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エルフと禁断の麻薬花 1

「キーリス!! やめろぉ!!」


「我ら同胞を粛清など、馬鹿なことをっ!! ぐぁ!!」


 ジャンヌがあらぬ罪で捕らえられた後、エルフの里ではジャンヌを信じていた者の粛清が行われていた。教会では新しく聖女となりジャンヌを陥れたヘルがジャンヌに加担した者は全て悪であると宣言してしまったからだった。


「もっと燃やせ。この者達は魔女に魂を売った悪魔だ。せめて、同胞である我らの手でその魂を浄化してやるのだ」


 長身で銀髪の女エルフことキーリスが命令し、磔になった同族達にファイヤボールが向けられる。今燃やされているのは長を含めた里で重役としており、暗黒時代にジャンヌと共に闘い英雄と讃えられていたエルフたちであったが、今は憎悪の対象として粛清と言う名の処刑にあっていた。

 

「キーリス!! ジャンヌは決してそんなことをする人ではありません!! 皆を放しなさい!!」

 

 磔にされた金髪で美しい里長の女エルフが血の気のない顔で必死に叫んだ。

 彼女達の手首足首からは大量の血が流れ、魔法の源である血が失ったせいで魔法が使えず逃げることができなかった。


「何を血迷った事を…人族など基礎魔法もろくに使えない弱者といただけでもエルフの面汚しだ!!」


「貴様らがあの魔女と通じて我らを奴隷商に売っていたのだろうが!!」


「裏切り者!! めぇ!! よくも私の家族を!!」


これまで里を守り仕切っていた彼女の言葉に誰も耳を貸さない。既にキーリスにより買収、または磔にされたエルフ達のせいで家族が売り飛ばされたと嘘の情報を信じて醜い笑顔を見せるキーリスの派閥に組み込まれてしまっていた。


「長…いや、売女。あなたの代わりに私がこの里を管理してあげるわ…大丈夫、あなた達が根絶やしにしていたアレは有効活用させてもらうから」


「キーリス…まさか、あなたぁ…あの花を…げほぉ…」


 大量出血で意識が朦朧とし始めて長の目の前が真っ黒になる。


(なんて事なの…彼女の目的があの花だったなんて…)


 体中が焼かれ綺麗だった肌が焼かれて黒く染まっていく。既に他のエルフ達は出血死や肺が煙でやられ息ができず死亡した者もいた。


(これは、悪意ある者の陰謀…ごめんなさ、い…ジャンヌ…あなたを助ける、ことができ、ず…)


 長エルフは最後までジャンヌの身を心配していた。人種でありながら権力に無欲で誰とも対等に話せるジャンヌを信用し共に戦場を駆けた。長エルフはおそらく国王ブオウか教王ガエルの陰謀だと気づいていたがそのまま業火に焼かれ灰となった。


「さぁて、これから忙しくなるわね…」


 邪魔者の抹殺を終えてキーリスの口元は笑っていた。

 

 ジャンヌが処刑され彼女を信じていた者の魔女狩りが行われた後、時代は暗黒時代へ逆戻りした。一度は落ち着いた種族間の差別が再び起き紛争が何度も繰り返された。


 負傷者が増え回復魔法を使える者、そしてエルフの里から作られた回復薬であるポーションが高額であちこちに配られるようになった。


「くそぉ!! おい、薬はぁ!! ポーションはねぇのかっ!!」


「お願い!! いくらでも金は出すわ!! あの薬を、あの薬じゃないと落ち着かないのぉ!!」


 薬屋に人々が殺到するようになり、中には戦場に行かない老婆なども怪我をしていないのにエルフの薬を自分のために有り金全てを持ちポーションを求めていた。


 人族だけでなく、ドワーフやハーピィ。ウンディーネらもこのエルフのポーションを手に入れようと高額で転売しされたのを買い、中には隣人の手にある者を殺して奪う事件が多発して紛争とは関係ない場所で毎日血が流れるようになった。


「ふふふっ、花の栽培も良好…お金も増えてもう最高ね♪」


 同族の粛清後にエルフの里の一角に大きな建物が作られ、そこでは赤い花が大量に育てられていた。異様なのは指揮をしているキーリス含め、全員が全身を覆う防具服やマスクをしており慎重に花の花粉を採取してポーションに混ぜられ厳重に蓋をされて運ばれていく。


