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聖女の最後と地獄の始まり。

「これより、ジャンヌの処刑を開始する」


 ボロボロの衣を着こみ、長かった白髪を短く切られた無残な少女が磔の中燃やされていく。


「あつぃ…苦しい…痛い…」


 少女の名はジャンヌと言い、かつて他種族による長き戦争を止め平和の聖女と呼ばれ人々から慕われていた。だが、ジャンヌの作り上げた平和ががつまらないからと、仲間や貴族たちは情報操作や偽りの罪を作りジャンヌを偽の聖女として民衆の前で処刑してしまった。


「いいぞぉ!! もっと燃やせ!」


「この聖女を語った偽物め!!」


「よくも私たちをだましたわね!!」


 広場には人族だけでなく、強力な魔力を持つエルフや力強いドワーフ。翼を持ち空を駆けるハーピィや海を泳ぐウンディーネたちが悪意をむけた。


 磔にされる道中、石をなげられ魔法の的にされてジャンヌの体はすでにボロボロだった。


 そして、ジャンヌの苦しむ姿がよく見える高台には平和に飽きてあくびをする王。ジャンヌが死んでこれから戦争で腕を試せて武器の手入れをする傭兵たちがいた。


 他にも、ジャンヌに仕えていた義賊の男は女子供の人身売買ができることに喜んだ。

 

 ある者はジャンヌが闘技場を閉めたせいで稼ぎがなくなりイライラしていたドワーフの大男などもいた。他にも、これまでジャンヌのために動いてい者は誰も助けない。


 ある女から「ジャンヌを消すことに協力すれば好き放題できる」と甘い言葉を聞かされたせいでジャンヌを裏切った。


 その女は、ジャンヌが着ていた神の加護が付加された白い聖衣を纏い青髪を揺らし民衆を煽る。


「さぁ、偽りの聖女よ!! その穢れた魂を地獄の底に落とすがよい!!」


 ジャンヌから何もかもを奪った女が叫び、人々の罵声の中ジャンヌの体は灰になり灼熱の業火の中、彼女は悟った。


 平和を人々に与えた自分は愚かだった。平和を与えた結果、人々を堕落させてしまったと。


 他種族による価値観の違いや差別により戦争や飢餓を何度も繰り返してきた暗黒時代を自分の人生を犠牲にして止めた少女はかつての仲間たちや民衆の前で処刑された。


 その魂は地獄に落ちたが、彼女が地獄で苦しむことはなかった。


 なぜなら、神に愛され平和を築いたジャンヌが地獄に受け入れられたからだ。

 

 地獄の毒蛇や蟲だけではない、ドワーフよりもはるかに強力な鬼や何もかも溶かす酸や溶岩などありとあらゆる生物、無機物がジャンヌの意思を読み取り動いてくれるからだ。


「平和を作ったのは私、そして、その平和で人々を堕落させたのも私」


 ジャンヌの瞳は使命に燃えていた。

 

 かつて教会で神の声や平和のビジョンを見せられ立ち上がった時のように今度は自ら作り上げた平和を地獄に変えるため、まがまがしい鎧を着たジャンヌは立ち上がった。


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