第七話 二次試験
ひとまず通信は中止だ。戦いに備えよう。
俺は二本の剣を抜いた。
この会場には500人の受験者が今もぶつかり合っている、自分から動くのは野暮だな。
そう考えていた矢先だった。
俺の胸元めがけて二本の毒針が飛んできた。
俺は右手に握っていた使い込んだ剣の方で二本の毒針を凪払った。
『ふーん、流石だね。実力問題一位は伊達じゃないってことか』
俺との距離は5mくらいだろうか。黒い鎧を纏い、使い慣れた感じの短剣を握っている若い男が現れた。
『毒針。しかもこの速さ、こいつ強い』
一瞬で当たった相手の悪さを実感した。
すると直ぐに相手は5mの距離を埋め、俺の懐へと入った。
相手は脇腹から右肩の直線上に二段切りの構え、俺は右手に持つ剣で防御を取りながら相手の胸元めがけて二本目の剣を振るう。
しかし、死角に隠し持っていた二本目の剣を吸着式爆弾で防がれ吸着式爆弾ごと俺の体を遠くめがけて突き飛ばした。
次の瞬間、爆発音とともに俺の体は吹き飛んだ。
『へぇ、あのタイミングの爆発も剣で防ぐか。予想以上だな』
『そっちこそ。あの速度、アルトスの分家か?』
『んっ、何で分かった?』
『アルトス一族は四大冒険者一族の中でも最大のスピード流派だ、あのスピードで剣を振るえるのはアルトスの流派しかないと思ったからだ』
『なるほど、じゃあ自己紹介をしとくか。俺の名前はハリー・アルトス、アルトス一族分家の次期当主だ。で、お前の名前は?』
『エレン・カーソン』
『エレンか。…エレン、また会った時には次こそ仕留める。それまで誰にもやられんなよ!』
ハリーはそう言い去り闘技場の中央に走っていった。
ハリー・アルトスか。ああいう人とチーム組みたかったな。
それこそ本当の仲間的な意味で。
さて、俺も自分から攻めてみようかな!
ハリーとの戦いで少し気が変わった。
そうして俺も闘技場の中央に向かった。
っう…何だこの戦いは…まるで戦争じゃないか。
辺りにはいくつも転がってる戦闘不能者。重なって聞こえる魔術詠唱。飛び交う剣の音。誰が誰と戦っているのかすらさっぱりだ。
闘技場の中央は予想以上の激しさだった。
俺も負けてられない、その息ですかさず相手を見つけては攻撃を繰り返した。剣で突き、凪払い、とにかく相手を探す。そんなこんなでもう二十人は片付けていた。
『エレン!』
突如、俺の名前を通信機が叫んでいた。
慌てて通信機を手に取るとやはりあの女からだった。
『直ぐに合流したいの。第七ゲートの方に来て』
『待てっ…』
そこで通信は途絶えた。一方的だ。
俺はますますあの女に利用されている気がしてならなかった。
まあいい、とりあえず行くか。
闘技場の中央から一旦離れ、第七ゲートに向かった。
チッ…何人かこっちを追って来てるな。戦うか。
いや、そうすればまた中央に引き戻される。ここは振り切るか。
俺は追っ手を誰かになすりつける形で逃走を図った。
ふぅ、何とか第七ゲート付近に着けたな。
ローザはどこだ?居なかったら今度こそ通信機を捨てるが。。。
『エレーン!こっちこっち』
ああ、そこはしっかり居るのね。
俺は感心よりも落胆の方が数倍大きかった。
『ローザ、最初に通信しても反応ないから焦ったよ』
『ごめんごめん、気付かなかった』
ローザのその反応に溜め息をつき、膝に手を置いた。
ん?どうしてだ?
その時に不意に装備を見るとローザの装備には汚れ一つすらなかった。それこそ、下ろしたてのように。
『ローザ、今まで何してた?』
俺は圧をかけて問いかけた。
『戦ってたよ、中央で』
『え?いや、じゃあ何で汚れ一つないの?』
『逆に何で汚れるのよ?』
『え?…ローザ、今何人倒した?』
『36人だけどそれがどうかした?』
衝撃だった。こんな私服のような格好でいかにも弱そうなのに。
『じゃあ、そんなに強いのに何で俺をパーティーに誘ったんだよ?』
『あー、私魔術は使えるけど体術とか無理だし、ほら魔術にも魔力の限界があるじゃない。だからエレンが必要だったの』
『そういうことか…で、残り魔力は?』
『残りは中等魔術一回分かな』
え!?ローザの言葉は俺の予想の斜め上を超えてきた。
空でもなければ有り余ってもないネタにすらならないリアル感に苦笑した。




