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「え? 今日は一緒の部屋で寝ようと思って」

 

 イブさんは大人しく帰ったけど、ボクはこのままクロイスの家に泊まる予定だ。

 女の子の身体と違って、男はとくに準備も要らないし楽だね。


「前回はこの着替えも使えなかったからな」

「姉さんの身体で着るのはさすがにね」


 クロイスの家には、よく訪れるボクのための衣服も用意してあったけど、勿論それは男性用だ。

 なので前回や前々回は出番がなかったのだけど……今回ばかりは役に立った。

 用意してくれたローレンスさんも、どこかホッとしたような顔だけど……次回はまさか姉さん用の服を用意していたりしないよね?


 ボクは元に戻るつもりだけど、用意周到なローレンスさんのことだ。

 もしも、を考えてありそうなのが怖い。


「ちなみに、ハヤトの家には伝えていないぞ」

「まあ……うん。何となく察してそうだけどね」

「明日も学園はある。セシリア嬢が暴走しなければ良いが」


 父さんの場合は、まあしょうがないかで流してくれそうだけど、姉さんにとっては別だ。

 今日はともかく、明日はあの手この手でボクに霊草を食べさせにくるに決まっている。

 ……明日は朝食を多めにもらって、何も食べないようにしようかな。


「何にせよ、今日は早めに寝たほうがいい。ハヤトも疲れただろ?」

「そうだね。遊ぶのはやめてもう寝ようか」


 そうしてボクたちはクロイスの部屋へと向かう。

 扉が閉められ、二人きりの部屋でクロイスが問いてくる。


「……遊ぶのはやめると言ったよな? 何故付いてくる」

「え? 今日は一緒の部屋で寝ようと思って」


 何がおかしいのだろうと、コテンと首を傾げる。

 姉さんの身体だったときは不味いけど、クロイスと泊まるときは一緒に寝ることもあった。

 大体は遊び疲れて、というパターンが多かったけど、今日は久々だもの。

 ……ないとは思うけど、姉さんの放った刺客に潜り込まれる可能性も僅かだが存在する。


 そのことをクロイスに説明すると、しぶしぶといった様子で了承はしてくれたようだ。


「ない……とは言い切れないのが怖いな」

「そうだね。半年くらい前に似たような前科があるから……」


 床に布団を敷いてもらい、同じ部屋で横になる。

 いつもは寝落ちするみたいに横になるけど、今日はただのお泊まり会な気分だ。


「眠たくなるまでお話でもしちゃう?」

「まるで女性みたいなことを……あ、いやすまない」


 以前はそんなことなかったのに……と嘆くクロイスに、いつのまにかボクが女性に馴染んでいたことに気づく。

 気にしているだろうと気をつかってくれたみたいだけど、もう遅いよ……。


「ボクだって……ボクだって……うぅ」

「おいやめろ。変に慣れたせいでセシリア嬢が泣いているように見える」

「せっかく戻ったというのに、それはないよ」

「あ、いや……面影が、な」


 姉さんの面影が残っている、と言われたのだけど、それってただ双子だから似ているだけじゃない?

 そう指摘すると、クロイスも納得してくれたらしい。

 それからはお互いに話さなくなったけど、時たまゴソゴソする音が聞こえるってことは、クロイスも中々寝付けないのだろう。


 久々の男の身体に、最近はご無沙汰だったうつ伏せを堪能しつつ、その日は心地よく眠りにつくことが出来た。

 これも隣にクロイスがいたおかげかな?




 翌日。

 よく眠れたボクとは裏腹に、クロイスはあまり寝付けなかったみたい。


「もしかしてボク、いびきとかうるさかった?」

「いや、そうではないのだが……すまない。これは俺の問題だ」

「体調でも悪いの? なら、学園の先生にでも見ていただいたほうがよろしいのでは……あっ」

「そう、だな。そうするか」


 自然と女性口調になってしまったボクをスルーして、クロイスはローレンスさんに薬を貰いに行った。

 いつもはボクがフォローされてばかりだし、こんな時くらいはクロイスの役にたてるように行動しよっと。




 しかし、クラスが違うクロイスとはそもそも接点が少なかった。

 一緒に登校はしたのだけど、それ以降はボクもクラスにこもっているので様子を知ることはできない。

 移動しても良いのだけど、そうすると姉さんがなぁ……。


「どうなさいました、ハヤト様?」

「あ、いや……何でもないよ。リリアさんは普段通りなんだね」


 昨日姉さんにいろいろ説明されたとは思うけど。

 彼女はそれでも、ボクにとやかく言ってくる様子はなかった。


「……私が口を出せるような問題ではありませんので。それに、お姉様も結論を出してくださる、と」

「そっか、姉さんがね。あ、念のために今日のお茶会は欠席でも良いかな? リリアさんのことを信用していないわけじゃないけど」

「無理もありません。他の方には私から伝えておきます」

「ごめん。ありがとう」


 彼女はボクに対しても友好的だけど、姉さんに一番近い人物でもある。

 ボクの警戒心が緩むと思って利用されそうな人物だし、警戒しておくにこしたことはないよね。


 それに、ボクには別のお茶会予定も入っている。

 まだ姉さんと顔は合わせていないけど、珍しくイブさんが誘ってきた。

 クロイスも呼ばれているし、姉さん対策でも考えるのかな?




 そんなこんなで、あまり知らない集まりをのらりくらりと躱し、お昼はイブさんとクロイスと中庭で落ち合う。

 そして、出会った一声がコレだった。


「貴方、元の(・・)身体に戻ってみない?」


 イブさんが言う元の身体って、もしかして姉さんの身体?


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