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第四話 『星』の騎士:アートリナ・エフセエフ

 パルテノンに限らずダンジョンを経営する上で、病院施設が併設もしくは、高水準の医療機関を中に作らなければならない決まりがある。

 それは冒険から帰って来た冒険者たちの生存率を少しでもあげる為であり、ダンジョン経営には欠かせないものだ。

 パルテノンにも優秀な医療スタッフが24時間在籍しており、連日連夜勤務らしい。


 小屋のようであったが二階建てログハウスは、空間が曲げられているか中には複数の扉があり、それぞれパルテノンの専門ルームにつながっているらしい。

 僕はモミジちゃんを背抱えながら医療センターの扉を開こうとしたが……。


「だいじょうぶ。ねているだけだから」

 と『天帝』さま直々に言われてしまったのでは、どうしようもなく、とりあえずログハウスの2階にあるゲストルームに寝かせた。


『天帝』アルテミス

 このギルドパルテノンのギルド長であり、世界でも指折りの冒険者だ。

 僕みたいなヒラの社員が会うこともなかなかないほどの人物であり、面接もすっ飛ばして入った僕はその姿すら今初めて見たので、その容姿に驚きを隠せない。


「おにいさん、かわっているね」

「は、はぁ」

 思わず腑抜けた声が出てしまう。


「じゅじゅつ? いや、けいやくかな? これはやっかいだ」

 なにやらボソボソといっているけれども上手く聞き取れない。

 それに僕も焦っていた。

 僕がここにいるのはデルフィストの契約によってねじ曲げられた入社。そのことがバレたらどうなってしまうのか、考えもつかない。


「んー。ぼく、おにいさんにあったことないよね。にゅうしゃしきにはでた?」

「え、ええっと」

 どう答えればいいんだろうか。普通に風邪をひいたということでいいのだろうか? それとも何かいいアイディアがあるが……。


「……は、はい一応。出席してました」

「ふーん。こんなひと、わすれないとおもうけどなー」

 とりあえずデルフィストの筋書きにあうように答えておいた。

アルテミス社長は僕の周りをぐるぐる回りながら、ジーっと僕を観察する。


「ま、いっかおもしろそうだし」

 程なくして興味を無くしたのか僕の観察やめた。


「二人とも、2.3時間もすれば目を覚ますと思うから」

 そういうと社長は、

 じゃ! といい。転移の扉の中に入っていってしまった。


「台風みたいな人だな」

とりあえず二人を看病しつつ、荷解きを済ますとしますか。

僕はとりあえず届いている段ボールを手に取った。






「私は犯人を見つけろと言ったのであって、特級を二人も倒せと言った覚えはないのだが」

 荷ほどきをほどなくして、連絡がいったのであろう。

ギャル部長がログハウス寮までやってきた。


「二人ってモミジちゃんもですか」

「知らんのか? 最近特級試験に合格した、最年少の特級冒険者だ」

ニュースにもなったはずだぞ。

そんなことをいいつつギャル部長は、いまだ目が覚めない二人の顔をじっとみつめていた。


「へー。あっちの家族とは全然連絡をとってなかったからなぁ」

 両親が離婚してからは兄弟同士でしか連絡を取り合ってなかったが、受験のためあまり連絡がしいなかった。もっともそれもデルフィストのせいで無駄になってしまったが。


「これはちょうどいい。もう噂として広まっているのであれば、上手くP Tに潜り込むことも可能だろう。妹と一緒にダンジョンへもぐれ」

「それなんですけれど」

 狙われるのがサポーターの僕だけならいいのだけれど、妹も狙われる可能性があるとなると、あまり気乗りしない。


「第一メンツが足りませんよ」

 とりあえず悪あがきに聞いてみる。

 アートリナさんを入れるにしても、モミジちゃんとぼくで、三人だ。ダンジョンに潜るためには最低あと二人たりない。


「その点に関してはぬかりない。おい入ってこい」

 部長がそう扉にむかって促すと。


「はいはいはい。オッスオッス!! こんにちは!! おつかれさまです!!そしてさすがですワカバさん。私が見込んだ通りあなたの周りには記事になりそうなことであふれています。まだ初日なのに移動するだけでなにか問題が起こるなんて第三室のエースといっても過言ではないでしょうか」

「杏少しは静かにできませんかケガ人もいますので……」

すごい勢いで扉をあけられたその先にいたのは、杏先輩と人事の瀬戸内さんだった。


「二人ともどうしてここに……」

 服装もさっき来ていたスーツ姿ではなく、二人ともダンジョン用の戦闘服だ。

 黒の生地に金色のボタン、胸元にはみたこともないような紋章が刺繍されている。

 靴も高価そうな革靴だ。細部に魔術的文様が施されて、いかにも戦闘ができます。

って感じの装いだ。


「橘くんがダンジョンに潜るだろうと聞いたので急いで準備してきたのです。なかなか様になっているでしょう?」

 瀬戸内さんは腰に入っていた短銃を取り出すと、目にも止まらぬ速さで構えた。

 その様子は冒険者の方々と比べても見劣りしていない。


「そんなの水臭いっすよワカバさん! 助けが必要ならいってくださいよー」

 そんな彼女両腕には白銀と漆黒のガントレットをしている。

 シュシュと軽くこぶしを繰り出すだけで周りの空気に音が発生した。


「メンツが必要おもったんでね。これでも学生の頃は、こいつらと小遣い稼ぎをしていたんだ。中級のモンスターぐらいなら問題ないだろう」

そういうとギャル部長はぼくに向かって指さしながら高らかに宣言する。


「戦闘はこいつらに任せて大丈夫だろう」

「みなさん戦闘もできるんですね」

 さすが一流企業に入っているだけの事がある。


「じゃこいつらが起きたら出発だ。用意しとけ以上」

 そう言って、部長はログハウスを出て行った。

 え、ち、ちょっとまってください。


「え、僕武器とか防具とか持ってないんですけど……」

「じゃ私服でいってください」

「私服!」

「大丈夫ですよー。死にはしませんって」

 いつもより杏先輩の声が大きく聞こえた気がした。


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