御使い様
前置きながいですね、今回までぶっちゃけると世界観説明会ですね。
「お待たせアヤ、ステータスを測る。"御使い様"を連れてきたわよ」
そういってテレーズが奥の部屋から一人で出てきた。特に誰かがついてきているわけではない。
「あれ?御使い様はどこですか?」
「ここにいるわよ」
そういってテレーズは右手をあげた
「ヒイィッッ!!」
テレーズの右手には、拳ほどの太さの、短いミミズのような、端的に言うとバカでかいヒルのようなウネウネがいた。
「あの…もしかしてそのウネウネが…」
「ウネウネって失礼ね、慣れればカワイイわよ、これが御使い様よ」
いや教会…趣味悪すぎでは…?本当に…オエッ…気持ち悪い。
「そ、それで?御使い様はなにをなさるんですか?」
「何って、血を吸わせるのよ」
そう言うと御使い様は目のない鼻もない上下左右もわからない丸い口をがパァと開けた。
「本当…正気ですか…?冗談ですよね?」
「何言ってるのよ…やるわよ、腕出して、そうね、目つぶってた方がいいわよ」
エェ…無理…えっ…覚悟…いやきまらないでしょうこれは、待って、覚悟を決め…決まるわけがない。
「目をつぶって十秒数えなさい、十秒後にやるからほらつぶるいーちにーい」
私は急いで目をつぶった。だってさもないと、って感じで顔にちょっとずつ近づけてくるんだもん。
「さーん、しーい、ごー、」
ドキドキ……ウン…じゅうになったらにげよう、うん、にげよう
「ろーく、はいもういいわよ」
「えっ?もういいんですか?」
「いいわよ、手を見なさいよ」
わたしの右腕の内側にうすーく小さい小さい注射跡のようなものがついていた。
「御使い様、お口はおっきいけど針は極細なのよ。それに痛みも刺した感覚すら感じさせないし、終わったあとの消毒や止血も完璧。血を採ることが人間より上手なのよ、見た目がちょっとアレだけど」
ほらあ!やっぱ見た目アレっていった!ステータスの確認がお楽しみってこういうことかよオジサン!呪うぞ!
「じゃ、確認するわね」
そういって石版の上で御使い様をテレーズはぎゅっとやってしぼった、御使い様なのに扱いそれでいいのか。いいのか。血が垂れて石版についた。
「出たわ、これが貴女のいまのステータスよ」
Lv:16
力:ぜんぜんない
魔力:すごくいいかんじ
速:だめだめ
精神:よわよわ
魔法適性属性:とくになし
スキルの欄が無い…?会話にも出てこなかったし、まあよくわかんないシステムは無いっぽいね、よかった。ゲームじゃないものね…
と、それどころじゃない、測定。測定とは?レベルってこれどう見ても経験値であがるレベルじゃなくてただの年齢ですよね?しょこ○んなの…?
それに各種測定結果、なんかフワっとしてるしこれ普通にスポーツテストすればわかる内容じゃない?わざわざ仰々しい協会とか作る必要あるの?
「あの…このレベルって…」
「ええ、年齢ね」
やっぱり…!ですよね!
「年齢なんてわざわざ…と思うかもしれないけどね。意外と大事なのよこれ。ほら、冒険者って孤児が少なくないのよ。自分の年齢がわからないー、ってけっこうあることなのよね」
たしかに、それを考えると自分の年齢が確認できるっていうのはすごいことかもしれない。
それにステータスも隠れた部分までだったり詳細がわかるんだったら連日協会に大行列ができていてもおかしくない。まったく人がいないんだものね…今の協会。
ステータスの魔力がいいかんじなことはわかった、しかし、しかしだ、あまりにも由々しき事態である。魔法の属性の適性がまったくないのだ。
「あの…魔法の…属性の適性が…」
「あら、貴女には魔導書があるじゃない」
「まどう…しょ…?」
「持ってて知らないのね。お祖父様は使い方教えてくれなかったの?魔導書っていうのはね、魔法の理論を完璧に書き記した本なの、それに魔力を流すだけで魔法が使えるのよ。」
フムフム、魔法初心者でも魔力さえあれば使えるということね。私のこれが魔導書じゃなくて電子書籍だけどね。
「まあ戦闘や冒険に持ってくとすぐボロボロになって使えなくなるし、何より初級だとしても一冊につき一種類の魔法しか使えないのがね、中級以上の魔導書はすっごく分厚くなるから持ち運べない。初級なら安価に作れるけど初級魔法一種類のためにわざわざ魔導書をってこともなくってね。戦闘用ではっきりいってほとんどつかわれてないわね。」
たしかに、分厚い本を何冊ももって冒険する人間は少ないだろう。しかも本は絶対に濡らせない傷つけられない繊細さだ。
「そうね、実用っていうよりかは図書館や学院で、魔法理論の学習や研究の為に使われるって感じね。あとは歴史的な価値があるものは展示されてたり、ね。まだまだ古代の魔導書や超古代の魔導書もごく稀に見つかってるのよ。完璧な状態では見つかったことないらしいけど」
「なるほどですね、そういうことなんですか、ありがとうございます。」
「いいえ、魔力さえあれば誰でもどんなに高度な魔法でも使えるそれが魔導書ね。従者に大量の魔導書をもたせて戦ったっていう魔法使いの滑稽話もあるくらいよ」
ん…?私の電子書籍、全ての本を使えるって女神様言ってたよね…?
これは…もしかしたら…
私は…
すごいものをもらってしまったかもしれない…
気づいて…しまった…
「すっっっごく有益な話をありがとうございました!」
「あらよかった、元気でたのね、じゃあFランク冒険者からがんばってね、実績とかで適当にランク上がるわ、マックスSね、こんな説明でいいわよね」
「大丈夫です!」
最後の方にランクの説明をしてくれたけど、魔導書、魔法への可能性に大興奮した私がまともに聞けるはずもなく、だいたいこんな感じのこと言ってたかな、ということである。
ワクワクしてきた。魔導書、そして魔法。
そうして私は魔物、ツノラビット討伐のクエストを掲示板からひったくってろくな準備もせずに平原へかけたのであった。
次回から最強アヤちゃんがはじまります。