謎のダンジョンに転移させられた僕は人狼という職業を与えられてしまい、死にたくないので全滅エンド目指します。
「最深階の30階!! 攻略だ!!」と、なんとも威勢のいい掛け声が上がった。
僕は、こんな世界にうんざりしていたので、こんな世界から現実に早く戻らせてくれと考えていた。
どこからともなく、声が聞こえてきた。
「3_A組の諸君。
このダンジョンの最下層到達おめでとう!!
君達の勝利の暁には、なんでも一つの願いを叶えてやろう。
ただし、君達の勝利はまだ確定していない」
威勢の良いリーダー格の男が声を上げる。
「それは、オレ達にクラスメイトの人狼を殺せって事か?」
そう言って、男は僕と友人の方に視線を向けてきた。
……
…………
しばらく返答を待ったが、リーダー格の男の声は、謎の声には届かなかった……いや、返答がなかった。
返答がなかった為、「リーダー格の男は拠点に戻ろう」と皆に同意を求めた。
皆、拠点へ戻ることに異論がなかったので、それに同意した。
ダンジョンの攻略に人狼ではあるが加わっていた人狼の僕と人狼の友人のことである。
友人は、人狼としての職務(クラスメイトの殺害)を放棄しダンジョン攻略を手伝う旨をクラスメイトに
公表して現在の最終階への到達出来たのだ……。
ちなみに、僕はクラスメイトを信用していないため人狼であることは伏せている。
純粋に友人がダンジョン探索に出ているから、それに追従している形を取っていた。
今まで協力してきたの僕達を、クラスメイトの皆が裏切るなんて……あるわけがないよな?
あるわけがない……あるわけが……ない。
僕達は、みんなで元の世界に戻る為に協力してきたんだ……最後に裏切りなんて……
最深階30階から、拠点のある1階へと戻ってきた。
その直後、会議が開かれた。
僕達、ダンジョン攻略班は処刑会議なる議題のやり玉に挙げられた。
いや、人狼である友人が会議のやり玉に挙げられた。
完全なる黒が(人狼)、わかっている為。
勝ちが確定した盤面で、クラスメイト全員が人狼を裏切ったのだ。
いや、報酬を取りに来たが正しいだろう。
あれよあれよと、友人が人狼である事について議題を上げられた。
クラスメイトの冷たい目が人狼である友人に向けられた。
「この人殺し……死んで償え!!」
「戻ったら、俺たち金持ちジャン!!」
「人狼の連中はすでに、人殺しなんだボク達がヤツらを裁いても問題ないさ!!」
……
「おい、待てよ!!」と、クラスメイトに怒鳴ろうとすると。
友人は首を振って、この流れに突っ込んでくるなと僕の方を見て静止をかけてきた。
いやいや、おかしいだろ……
なんで、僕達が殺し合いなんかしてるんだよ……
リーダー格の男が決を取り、
「裏切り者の【人狼】の処刑に賛成の【人間】は挙手してくれ」と言った。
処刑に躊躇して、手を上げないもの……
勝ちを確信して、笑っているもの……
流れのままに、挙手するもの……
様々いたが、結局は大差で友人が吊られることが決まった。
そして友人は必死の抵抗をしたが、クラスメイト全員に押さえつけられ首を吊られた。
最後の人狼の僕は友人を助けることもできず、その流れを見守ることしかできなかった。
そして、人狼の処刑が済んだ時……
謎の声が再び聞こえてきた。
「約束通り、君達を元の世界に返してやろう。
今日は個室に戻り、各々の部屋の備え付けのポストに願いを手紙に書いて投函してくれたまえ……」
そういうと、首を吊られた友人の姿も見えなくなってしまった。
ゆ、許せない……コイツら。
友人がいた虚空を見ながら、僕は涙していた……
僕達、人狼側はすでにノルマ達成して、いつでもリタイア(ダンジョン脱出)できたのに……
本当に僕達がコイツらを救う価値あったのか?
今は見えない友人に問いかけていた。
友人からの返事は当然のように返事はない。
許さない……許さない……許さない……
皆が個室に戻るのにあわせて、僕も自室へと戻った。
そして、僕が謎の声の主に対して書いた願いは……
【コイツら全員、皆殺しにするチャンスをくれ】
と、紙に記入して部屋のポストに投函してから僕は一眠りすることにした。
◇◆◇◆
部屋にいた僕は、リーダー格の男の叫びに近い声で目覚めた……。
「何故、オレ達がまだ、この世界にいるんだよ!!
オレ達は人狼を殺して助かったんじゃないのか?
約束はどうなったんだよ!! オイ!!」と、リーダー格の男が罵声を上げていた。
僕は部屋の中にいるが、ザワつきを感じ取ることができた。
なんだ……そういう事か……
僕は全てを……謎の声の主の考えを理解することができた……
【コイツらを殺すチャンスをくれたんだな……】
今までのヌルい人狼ではなく、僕は本当の人狼になる。
ただ巻き込まれただけの僕達(人狼)を、平気に殺してしまう悪魔のような連中だ人狼の僕が一人残らずコロシテヤル。
そんな気持ちを胸に秘めて、僕はターゲット達がいる大部屋へ向かった。
……
…………
個室から、大部屋へ着いた時……再び謎の声が聞こえてきた。
「はい、皆さん全員揃ってますね〜!!
おはようございます」
なんとも、拍子抜けするように普通の調子で謎の声が僕達に話しかけてきた。
それに対して、リーダ格の男が謎の声に対して罵声を上げた。
「ふざけるな!!
オレ達は、オマエの無理難題をこなしてダンジョンをクリアしただろ!!
なんで、元の世界に帰れないんだ!!」
謎の男は急に笑い出した……
「あははははは!!
面白い!! それは誰もが元の世界へ帰りたいと願わなかったからだよ。
皆、お金持ちになりたいだの……
イケメンで金持ちの彼氏が欲しいだの……
元の世界に戻った後の願いを書いていたね。
この世界から戻れたら、君達の願いを叶えてみせるよ」
「ふ、ふざけるな!!」
リーダー格の男が、罵声を上げクラスメイト全員が罵声を上げ謎の男に反論していた。
「おやおや心外だねぇ。
私としては、君達の願いを叶えるつもりだよ。
元の世界に戻りたいと書いてくれれば、その子だけはこの状態でも元の世界に帰したさ……
じゃあ、ここからが本題だ!!」
謎の男の姿が大部屋にあるスクリーンにうつしだされた。
ピエロのような格好をして、人を馬鹿にしたような姿をしていた。
「君達が帰れなかった理由は君達を皆殺しにしたいと思っている人狼が、キミらの中に生き残ってるからさ……あははははは!!」
ピエロは、スクリーン越しに僕達全員を指をさしてスライドさせるようにしてから言った。
「君達が殺した人狼君。
アレを許せなかった残った人狼の仲間がね。
【コイツらを皆殺しにするチャンスをくれ】って望んでくれたんだよ。
いやぁ、楽しいねぇ!!
このまま、ゲームを始めると面白くないので役職は振り分け直させてもらおうか。
それと前回は30階まで到達したんだし、次は50階を目指してみようか」
と言って、ピエロは下卑た笑いを浮かべスクリーンから消えていった。
クラスメイト全員が誰が人狼かわからないため、人狼を警戒するように全員を見回していた。
さぁ楽しいゲームの始まりだ……