第十話 二次試験[4]
『なるほど…剣用魔術か。実際に対人するのは初めてですね』
二本の剣ははっきりと視認できる程の静電気が纏い、剣は赤銅色に輝いていた。
俺は全身全霊を剣に注ぎ込み、ほぼ全ての魔力をつぎ込んだ。
身体からは血が吹き出る程の痛み、想像以上だった。
走り出した足は地を粉砕するかの如く振動させ、剣はあっという間にリアムの懐へと入り込んだ。
『速い!?』
右手に握る剣は腹部を引き裂き、左手に握る剣で胸部を刺すように、反撃する暇もないくらいの連撃を浴びせた。
しかしリアムも上手い。両手で致命傷の攻撃を冷静に捌き、手足にしか攻撃をさせないよう誘導する。が、剣用魔術クラスとなれば流石にその重みは完全には防ぎきれず、外傷部分や鋼鉄製の手袋をしている手でさえも相当な内部炎症が起きていた。
ここで攻めきらなければ負ける。
俺はさらにスピードを上げ、重過ぎる鉄の塊を右肩、左大腿部、腹部へと超連撃で切り裂く。そのまま、腹部の傷を狙って横蹴りをお見舞いし、リアムは5mくらい先へと吹っ飛んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーリンドパーティー
『何なんだ!…あの剣の重さは』
『ああ、確かに重い。しかし今の攻撃、蹴りじゃなく剣でいけたと思わないか?』
『確かに。どうやら剣用魔術ってのは身体への負荷も相当なものらしいな』
『恐らくは今頃全身が悲鳴を上げているはずだ。筋肉もズタボロだろうな。…なあナード、やっぱりカーソンの子供ではなさそうだな。そもそもカーソンは独り身だ、この分では養子という線も薄そうだ』
リウスはその薄花色の目をナードに向けた。
『いや、まだ分からん。最後まで見よう』
ナードはリウスを見上げ、そう言った。
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『なるほどね…確かに恐ろしい程の重さと速さだ。けど、君の身体がもう限界なのは分かってる。その技は長くは使えない』
リアムはまたしても余裕綽々としていた。
俺は全身が泣き叫ぶのを堪え、リアムへと剣を振った。
しかし、自分でも実感できる程スピードが格段に落ちていた。
これをリアムは片手で殴りつけ、剣を粉砕した。
そのまま俺の腹部に膝蹴り、顔面への強打の二連発で体は勢い良く宙を舞った。
『ぐはっ…』
『彼の者を拘束せし永遠にそこで懺悔せよ』
リアムはすかさず高速詠唱を説いた。
俺は地に這いつくばった状態で手足を拘束された。
『これは、リンブスリストレインか』
『当たりー!これからゆっくり戦闘不能になってもらうから。まあ楽しかったよ』
リアムはゆっくりと俺に近付くと俺のもう片方の剣を取り、右足の大腿部に突き刺した。
『ぐはっ!あ…ああ』
尋常じゃない痛み、尋常じゃない苦痛が襲った。
『じゃあ次は腹部にグサッといこうかな~』
まるでその態度は傲慢。
ただ純粋に人の苦しむ姿が欲しいかのような声だった。
『猛威なる風の一陣よ、神風の如く彼の者に貫通せよ』
『何っ!?』
聞き間違えじゃないだろうか。
今確かにローザの高等魔術詠唱が聞こえた気がした。
次の瞬間、俺の視界を猛スピードで駆け抜ける極厚の風の刃のような魔術がリアムに追突した。
『おおおわわっ!』
リアムの体は魔術もろとも驀進した。
『エレン!大丈夫?』
俺が視界を少し上に移すとそこにははっきりとローザの姿があった。その顔は何事も無かったかのように周りの状況を気にもとめてないようだった。




