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「ぷはぁ……イ、イブさん? いきなり何を」

 

 あれから姉さんたちが戻ってきたり、準備万端なガイアルに絡まれたりもしたけど、クロイスはまだこない。


「昼前には来るように伝えておいたが、急に怖気づいたのかもな」

「そんな! クロイスはボクを見捨てるような真似しないよ!」

「フン。来ていないのが証拠だろう。代わりにお前が出るか?」


 今日の勝負は、本来ならボクが戦う予定だった。

 しかし、クロイスが代わりに戦ってくれると……彼に、ボクのこれからを託してある。

 だからその誘いに乗ることは、クロイスに対する裏切りだ。


「いや、ボクはクロイスを待つよ。もし本当に来なかったら、不戦勝にしても構わない」

「ほう、なら待ってみるか。既にパーティの用意も済んでいる。料理が冷めるので長くは待てないがな」


 テーブルには既に料理が並べてある。

 決闘をしたあとに祝勝会、とでもいう予定なのかな?

 既に勝つ気でいるなんて、随分と気が早いことで。


「そういえば、クロイス以外は全員そろったの?」

「ん? ああ。お前の希望通り、関係者以外は呼んでいないぞ。俺としては大勢に見せてやりたかったが」

「それでも、使用人を集めるのはやりすぎだと思うんだ」

「なんだ。何なら俺の父親も呼んで……」

「ごめん。充分だよ」


 そんなやり取りをしているうちにも、だんだんと料理が冷めていく。


 横に座っているイブさんは目を閉じているけど、離れた場所にいる姉さんとリリアさんは相変わらずイチャついているようだ。

 そしてガイアルは、机にトントンと指を打つペースが速くなっているとこから、そろそろ我慢の限界なのだろう。


「よし、そろそろ飯にするか」

「え、ちょっと待って。じゃあ勝負は……」

「俺の不戦勝、で良いのだろう?」


 ここまで待って来なかったんだ。

 事情があるとしても、多分もう……こんなことなら、ダメ元でもボクが戦っていればよかった。


「……うん。仕方ないか」

「ではハヤト。お前は俺の嫁となれ」

「わかっ――」

「待ちなさい」

「んんっ! んんーっ!」


 ボクの言葉は、イブさんに止められる。

 ……それも、顔を両手で挟まれて、無理やりキスをされる方法で。


 その行動はボクだけではなく、ガイアルや姉さんたちの視線を集めるのには充分だった。


「お、おい。何をやっている! 離れろ!」

「ちょ……私の身体相手に、何やってくれるのよ!」

「そ、そんな激しく……は、はしたないですわ……」


 三者三様の反応だけど、一番驚いているのはボク自身だろう。

 やがて、呼吸も苦しくなった頃にゆっくりと解放される。


「ぷはぁ……イ、イブさん? いきなり何を」

「ふぅ。ごちそうさま」

「説明しろ! その唇は俺が貰い受ける予定だったんだ!」


 いや、ガイアルのでもないけどね。

 というツッコミより先に、姉さんがずかずかと近づいてきてイブさんの肩を掴んだ。


「どういうつもり?」

「あら。もうその身体に、未練はないのではなくて?」

「そ、それは……」


 姉さんと目が合うも、すぐにそらされる。

 あんなに戻る気はないと言っていたのに、まだ姉さんの身体(・・・・・・)という認識はあるようだ。


「どうせ彼に奪われるのなら、最後にと思って」

「くっ、それにしても、何故このタイミングで」

「決まっているじゃないの…………未来を変えるため、よ」


 その意味がわかるのは、ここではボクだけだ。

 まだボーッとする頭を働かせて、キスされた意味を考える。

 姉さんの身体だし、女同士ならノーカンだよね? それにしても、イブさんの唇、柔らかかったなあ……。


 て、キスのことじゃない! 意味を考えないと。


 姉さんは話が通じないイブさんをあきらめて、ボクにターゲットを変更したらしい。


「何一人で頭をブンブンふっているのよ」

「イブさんのせいだよ! いきなりあんなこと……」

「フフ。私に必要なのは、少しの時間稼ぎ。この意味がわかるかしら?」

「何を企んでいるの? 僕とリリアの仲を邪魔する気なら、いまからでも――」

「……来たわね」


 この場にいる全員が聞こえただろう。

 しばらくして、屋敷の門に馬車が停車した。

 その間、ボクらの間に会話はない。


 そして、門が開かれる。




「遅くなった! すまない!」

「大遅刻だぞ。どう落とし前をつけてくれるんだ」

「……クロイス」


 そこにはローレンスさんを伴ったクロイスがいた。

 ……やっぱり、来てくれたんだ。

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