第九話 二次試験[3]
『まあそんなに肩に力入れないで。まずはお互い自己紹介からいこうよ』
相手の目には随分な余裕が感じられた。
俺は黙り込み、相手の出方と4人の動きを伺った。
『…なら俺から。…俺はアルベルト一族本家の長男、リアム・アルベルト。君の名前は?』
アルベルト本家!?おいおい、アルベルトは東洋の方の一族だろ、何でこんなところで試験受けてんだよ!
内心聞きたい事が山程あった。
『エレン・カーソンだ』
『なるほど…君、あのカーソンの息子、いや養子か?』
正式にはどっちも違った。
どうやら俺が追放されたという事はクリストフ一族を除いて誰も知らないらしいな。
『ああそうだが。それがどうかしたか?』
『あ~、やっぱり!今君が左手で抜こうとしている剣はあの人だけのオリジナルな剣だからね』
!?…何故あいつがそんな事を知ってる。アルベルトの本家だからなのか?だとしてもあの一族は東洋、何で父さんの剣についてそんなに詳しい?
つい口から出そうになったのをこらえた。
『っ…で、五対一か?』
『そんなことする分け!…最初から君には目を付けてたんだ。だから一対一で勝負してあげるよ』
さっきまでの口振りが急変し、鋭い眼孔でこちらを見ている。
まるで目の前に鬼が居るかのような臨場感。
しかし、その一方である一点にも気づいた。
『お前よく見たら剣や槍、ナイフすら持ってないな。まさか魔術だけで戦うつもりか?アルベルト一族の流派の特徴は武器攻撃での重さにあるはずだろう?』
俺は相手の発する狂気をあたかも感じてないかのような口振りで問い掛けた。
『…驚いたよ、まさかアルベルトの流派まで知ってるとはね。…確かに君の言うような武器は持っちゃいない。けど、魔術だけでもない。俺の武器はこれさ!!』
リアムは羽織っているマントを脱ぎ捨て、右ポケットから黒い手袋を取り出した。
『手袋?それがお前の言う武器なのか?』
『そうだよ。でもね、ただの手袋じゃないよ!』
『!?速い』
その瞬間、リアムは十mくらいあった俺との距離を一瞬で埋めてきた。俺は慌てて一本の剣を抜き、リアムの左肩目掛けて力一杯振った。しかし、リアムはこれを軽々しく手のひらで受け止めた。
同時にリアムが使っている手袋は鋼鉄製なのが確認できた。
恐らくは相手への外傷的攻撃ではなく挫傷的攻撃をメインにした戦い方だろう。直感でそう考え、俺は胴部分を警戒した。
『なるほど、よく鍛練してるみたいだね』
リアムは剣を凪払い、俺の斜め後ろへと勢い良く飛んでいく。
と同時にリアムは胴体に手を伸ばした。
ここは左手でもう一本の剣を取り挫傷的攻撃を免れる。
しかし、手を囮に使い俺の二本の剣を奪ったリアムの回転蹴りが腹部に炸裂した。
『ぐはっ…』
蹴られた勢いで地面に背を着けた俺にリアムは休む暇も与えず詰め寄り、かかと落とし。
間一髪のタイミングでこれを避け、飛んでいったもう一本の剣を取り、急いで間合いを取った。
『…本気で来ないと一発も当たんないよ~』
リアムは余裕そうに笑みを浮かべてそう言った。
しかし、俺にもリアムを倒せる自信はあった。
確かにあいつは強い。しかし、剣用魔術相手にはあの体術も荷が重過ぎるからだ。
だが、使い続けることでの身体の損傷や魔力の大幅消費は避けられない。早めに蹴りを着けるべきだ。
『分かった、覚悟しとけよ!』
『信なる仁義は剣の正道、万象とされし神器よ、我の懇願を受け入れたまへ』
その瞬間、闘技場に大きな振動が伝わった。
幾つもの塵旋風、砂埃は空高く舞い、対地放電による地削りも止まない。これには多くの観客、運営側の人、冒険者すら目が離せなくなった。




