マジで異世界だった
爽やかな風、むせるほどの草の匂い、温かい日差し、遠くの空をとぶ明らかにやばい大きさの鳥。はい、お疲れ様です異世界転移バッチリです。さっきから夢だと思って引っぱたきまくったほっぺが痛いです。
夢だと思っていたのに、どうも妙に鮮明なゆめだったのに、ついに、なんと、アア…
そう、私は(たぶん)本当に異世界に転移してしまったのだ。だだっ広い草原がめの前に広がり、背中にはは深い、深そうな感じがする森が広がっている。
太陽は南中(この世界の天体はわからないけど)している。私の服装は地球で最後に着ていたパジャマ…ということはなくなぜか制服を着ていた。紺のブレザーに制服のスカート、そして今は外したけどワイシャツは第一ボタンまでしまっていたしネクタイはめちゃめちゃぴったりしまっていた。
文学少女(自称)なのでゆるくすることはなくきつくない程度に緩めた。女神様意外と真面目だ。
そして!なんと!飛ばされた私の手に!最新の電子書籍タブレット。Go○gle発売のタブレットがあった。ゲームアプリとかの激しい動作は苦手だけど本をたくさん入れられるようにアホみたいにでかい容量をもってるらしい。
なんか電子書籍を手に入れた嬉しさと、異世界へ飛ばされた混乱とで、なんだか感情が渋滞している。それにこの異世界然とした光景と、現代丸出しの電子書籍とのミスマッチがすごい。このミスマッチがさらに夢のなかのような奇妙な感覚を連れてくる。それはそうと、うん、電子書籍、嬉しい。それだけで割とどうでもよくなってしまった。
電子書籍は、まあ多分予想では女神様パワーで容量無限だろうけど、やったね、大きさはだいたいB5サイズくらいで、薄さは1cmもないくらい。重さはサイズ相応という感じで、持った感じが軽くも重くもなく手にしっくりくる重さ。カメラはうちも外も一応ついてた。それに2つ折にするタイプのカバーがついていて、そのカバーをとめる磁石のパチンってなる舌みたいなやつの留め具?がついてる。
カバーはいわゆる本のハードカバーみたいなデザインと見た目な材質で、留め具をすると薄い本のようにみえる。純粋な意味の薄い本だよ、文字のまんまの薄い本。
電子書籍の画面を撫でる、すべすべすべすべ。紙の質感を感じる事はできないのは残念だけれど、この薄い本だけで図書館を持ち歩いていると思えば、あまり気にならない。
ついに…私も手に入れたのだ…!電子書籍、歩く図書館、全知の一歩手前のタブレット。フフフ、早速起動しようじゃないか!と思ったのに、電源ボタンがない、というよりボタンがない。普通は音量ボタンと電源ボタンがあるんのでは?うん、とりあえず画面をペタペタしよう。
画面をペタペタ触っていたらいきなり画面が白くなった、そしてG○ogleのロゴ、それからデフォルメされた女神の顔が白い画面に次々と表示されて、白い画面にメッセージが表示された。
「言い忘れてたけど、異世界特典、私はご都合主義大好きの神様なので、言葉の違いでこまることはないようにしました!昔の転移でずいぶん苦労させちゃったからね。 神様より」
ほう、ナイスな気遣い、ってかそっかーマジで転移しちゃったかーまあいいや、強く生きようね。それより今は憧れの電子書籍ちゃんだ。
女神のメッセージがしばらくすると消えて、ホーム画面が現れた。普通のホーム画面だ。1画面にアプリがいくつか表示されていてスワイプしても画面が動かないからたぶんこれでアプリは全部なのだろう。
フフフ、私はかねてからこのタブレットをゲットしたらやりたかったことがあるのだ。
「Ok. G○○gle!読書がしたい!」
ピロン、という音のあとに読書アプリが起動した。起動した!すごい!すごい!これが文明か、これが電子書籍か、文明開化の音がした。
読書アプリは本棚をもしたアイコンだった。起動すると、空の本棚画面が表示されていて、右上に丸い虫眼鏡のマークが表示されている、ははは、ここで検索をするのだな!そして本棚はブックマークだな!わかったぞ。虫眼鏡のマークをタップすると画面が変わった、検索バーが最上段に、そしてその下の画面は上下で2つの長方形に分けられていた。
上には異世界書籍、下には地球書籍とかいてある、ご丁寧に文字の背景には異世界書籍には自然のイラスト、地球にはビル街のイラストがあった。とりあえず異世界書籍をタップ。ジャンル検索と作者検索、キーワード検索がある。
とりあえずキーワード検索で転移と検索したら召喚魔法のススメ、やら伝説の勇者転移する、などと色々な本がでてきた、どうやら翻訳済みのようで翻訳のチェックをはずすとよくわかんない文字になった、でもなんか読めた、女神様ナイス。これなら言語の壁はない。
そして、とりあえず選んだのが
『異世界転移のススメ』
ジャンル:実用書
年代:古代
作者:オジサン=ツマームビーチック
そう、異世界転移と書いてありジャンルが実用書なのだ、昔も転移した者がいたというけど、もしかしたらこの人なのかもしれない。
そして何より名前だ、他の作者は異世界っぽい名前だったけど、これは明らかに日本語だ、おじさん乳首摘む。だ、この人はずいぶん言葉の壁に苦労したと言うし、この世界の人がわからないことをいいことふざけた名前を名乗っていたのだろう。
早速読もうと思う、400ページ近い大作だ。この世界の常識だったり、役立つ知恵だったり、多岐に渡る内容だった。とりあえずこの世界のことをまとめると
・いわゆる剣と魔法の中世ヨーロッパチックな異世界である
・日本人の言う中世ヨーロッパなので、文明は地球の近世ヨーロッパに近い。
・魔物や魔獣がいる、おそろしい。
・魔物や魔獣はアイテムをドロップし…ない、気合で剥ぎ取れ、持ち帰れ。ダンジョンはその限りでない。
・ステータスとレベルがある。教会で確認できる。確認の仕方はお楽しみだ。
基本的なことだけど、これだけの情報を序盤に確認できたのは僥倖だ。そして気になる…魔物と魔獣…うん、森の入り口の木に腰掛けてるけど…早めに森からはなれたほうがいいかもしれない…
電子書籍の読書アプリを閉じると、マップアプリが目についた、いや女神様ホントナイスマジナイス。他のアプリはタイマーとか時計とか電卓とかだった、基礎のアプリが入ってるっぽい。
マップアプリをひらくとここが北の平原のような地形と南の森ような地形の境であることがわかった。地形や方角はわかるけど名前は出ない、いたってシンプルな地図だ。それでも現在地までわかるししかも向いてる方向までわかる。
とても正確だ。GPSとかなさそうだけどまあ女神様が宇宙っぽいとこにいたし女神様が実質GPSのようなもんだろうと深く考えないことにした。そして目の前の平原には何やら道というか街道が存在していてそれを東に行くと街のような地形に続いていて、しばらく進めば途中で森は途切れていて、ここは森のは端であることもわかった。
とりあえず、街に向かうことにした、日も少しずつ傾きはじめているので、とりあえずの宿が必要だ。金…ないけどなんとかなるよね。私は街に進むことにした、昔の転移者も最初に向かっただろう街に。