨て数少ない戦力でジャンヌの収監されている城に迫る。

 英雄の一人から逆族となり武器を手に国に闘いを挑んだ。自身の身が地獄に地獄に堕ちても構わない覚悟で進軍するがジルが城にたどりつくことはなかった。


「悪いなぁ、あんたを殺せば大金が手に入るもんでなぁ」


「それにしてもあんた、馬鹿だねぇ。あんな魔女のために貴族の地位も金も捨てて」


「馬鹿は死ななきゃなおらねぇよな!!」


 ジルの行動は全て筒抜けで金で集めた兵は既に國公グオウに買収されていた。

 背中から剣や弓が貫き、大量の血を流しながらジルは


「い、いまいきます…じゃ、んぬ…」


 最後の最後までジャンヌのいる城に向け手を伸ばしたところで、ジルの首は切り落とされてしまった。


ジルの遺体は反逆者として晒され、石や魔法の的になりボロボロのまま放置された。

そして間もなく、ジャンヌの処刑が開始された。


「この!! この悪魔めぇ!!」


「くらぇ!! おらぁ!!」


 真実を知らない子供達が遊び感覚でジャンヌに向け石を投げた。中には魔法で手足や皮膚を焼き、指潰す者もおり磔にされたジャンヌから苦痛の声が上がる。


かつて平和のために戦った聖女は、悪意ある者達のせいで人々に石や魔法をぶつけられ業火に焼かれてしまった。


 そして、人々に平和を与えた自分の罰として地獄の主となったジャンヌは亡者達を引き連れていく中、紅蓮の瞳に二人の人間が映り立ち止まった。


一人は紅蓮の空を魔法で飛び地獄や辺獄にいる者から魔法の血を強奪しているガエル。

そして、もう一人、ガエルの進む先で亡者から子供を守っている男でジャンヌは叫んだ。


「…ジルっ!!」


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