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彼女の優しさ

なんかすみません、これで完結になります。

続きが思い付かず・・・

オチらしいオチの無い完結話ですが暇潰しにでもなれば幸いです。

「ミドリ。」

後ろから声を掛けられた。

声の主は分かった、けれど私は振りなかった。

「ミドリだろ?」

また、声がかけられる。

でも私は振り向かずにずんずん歩く、早く家に帰らなくちゃ。

今日はマネージャーも居ないし一人だから

ぐっ。

私は腕をつかまれた。

「何するの?」

自分で冷静になれと言いくるめる。

「超久しぶり。なんだよ、他人行儀で。」

憎らしい顔が目の前にある。

行きかう人が居なかったら殴っているところ。

「あなたなんか、知らないわ。」

「おいおいーそれはないだろ?」

その顔が私の神経を逆撫でするのよ、馬鹿男。

そう怒鳴りたいのをぐっとこらえて、振り払おうとした。

「ちょっと遊ぼうぜ。」

「知らないっていっているでしょう?!」

なんとか離れることに成功した。

この男は俳優なんかやっているけれど売てれいない、私が会った時と同じで全然変わっていなかった。

自分がかっこいいとでも、イケてるとでも思っている勘違い男。

「なんだよ、お高くとまりやがって。」

凄みを効かすけれどそれすらも私には恐怖も与えない。

私の知り合いにはもっと上をいく怖い人たちもいるのだ(普段は優しいけど)。

「付き合ってられないわ。」

私は歩き出す、早歩きで。

冗談じゃない、こんなのと会うなんて超最悪。

気分よく仕事が終わったっていうのになんていうケチつき。

「待てよ、ミドリ!」

グッ。

今度は肩か(怒)。

私は思いっきり振り払う仕草で顔を叩いてやった。

「痛てぇ!!」

「変態っ、誰か警察を呼んでください!」

「なっ・・・なにっ!」

私が声を上げたので行きかう人が足を止め、そのうちの誰かが携帯で電話をかけてくれた。

「くそ!覚えてろよ!!」

なにを覚えておくのか、馬鹿男の顔なんか思い出したくもない。

抹殺! 家に帰るまでさっぱり抹殺してやるんだから!!

 過去の自分の思慮の無さを思い出して悔し涙まで出てきてしまった。




ちゃぽん。

浮かない、いつもの好きなバスタイムに気分が浮かない。

あまり長湯は良くないというのに私はずっとバスタブに浸かったままだった。

いつもより1時間以上長く居るかも。

原因は帰り際のアレ、あの男。

なんなのよ、いきなり人を呼び捨て。

こっちはすっかり忘れていたっていうのに・・・思い出したくない事まで思い出しちゃったじゃない。


 早く、由記、帰ってこないかな。


帰ってきて私を抱きしめて欲しいと思う。

でも平日だから帰ってくるのは深夜で、私が寝てしまっている時間。

朝は朝で早く出かけてしまうからまったく時間が合わない。

合うのはお休みの日か、お休みの午前中くらい。

それでも今日は起きていて抱きしめてもらいたい・・・な。



「なにやってるのよ?! 脱水症状で死ぬつもり?」

「・・・・・・・・」

由記が私の前で仁王立ちして怒っている。

私は手にコップを持ったまま反論できなかった。

どうやら私はバスタブであのまま寝てしまったらしい、しかも1時間以上お風呂にいたせいか軽い脱水症状もあって動けなかった。

 深夜に帰ってきた由記がこんな時間にと不思議がって覗いたところ、私を見つけてくれたのだった。

「ごめんなさい。」

「どうしたのよミドリ、何かあったの?」

それが、大有りよ。

と言いたいところだったけれど、由記の剣幕がすごかったので言い出せず。

「何にも。ちょっと疲れただけよ。」

「ほんとに?」

「うん。」

私の反応に納得いかないのかしばらく黙っていた。

「分かった、ちゃんと水を飲んで先に寝てて。」

「了解。」

けれどそのまま無言で向かい合っていてもしょうがないと思ったのか私の額を小突いてバスルームに向かった。

手の中のコップを一気にあおり、私は由記が帰るまで持っていた希望を諦める事にした。



ぎしっ。

ベッドが人の重みで沈む。

由記はやっと寝られるようだった。

私といえば変な興奮の為、まだ寝られなかった。

お風呂で少し寝たからかな?

「ミドリ」

遠慮がちな声で由記が呼んだ。

壁を向いていても私が起きているのが分かっているのだと思う。

「なに?」

「大丈夫?」

「大丈夫よ、意外と頑丈だから。」

「・・・そっちじゃないわよ。」

由記は私の身体の下に腕を通し、後ろから抱きしめてきた。

柔らかいその動きに私は思わずほっとする。

「なんで緊張なんかしてたの?」

「緊張なんか・・・・」

「だって、私が抱きしめたら力が抜けたじゃない。」

やさしく笑う由記。

「ほっとしたの。」

「なんで?」

「・・・ちょっと嫌な事があってね。」

「もしかして、それで長湯してたの?」

「するつもりじゃなかったんだけど、結果そうなったかな。」

回された手に触れる。

「今度からは不貞寝の方が危なくなくていいよ。」

「不貞寝っていうのは文句がある人に対して有効でしょ?」

由記には文句はないし、帰ってきて思い当たらない理不尽な怒りを当てられたら嫌じゃない。

今回は思い出すのも嫌な男だし。

ムカついてきた。

「仕事の事?」

「プライベート。」

「そんな言い方する時は、私が知らない誰かとの事だよね? ミドリ。」

ぶっきらぼうに言ってしまってから、しまったと思う。

「・・・・」

「いいよ、詮索しないから。」

由記はそう言って私のうなじに口付けた。

「いいの?」

「嫌なことでしょ? 嫌な事を聞かれるのは誰だっていい気はしないじゃない。」

「ありがと。」

ヘタな詮索をしないのが由記、私だったら無理だと思う。

その分、彼女の方が大人だった。

 私は目をつぶる。

怒られて諦めていた希望は叶えられたから、眠れるかもしれない。

耳元に由記の吐息を感じながら身を委ねた。

 今日起きた嫌な事は忘れられそうだった。

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