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「あー、ごめん。一人誘っても良いかな?」

 

 目が覚めると、そこは馴染みのない部屋だった。


「おはようございます、ハヤト様」

「おはようサラさん。何だかボクの部屋じゃないような……」

「昨日は殿下の家にお泊りしたのですよ。そろそろ手を放してくださいな」

「ほへ?」


 よく見ると、ボクは寝間着からメイド服に着替え(・・・)終わったサラさんの手を握っていた。

 寝ている間、無意識に繋いじゃったのかな?


「ごめんごめん。でもどうしてだろ?」

「慣れない環境で心細かったのでは? 私としては役得でしたが」

「もう、そんなこといって」

「先程ローレンスさんが呼びにきました。ハヤト様もお着替えしましょ?」


 まだ働かない頭で、いつものように着替えを手伝ってもらう。

 やっぱり人の手があるとスムーズにいくね。今日が休みだというのがもったいないや。


「では、行きましょうか」

「うん」


 そのまま二人で食堂へと向かう。

 そういえば……いつの間にサラさんは着替えたのだろう? 手を握ったままだったはずだけど。



 疑問を口に出そうとしたけど、クロイスの姿が見えたことでそれも頭の隅に追いやられる。


「おはよう。昨日は遊びに行って良いものかと悩んだぞ」

「もうっ、充分遊んだでしょ。それにサラさんもいたから困るよ」

「……だよな。俺は間違っていなかった」


 そのやり取りをサラさんは不思議そうに見ていたけど、ローレンスさんはウンウンと頷いていた。

 あの様子から相談されていたに違いない。


「それに、二人してボクをハメるのが悪いんだからね!」

「実に弄りがいが……いえ、実に連携がうまくいったもので、つい」

「だな。ムキになって自滅するハヤトも面白かったぞ」


 いつもなら二人で遊ぶだけなので、三人で遊ぶ面白さを実感できたくらいだ。

 ……まあ、やられっぱなしだったのは癪に障るけど。


 今度遊ぶときは、無理にでもローレンスさんに参加してもらおっと。


「今日はどうするんだ? 親からはもう一泊するように言われているんだろ?」

「あー……言われてはいないけど、そうだろうね」


 同行者へと顔を向けると、サラさんは無言で荷物をアピールする。

 二人分にしてはちょっと多いかな? と思っていたけど、確かに荷物は二人分だった。

 それが二日分あった、というだけで。


 サラさんも聞かされていなかったらしく、多分二日泊まって来いということなんだろうなーってクロイスと話し合ったくらいだ。


「俺としては問題ないが……ローレンスも良いだろうか?」

「私めは殿下に従うだけでございます」

「うーん……今帰ったら父さんは教えてくれないような気もするし、頼めるかな?」

「親友の頼みなら大歓迎だ」


 やった!

 これで昨日のリベンジができる! 今日こそはサラさんも味方に引き入れて、今度はクロイスをフルボッコにしてやんよ。

 そう意気込んだけど、他の二人は別のことを考えていたみたい。


「さて、ならどうするか……朝から早速、というのも芸がないからな」

「そうですね。折角ならこの時間帯ならではの事をやりたいですね」

「えっ?」

「ハヤトは何か希望はあるか? あまりひと目についてほしくはないが……」

「ハヤト様? もしかして……」


 一緒に暮らしているだけあって、サラさんには勘付かれたらしい。

 ……ここで認めてしまったら、昨日と同じ二対一の展開になりそうだ。


「や、やりたいことね! このメンバーなら、また釣りなんてどうかな? 前はボクもあまり楽しめなかったし!」

「釣りか。せっかくの船も使わねば意味がないからな。良い提案だ」

「フフ……あの小娘の代わりに、存分と楽しむことにしましょう」


 クロイスもサラさんも、とくに意見はないらしい。

 あと問題なのはボクの船酔いだけど……。


「船に乗られるのであれば、こちらをどうぞ」

「ローレンスさん。これは?」


 目の前に錠剤の入った小瓶を置かれる。

 見たところ、酔い止めの薬だろうか。


「……俺は良いと言ったのだが、ローレンスが薬を取り寄せたんだ。あのときはハヤトだと思っていなかったが、お前の判断は間違っていなかったな」

「恐縮でございます。船乗りにも良く効くと評判ですので、ハヤト様もお気に召されるかと」


 見るからに高そうだけど、お金を払ってもローレンスさんは受け取らないだろう。

 彼の好意は有り難く貰い受ける。


「ワガママに付き合って頂き、ありがとうございます。これでボクもクロイスに負けることはないでしょう」

「ぬかせ。前回は張り合いがなかったからな。ハヤトには負けんぞ」

「私を忘れていただいては困りますね。これでもハヤト様には勝利したルーキーでもありますよ?」


 三者三様の反応をする中、ローレンスさんはやれやれといったように準備をするため消えていった。

 ボクが言うのもなんだけど、サラさん随分と馴染んでるなー。




 そうして出かける準備も整った時、ふと思い出したことがあった。


「あー、ごめん。一人誘っても良いかな?」

「やはりセシリア嬢も連れて行くのか? なんだかんだいってもハヤトは……」

「あっ、そういえば姉さんもいたね」

「おい」


 そういえば最近、姉さんの姿を見かけない。

 婚約者云々の話もあったし、またよからぬことでも考えてそうだけど……ボクの身体、大丈夫かな?


「そんなことより、彼女と約束したんだ」

「そんなこと……フフ、いい土産話ができましたね」


 この間はボクが横取りしちゃったみたいだし、誘いに行ったら彼女は驚いてくれるかな?

 あわよくば、クロイスとも仲良しになって欲しいのだけど。

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