海
コンクリートジャンルのなかでウホウホ生活していると、ときたま海へと行きたくなる。
これは田舎者の性なのかもしれない。
人混みに翻弄されながらも、都心からしばらく電車に揺られて太平洋を目指す。
しだいに人の影もまばらになり、終点まで
急がず、
焦らず。
ホームに降り立つと懐かしいにおいが鼻腔を満たす。ここは観光地としても名高い湘南、江ノ島。
駅の改札を抜けると観光客がぞろぞろと海へと足を向ける。
懐かしい。しかし、ここは何かが違う。
地元の海は、もっと、こう──
私は観光に来たわけではない。けれどもいつの間にか観光客になってしまう。
私はただ海に行きたかった。
日が暮れゆく。江ノ島の路地を抜けた先に小さな入江。他に人のいないそこは穴場なのか。小さな防波堤の先に立つと、海があった。




