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勇者の背中に憧れて  作者: 名張 信
第一章
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第五話 フローラとの出会い



『あの~、エレン・カーソンくんですか?』


部屋を後にしようとした俺の足を止めたのは、水色の髪に琥珀色の眼をした可愛い女の子だった。


『はい、そうですけど?』


異性と話す機会が少ないかつ当分一人暮らしだったため、頑張って平静を保つのがやっとだ。

多分同い年くらいだから余計に緊張するし。


『やっぱり!…もしよければ…私とパーティー組みませんか?』


『え、いや、あの…』


まさかの展開に、言葉がカタコトになってしまった。


『どうかされました?』


『あ、いや、大丈夫です。…それにしても何で俺なんですか?それに何で俺の名前を?』


『実は、フュースさんに紹介してもらったんです』


『フュース!?それって行商人の?』


『はい、そのフュースさんです』


フュースはフラメル一のレストランを経営する家の子供で、父さんとフュースの父親が仲が良いことから、昔フュースとはよく遊んだり、修行をしたりした。

ぶっちゃけ、わざわざフラメルの街で冒険者選抜試験を受けたのもフュースと再会したかったからだ。

事前に手紙は送ってあるし、俺が来てることを知っているのは当然か。


『フュースからは何て紹介されたの?』


『勇者カーソンさんの息子が冒険者選抜試験に出るから、困ったらその子を頼みな。俺の名前を出せば何とかなるから。と言われて…』


フュース…大した自信だな~。

まあ俺も困った時はよく頼ってたしな。

それに、こんな可愛い子と二人なんて嬉しい限りだ。


『分かった!じゃあパーティーを組もう』


『良いんですか!』


『うん。それと君の名前を教えて』


『はい!フローラ・ビストリアです』


俺は話している内に自然と緊張が抜けていた。

これもまた同い年くらいだからだろう。


『それじゃあパーティーとなった限り作戦を考えたいんだけど、ここじゃなんだし、どっか行かない?』


『あ、それなら良い場所がありますよ!付いて来て下さい!』


ローザは場所すら教えず俺の手を強引に引っ張り、部屋を後にした。一見、シャイな感じなのに客引きのような強引さがあった。

俺達はギルド本棟を出て、まだ足を踏み入れていない北の方向へと進んだ。

街並みは西門付近や西のメインストリートと余り変わらない。

アルム王国の首都だけあって街全体に統一感があり、すごく栄えていた。

他の国や街では貧富の差が激しく、奴隷商や奴隷となった様々な種族を見かけるが、この街ではそんなのは無さそうだ。


『着きました!ここですよ!』


フローラが指差す先には、木造のオシャレな建物が立っていた。

店の入り口前の看板には本日のおすすめ…バレット兎のシチューと書かれていた。


『じゃあ入ろうか』


店の扉を開くと、ランチタイムにも関わらず中は意外と空いていた。



『あら、フローラ!早かったじゃない』


『ただいま、お母さん』


え?この二人親子なの…ってことは本当に客引きだったのか!?

俺はトラップにハマったのか??


『それと…そちらの彼は彼氏?それともお友達?』


『あ、えっと彼は…二次試験で一緒にパーティーを組むことになったエレン・カーソン。そして、こっちが私のお母さん、ローザ・ビストリアです』


『どうも。初めまして』


『はい、こちらこそ初めまして!』


初対面かつ目上の方には元気良く!そして、相手の目を見る。

確かそれが一般的な礼儀なんだよな。

俺は父さんから教えられた最低限の礼儀をフル活用した。


『じゃあフローラ、そこが空いてるから』


入り口から一番近い席を指定され、俺とフローラは真向かいに座った。


『お昼時なのに人が少ないみたいだけど、何かあったの?』


『ここは完全予約制なの。だから、これから人が増えてくるよ。それと、この席は事前に用意してもらっていたの。今日はご馳走するから好きなの頼んで良いよ』


『え?本当に?でもそんなの悪くない?』


トラップにハマったと思っていた自分の愚かさを疑った。


『大丈夫!無理なお願い聞いてもらったんだからそれくらいはさせて』


『じゃあ、お言葉に甘えて』


俺は手元にあるメニュー表を開くと、一番最初のページにはバレット兎のシチューと書かれていた。

あ、これ店の前の看板にも書いてあった本日のおすすめじゃん。

でもな~、バレット兎って少しクセが強いんだよな。

でも、ここでおすすめを選んでおけば、フローラにもフローラのお母さんにも好印象間違いなしなはず…


『よし!…すみませーん』


『はーい、お決まりですか?』


注文を尋ねてきたのは犬耳族の女性だった。

犬耳族は希少種族だから奴隷商達に捕らわれることが多いが、この街ではそれすらもないようだ。


『はい、バレット兎のシチューで…それから~フローラは?』


『私は…じゃあコーヒーで』


『かしこまりました』


店員さんは俺達の方を向いて微笑んでいた。






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