 この花はケシと呼ばれる麻薬の花で、粛清され処刑された長エルフ達が根絶に全力を入れていた呪われた花だった。この花の花粉を吸い脳に達してしまうと中毒症状を起こし、中毒でケシの花粉入りのポーションを求めて人々が禁断症状を起こし暴走したのが原因だった。


 だが、この花の正体を知っていたのは既にこの世にはいない重役たちと、薬調合で里では右に出ないほど博識なキーリスのみで現在里では回復を促す貴重な花として嘘の情報を流され信じ込まされていた。


「ちょぉ!! お前、マスクをずらすなぁ!! キーリス様に殺されるぞぉ!!」


「す、すまねぇ…けどよぉ、こんな暑くちゃ息ができねぇ…それに、もう限界だよ俺…」


「何日も休みなく疲れたよぉ…」

 

キーリスが長になってから彼女側についた若いエルフ達はひたすら休みもなく働かされていた。長時間暑苦しい恰好をしてポーションと花を混ぜる作業は単調だが苦痛でしかなかった。しかも、ポーションで得た利益はほとんどがキーリスが奪っており身を粉にしている彼らにはその日を食べれる賃金しか渡されていない。

 

「ふぅ、若い男は使えないわねぇ…そろそろ奴隷にでも買い替えようかしら?」


「それなら、私の方で用意してあげましょうか?」


 キーリスの背後に純白の衣を着たヘルが姿を現した。ケシの花粉が充満したこの建物の中で防護服がなければすぐに禁断症状を起こすのだが、ヘルには魔法も毒も全て無効化できる神の衣があり平気な顔をしていた。


「これは、これは聖女様。いつもポーションお買い上げありがとうございます」


「いいぇ、こっちこそ。あなた達の花粉入りポーションが欲しいって貴族から平民まで大人気よ?」


 ヘルが軽く会釈するが言葉の中のトゲにキーリスは眉をひそめた。ジャンヌから奪った衣のせいでこの得体の知れない聖女には得意の魔法も毒も聞かず厄介な存在だった。

 二人は利害関係にありキーリスは麻薬ポーションの製作。聖女で大きな権力を持つヘルが人族や裏で他の種族へ麻薬ポーションを運搬し高額で売りさばく。


 お互いの懐には今栽培しているケシの花畑が埋め着くされるほどの金があり、その分多くの犠牲者が出ているがこの二人には良心の痛みなどまったく無かった。


「今日は様子を見に来たのとあいさつだけだから…さっきの奴隷が欲しいのならいつでもどうぞ。教会には素直でなんでも言うことを聞く子供達がいるからねぇ」


「えぇ、考えとくわ…」


「あぁ、それと。注文してた薬できた? 薬でかわいい子がぐちゃぐちゃになる瞬間が最高で…おっと、あなたは闘技場には興味はなかったわね」


 ヘルは裏で少女同士が戦う闘技場の管理をしており、キーリスの調合の腕を見込んで薬を頼んでいた。  もちろん、傷を癒すだけでなくより闘いを盛り上げるために使うためだ。

 

 キーリスから薬を受け取り、ヘルはそのまま建物から出て行った。


「何が聖女よ、あの女の方が魔女じゃない…人族のくせに…あんたも、その布切れ剥いだら薬漬にしてやる…」


 人族の分際でまるで自分を見下しているヘルに怒りを吐き捨てた。

 一方でエルフの里から魔法で浮かび去っていたヘルは。


「やっぱりエルフは馬鹿ねぇ、このポーションがいつまでも続くわけがなにのに…まぁ、闘技場で使える薬が手に入るならいいや」


 これだけポーションを求めて血を流し続ければ誰だっておかしいと気づく。人族やドワーフにだって人体実験などで薬品を調べる方法はいくらでもある。もし、麻薬花の存在を公表されれば間違いなくエルフの大規模な魔女狩りが行われる。


 だが、今は公表しない。ヘルもある事情で麻薬ポーションが必要であり、用済みになればまたジャンヌのように人々にキーリスを処刑させればよい。そうしてしまったらエルフに対する憎悪が増えエルフが根絶やしになる可能性もあるがヘルには知った事ではない。


「もう少しだけ待ってみようか…あぁ、忙しい、忙しい…聖女なんてなるんじゃなかった」


 愚痴をぼやきながら、ヘルは教会へ戻るのであった。


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