攻略対象者に転生したので最推しの悪役令嬢を溺愛します
攻略対象者に転生したので最推しの悪役令嬢を溺愛します
俺には妹がいた。可愛らしい、素直で、ちょっと天然気味な良い子だ。そして恋に恋するお年頃である。
そんな妹に、ある日突然乙女ゲームを勧められた。いやいや、俺は男だと言うと、いいからプレイしてみて!この悪役令嬢絶対お兄ちゃんの好みドストライクだから!と言われて仕方なくプレイしてみた。
結果、俺は悪役令嬢…ルイーズ・オーヴェルニュにどハマりした。それはもうどハマりした。二次創作だってしたし、何回も乙女ゲームをプレイした。ルゥはとっても美人で、どこか儚げで、ぼんきゅっぼんのナイスバディで、口調がキツくて、でも言ってることは正論で、というかヒロインへのイジメとやらも実際には男爵令嬢風情が婚約者がいる高位貴族令息達を誑し込むのを危ぶんで口頭注意しただけだったり、礼儀作法のなっていないヒロインを叱ったり色々なことを教えてやったりしていただけだった。しかしルゥは必ずざまぁされ不幸になる。なんてゲームだ!
まあそんなこんなでルイーズに対する熱意が冷めることはなく、数年後俺は川で溺れた男の子を助けるために短い生涯を終えた。男の子は助けられた。俺ぐっじょぶ。
と、いうわけで今俺は転生の間というところにいる。どうも異世界の神さまとやらが俺のルゥへの愛と情熱を評価して俺を異世界転生させてくれるらしい。というか神さまもルゥ推しで、ルゥを幸せにするためなら!ということらしい。好みが合うな。
「君はこれからルゥちゃんの婚約者に転生する」
「はい」
「ルゥちゃんを必ず幸せにしてね?」
「お任せください」
俺はヒロインみたいな女の子は好きじゃないんです、と冗談めかして言うととことん気が合うね、と神さまは笑う。
「じゃあいってらっしゃい。楽しんでおいで」
「はい、行ってきます!」
こうして俺は異世界転生した。
ー…
俺、レオポルト・ガティネは今年で五歳になった。そして、今日、いよいよルゥと顔合わせすることになった。
客間に通されるルゥとその父親。ああ、この頃のルゥは美人というより愛くるしいな。これはこれでご馳走さまです。
「は、はじめまして、私、ルイーズ・オーヴェルニュと申します、よろしくお願いします」
おたおたしながら一生懸命にカーテシーをするルゥ。ああ、なんて可愛らしいんだ!
「はじめまして。俺はレオポルト・ガティネ。よろしくお願いします」
うん。掴みは完璧。にこりと笑顔を向けてやれば、シナリオ通りルゥは俺に一目惚れした。これからルゥは俺に燃えるほどの恋をする。でもシナリオ通りの結末にはならない。だって、俺はルゥに恋をしているんだから。
「ルゥって呼んでもいいですか?」
「は、はい!レオポルト様も、レオ様って呼んでもいいですか?」
「うん。レオでいいですよ。敬称と敬語もやめましょう」
「じゃあ…レオ?」
こくんと首を傾げるルゥ。可愛い!原作のレオポルトはなんでこんな可愛らしい婚約者がいてルゥを蔑ろに出来たんだ!アホか!
「ルゥ、ルゥのことは俺が幸せにするからね」
「レオ…嬉しい。私も、レオのこと絶対に幸せにしてみせるわ!」
可愛らしいルゥ。これからたっぷり愛してあげるからね。
ー…
そして時は流れ、俺とルゥは愛を深めていった。今ではそれはもう評判のラブラブカップルである。え?ヒロイン?学園生活?俺がなんとなく気になってヒロインのことを影…所謂我が公爵家の諜報部隊に調べさせたところ、物凄い効力の魅了魔法持ちってことがわかって、国王陛下に進言して早いうちに国外追放しておいた。内乱の種になりかねないって言って。罪状はまあ、適当に男爵家のやらかした横領とか小さな悪事を積み重ねて。なので学園生活もそれはもう平和だった。普通に他の攻略対象者達カップルも仲が良い。少なくとも表向きは。
そして今日は、俺達の結婚式だ。俺達は神さまの前で誓いを立て、キスをする。見守っていてくれた両親達も嬉しそうだ。
「レオ…私、本当に幸せだわ」
「俺もルゥの側にいられて幸せだよ。ルゥ、ありがとう」
ルゥの好きな俺の笑顔を見せてあげる。ルゥはパッと頬を染めて、目を逸らし、手をもじもじとさせる。可愛い。
「ルゥ。これからもずっと一緒にいよう」
「レオがそれを望んでくれるなら」
こうして物語は、悪役令嬢のハッピーエンドで幕を閉じた。
ヒロインは別のところでフリーの貴公子達と逆ハーレムを作って逞しく生きています