新進気鋭とオジサニア
そろそろ物語がはじまります
「なるほど、アレシアさんも冒険者なんです
ね」
「ああそうだよ、といってもまだDランクだけどね」
アレシアと一緒にオジサニアへと歩いている。日はまだ落ちてはいないものの自分の影はずいぶん大きくなってきた。
「Dランクってすごいじゃないですか。みたところまだお若いですよね」
「はは、アヤほどじゃないよ、今年で18になるんだ」
「え、じゃあ今17歳ってことですよね、同い年じゃないですか!」
私は地球では高校二年生で誕生日はもう迎えているので17歳だ、学年で言うとたぶんアレシアは一個上だけれどまあここ異世界で学校とかないし。同い年は同い年だよね。よく日本人は幼く見られるっていうけど、けっこう本当っぽい。
「ええ?!ほんとに?!アヤ、てっきり年下だと思ってたよ…14か15くらいだとおもってたよ…すごい魔法を幼いのに使うんだなと思ってたけど、いや、それでもその年であの魔法はすごいね」
「あはは、ありがとうございます。すっごい田舎から来たのでこのあたりの魔法のレベルとかよくわかんなくって」
「なるほど…古代から続く…かはわからないけど地方で脈々と魔法を受け継き続けた一族の末裔なのかアヤは」
なんか勝手に都合よく理解してくれたけど、そういうことにしておこう。うむ。
「あ、そろそろ街につきますね」
昼の門番さんがいた、出るときは魔法のことしか考えてなくて門番さんのこと忘れてた。
「おっ、お嬢ちゃん。ほんとに冒険者になったのかい?今日はずいぶんと力の強い魔法使いの魔法を見たっていうやつが多かったらからよ、お嬢ちゃんもしばらくここに滞在して冒険者になるなら魔法に巻き込まれねえように気をつけな」
門番のおじさん、めちゃくちゃいい人だ…色々教えてくれるし、観光都市っていうくらいだから門番にも人あたりのいい人を配属してるんだろう。
「門番さん、その噂の魔法使い、彼女だよ」
アレシアがチクった、まあいいけどさ
「ほんとか?!驚いたなあ…お嬢ちゃんも魔法使いだろうとは思ったけどすごかったんだな…ってあんたはアレシアじゃないかよ、最近よく噂聞くぜ、新進気鋭のルーキー女騎士だってな、やっぱ才能あるやつらってのは惹かれ合うもんなのかね」
なんと、アレシアもすごい冒険者だったのか。たしかにこの若さでもう二回も冒険者ランクを上げてるし、期待のルーキーというイメージはピッタリだ。
それにしても門番さんもアレシアも私が魔法使いとわかれば冒険者であることをそれほど驚かない、たぶんギルドでは冒険者に憧れたお嬢様が勢い余って本登録までしようとしてしまったくらいに見られたのだろう、幼く見えるらしいしね…
「よしてくれよ門番さん、ただかなり近くで感じたからわかるけど、アレシアの魔法はすごいよ、今すぐその辺の冒険者に混じっても問題ないくらいだった」
ま、まあね!まあたしかに魔力ステータス的にも混ざっても問題なさそうなレベルには既に達してると思う。
「あはは、そんなことないですよ。でも、これから冒険者としてがんばりますので門番さん、しばらくこの街にいると思うのでよろしくお願いしますね」
「ああ!俺はオジーサだ、英雄オジサニアではよく見る名前だと思うが、門番のオジーサで覚えてくれ」
「アヤです、門番のオジーサさんですね、覚えました!」
おのれ…オジサン…たしかに英雄にあやかった名前をつけるのは一般的だけどここまで侵食してくるとは…まあ凄い人だったんだろうけどね。
「それじゃあ改めて、本当の意味でようこそオジサニアへ!」
門番のオジーサがそういったので、私とアレシアは門をくぐって街に入った。
「アヤ、この街にしばらくいるんだって?ほんとうかい?」
