第五話 フローラとの出会い
『あの~、エレン・カーソンくんですか?』
部屋を後にしようとした俺の足を止めたのは、水色の髪に琥珀色の眼をした可愛い女の子だった。
『はい、そうですけど?』
異性と話す機会が少ないかつ当分一人暮らしだったため、頑張って平静を保つのがやっとだ。
多分同い年くらいだから余計に緊張するし。
『やっぱり!…もしよければ…私とパーティー組みませんか?』
『え、いや、あの…』
まさかの展開に、言葉がカタコトになってしまった。
『どうかされました?』
『あ、いや、大丈夫です。…それにしても何で俺なんですか?それに何で俺の名前を?』
『実は、フュースさんに紹介してもらったんです』
『フュース!?それって行商人の?』
『はい、そのフュースさんです』
フュースはフラメル一のレストランを経営する家の子供で、父さんとフュースの父親が仲が良いことから、昔フュースとはよく遊んだり、修行をしたりした。
ぶっちゃけ、わざわざフラメルの街で冒険者選抜試験を受けたのもフュースと再会したかったからだ。
事前に手紙は送ってあるし、俺が来てることを知っているのは当然か。
『フュースからは何て紹介されたの?』
『勇者カーソンさんの息子が冒険者選抜試験に出るから、困ったらその子を頼みな。俺の名前を出せば何とかなるから。と言われて…』
フュース…大した自信だな~。
まあ俺も困った時はよく頼ってたしな。
それに、こんな可愛い子と二人なんて嬉しい限りだ。
『分かった!じゃあパーティーを組もう』
『良いんですか!』
『うん。それと君の名前を教えて』
『はい!フローラ・ビストリアです』
俺は話している内に自然と緊張が抜けていた。
これもまた同い年くらいだからだろう。
『それじゃあパーティーとなった限り作戦を考えたいんだけど、ここじゃなんだし、どっか行かない?』
『あ、それなら良い場所がありますよ!付いて来て下さい!』
ローザは場所すら教えず俺の手を強引に引っ張り、部屋を後にした。一見、シャイな感じなのに客引きのような強引さがあった。
俺達はギルド本棟を出て、まだ足を踏み入れていない北の方向へと進んだ。
街並みは西門付近や西のメインストリートと余り変わらない。
アルム王国の首都だけあって街全体に統一感があり、すごく栄えていた。
他の国や街では貧富の差が激しく、奴隷商や奴隷となった様々な種族を見かけるが、この街ではそんなのは無さそうだ。
『着きました!ここですよ!』
フローラが指差す先には、木造のオシャレな建物が立っていた。
店の入り口前の看板には本日のおすすめ…バレット兎のシチューと書かれていた。
『じゃあ入ろうか』
店の扉を開くと、ランチタイムにも関わらず中は意外と空いていた。
『あら、フローラ!早かったじゃない』
『ただいま、お母さん』
え?この二人親子なの…ってことは本当に客引きだったのか!?
俺はトラップにハマったのか??
『それと…そちらの彼は彼氏?それともお友達?』
『あ、えっと彼は…二次試験で一緒にパーティーを組むことになったエレン・カーソン。そして、こっちが私のお母さん、ローザ・ビストリアです』
『どうも。初めまして』
『はい、こちらこそ初めまして!』
初対面かつ目上の方には元気良く!そして、相手の目を見る。
確かそれが一般的な礼儀なんだよな。
俺は父さんから教えられた最低限の礼儀をフル活用した。
『じゃあフローラ、そこが空いてるから』
入り口から一番近い席を指定され、俺とフローラは真向かいに座った。
『お昼時なのに人が少ないみたいだけど、何かあったの?』
『ここは完全予約制なの。だから、これから人が増えてくるよ。それと、この席は事前に用意してもらっていたの。今日はご馳走するから好きなの頼んで良いよ』
『え?本当に?でもそんなの悪くない?』
トラップにハマったと思っていた自分の愚かさを疑った。
『大丈夫!無理なお願い聞いてもらったんだからそれくらいはさせて』
『じゃあ、お言葉に甘えて』
俺は手元にあるメニュー表を開くと、一番最初のページにはバレット兎のシチューと書かれていた。
あ、これ店の前の看板にも書いてあった本日のおすすめじゃん。
でもな~、バレット兎って少しクセが強いんだよな。
でも、ここでおすすめを選んでおけば、フローラにもフローラのお母さんにも好印象間違いなしなはず…
『よし!…すみませーん』
『はーい、お決まりですか?』
注文を尋ねてきたのは犬耳族の女性だった。
犬耳族は希少種族だから奴隷商達に捕らわれることが多いが、この街ではそれすらもないようだ。
『はい、バレット兎のシチューで…それから~フローラは?』
『私は…じゃあコーヒーで』
『かしこまりました』
店員さんは俺達の方を向いて微笑んでいた。




