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「ちなみにハヤトと同室だ」

 

 陸についてから詳しい説明を求めるも、ローレンスさんの言い分は覆ることはなかった。


「サラ様とペアになるとは予想外でしたが、公平な案件ではないでしょうか?」

「だからってな……さすがに問題があるだろ」


 ちなみにイブさんから聞いたことは二人に伝えていない。

 もしそんなことを言って未来が変わったら……代わりにボクかイブさんが選ばれるかもしれない。

 それは勘弁してもらいたいので、ここはサラさんに犠牲となってもらう。


「反対なさるのは殿下のみです。それとも、私よりもハヤト様のほうがよかったのでしょうか?」

「それはっ!」

「……そうなのクロイス?」

「男のお前、だったらな。見た目はセシリア嬢である今のハヤトよりは、彼女のほうがマシだ」


 ……驚いた。

 もしこれでボクが良いっていうなら、ドン引きするところだったよ。

 ま、よく泊りがけでゲームとかもしていたし、今のボクが姉さんにしか見えないっていうなら仕方ないよね。


「で、ハヤト様はイブ様と寝られるのですか?」

「さっきローレンスさんにも確認したけど、勝った方は関係ないみたい。イブさんだって、それは嫌でしょ?」


 隣にいたはずのイブさんは、いつのまにかクロイスの横にいた。

 二人で何か話していたようだけど、こちらを見てウンウンと頷いている。


「仲、よさようだね」

「殿下の想い人というのが、あの方なのでしょうか? もしかしてハヤト様は嫉妬でも――」

「え、何か言った?」

「しっ」

「あっ、話が終わったみたいだね。何を話していたんだろ」


 サラさんはそれ以上何も言わず、黙って後ろを付いてくる。

 ……二人が仲良くしてくれるのは嬉しいのだけど、このモヤモヤする感じは何だろう。


「ちょうどよかった。ハヤト、今晩は彼女も泊めることになったぞ」

「え?」

「今から寮に戻ると、門限に間に合うかわかりません。なら、ローレンス様のご厚意に甘えさせてもらおうかなと」


 ……誰この人? と言いたいけど、そういえば本性を見せる前のイブさんはこんな感じだった。

 この前クロイスが言っていた本当の気持ちって……もしかして、イブさんの本性にようやく気づいたのかな?


「ちなみにハヤトと同室だ」

「なんでさ!」

「空いている部屋はあるが、急な来客だったものでな。整えるのには時間がかかる。ローレンスの指示もあるからちょうどいいだろう」


 首をゆっくりと横に動かす。

 イブさんは既に了承済みのようで、顔を俯かせている。

 ……何その可愛いらしい反応。


 そして、誰かに肩をポンと叩かれる。


「ハヤト様も頑張ってくださいね。私は殿下のお世話を務めます」

「………………」


 そのお世話に、キスは含まれますか?

 浮かんだ疑問は、返答が怖くて聞くことができなかった。




 釣った魚を振る舞われ、全員湯浴みを終えてからが勝負の始まりだ。

 時間短縮のためとサラさんが乱入してきたり、何故かイブさんもソワソワして大変だった。

 サラさんの身体は見慣れているからと言ったら引き下がってくれたけど、それを見ていたクロイスの非難するような目は忘れられそうにない。


 ともかく、これで今夜の勝負は二対二の互角だ。


「昼間と同じペアでいいか? 部屋割り的にも妥当だろう」

「えっと、その。クロイスは本当に……いいの?」

「良いも何も、手を出すわけないだろ」

「そうですよ。ハヤト様の大切なご友人に何かする気はありません」


 無言でイブさんを見つめる。

 静かに頷かれたけど、何が大丈夫なんだろう。


「今回はそうだな……ペア同士で作戦会議が出来るようにしよう。そして一人でも抜けたら終了だ」

「よし、三回勝負だね」


 配られたカードを確認し合い、先の展開を見据えて作戦会議をする。

 相手に聞こえないように話し合うので、自然とイブさんと密着するも、それは向こうも同じだった。


「……ねぇ、さすがに部屋へ戻ってからだよね?」

「キスのタイミング? それはわからないわね。いつもならベッドの横で……だったけど、彼女は存在すら知らなかったから」


 存在から否定するなんて酷いけど、イブさんの中ではいないことが当たり前だったのだろう。

 二人は今にでも口を合わせそうな至近距離だ。

 ……ボク達もだけど。


「さあ、事前準備は終わったぞ。先行は譲ろう」

「ボクらの力、見せてあげるよ!」

「ちなみに勝者はハヤト様に一つ命令できます」

「なら私も向こうへつこうかしら」

「ちょ、イブさん!?」


 こうして夜も更けていく。

 勝敗は……一勝はできた、かな。




「あー……サラさん大丈夫かな。いくらイレギュラーな事態といっても、襲われていないか心配だな」

「貴方、親友と言っておきながら彼が信じられないの?」

「そうじゃないけど、むしろサラさんが襲わないかが心配だよ。既成事実とかいって、いつの間にかボクの家からいなくなって……」

「それは……ありそうね」


 彼女にはベッドを使ってもらい、ボクは床に敷かれた布団で横になっている。

 最初はイブさんが床にと揉めたのだけど、先程のゲームでの命令が『二人で一緒に寝ること』だったので、ボクがベッドから落ちたという体で乗り切ることにした。

 穴だらけでも良い。だってボクが耐えられそうにないもん。


「そんなに気になるなら、覗きにいく?」

「えっ、それは……はしたないですわ……」

「こんな時だけ淑女ぶるのはやめて。気持ち悪いわ」


 渾身のアピールはイブさんには不評だったらしい。

 でも気になって眠れないのも事実だ。


 なら、このまま様子を見に行くのもアリだよね?


学園パートが旅に出たせいで、三人ほど空気です。

さ、三話後には出番があるはず。

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