「うん、この国の常識だったり価値観もまだよく知らないし、お金もそんなにないからとりあえずの拠点にしようかなって」
「なるほどね!それなら、あの、提案、というかお願いがあるんだ」
なんだろう、まあどんなお願いでもイケメンショートカット美人のお願いなら滅多なことでなければ断らないけど。
「アヤは、この国のことを知りたいんだろう、私ができるだけ色々教えるから、どうだ、一緒にパーティを組まないか?」
なんと、こんな美人なお姉さんに色々教えてもらえる、つまりこれからも会える上にパーティまで組んでもらえると。期待のルーキーっていうくらいだから私の魔法に寄生しようってことはないだろうし、そもそも人柄を見ればそんなことをする人じゃないことくらい簡単にわかる。
「あの…それじゃあ私へのメリットしかないんですけど…」
「いや、そんなことはないよ、ちょうどパーティメンバーでとくに魔法使いを探してたんだ。腕の立つ魔法使いはだいたいもうパーティに入ってしまっているし、そもそも魔法使いでソロなんてなかなかいないんだよ。それに初心者魔法使いはだいたい学園卒で彼らは冒険者養成学校との合同訓練なんかで仲間をみつけて冒険者デビューするころにはパーティを作ってるからね」
なるほど、ソロの魔法使いがいないのはたしかにわかる、限られたMPで敵に囲まれでもしたらとんでもないことになってしまう。
でも引っかかる…魔法使いはともかくなんでアレシアはソロなんだ…?
「でも、アレシアさんは期待のルーキーって言われてるくらいですし、とっても綺麗だから他のパーティから引っ張りだこなんじゃないですか?それこそけっこうベテランのパーティだってほしがるとおもうんですけど」
「あはは、わかってるね、だからだよ。私に色目を使ってくるやつもたまにいるけど、だいたいのパーティは自分らの売名だったり、私を育てたと恩を売ろうとしたり、囲ってしまおうとしているんだよ、もちろんそんなパーティだけじゃないんだけど、そういったゴタゴタに巻き込まれないようにソロでやってたんだ」
なるほど、そういう理由があったのか。そしてアレシア、落ち着いた雰囲気だったけれどアレシアは自分が将来大成することに疑問を持たず確信している。自分の才能を信じてやっているし、でも決して傲慢な態度はとらないアレシアにはかなり好感がもてる。パーティは組んでもいいかもしれない。むしろ私も魔法使い一人では不安だったので本当はこっちからお願いしたいくらいだ。
「わかりました。わからないことだらけで迷惑かけるとおもうけど、これからよろしくお願いします」
「本当か!?やったあ!ありがとう!これからよろしく!私のことはシアでいいよ!親しい人はそう呼ぶんだ!それと敬語もいらないよ!なんたってパーティメンバーだもの!」
パァっと一瞬でアレシアの表情が明るくなる。
どうやらアレシアはあんなこと言いつつけっこうパーティってものに憧れを持ってたらしい。
そういう私もけっこうワクワクしてるけど。
「わかった、シア、よろしく!」
敬語を取れと言われたので、敬語をとっぱらったら、なんだかカタコトになってしまった。
「あははは!アヤ、なんだよそれは!とりあえず今日の宿は決まってる?なかなかいいところに私は泊まっているんだけど、もしまだだったら一緒に来ない?」
お姉さんと…宿屋…ゴクリ…じゃなくてそれも決めなきゃと思っていたけど探すのもめんどくさいなあと思っていたので願ったり叶ったりだ。
「まだだよ!うん、行く!」
そうして私とシアは宿屋へと歩き始めた。
新しい仲間と共に踏み出した街並みは、なんだか最初に入ったときより暖かくみえた。
そして、お互い初めてのパーティメンバーができたことにうかれていて、ギルドへクエストの報告をまだしてないことはすっかり忘れていた。
はへ〜〜〜