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「まあ、なるようにしかなりません……わ?」

 

 地獄のような二週間が終了した。

 ボクと姉さんの間には、今までになかったほどの共感が生まれている。


「アンタ、実はこんなに大変なことをこなしていたのね……」

「姉さんこそ、女の子って大変だね……」


 行動すること全てにメイドさんが付きっきりで、女性としての品の出し方から令嬢の嗜みまで教えてくれた。

 姉さんには悪いけど、今ではボクのほうが女子力が高いだろう。


「さて、今日から新学期だけど、大丈夫かしら」

「姉さん、口調」

「んんっ、今日から新学期だけど、大丈夫かな?」

「まあ、なるようにしかなりません……わ?」


 姉さんが男言葉を使うように、ボクもお嬢様らしく言葉遣いを矯正された。

 なんかボクのほうがカリキュラムに関して厳しかったのは気のせいだろうか。


 それにしても、何度履いてもこのヒラヒラした服……ドレスのような制服には慣れないな。


「いい? アンタはクロイス様とどうにかして近づくの……ぼ、僕は友人として接するようにするからさ」

「わ、わかったけど、同じクラスに成れるかどうかだね」


 新学期となればクラス編成もある。

 もしそこで、去年の姉さんのようにクロイスと違うクラスなら、接点は無いも等しい。

 逆にボクは、同じクラスだったから仲良くなれたのだけど。




 そうして二人揃って学園へいくと、見知った顔に声をかけられた。


「おうハヤト。こっちだこっち」

「あっ、クロイス。久しぶりだね!」

「うぇ! あっ、いや………俺はセシリア嬢ではなくて、ハヤトに声を」

「あっ」


 そういえば今のボクは姉さんになっている。

 この姿を見て、ハヤト本人だとは誰も思わないだろう。


「ほ、ほら、姉さん。クロイスだよ」

「えっ、ククク、クロイス様ですか! 本日はご機嫌麗しゅう……」

「何言っているんだよ。ほら、クラス名簿見に行こうぜ!」

「えぇぇ!! ハヤ……姉さん助けてっ!」


 そういってクロイスにドナドナされていく姉さんを見送る。

 姉さんは唯でさえクロイスに避けられてるっていうのに、ボクが付いていってもなあ。

 親友が嫌がるだけなので、ここは一人で行動することにしよう。


 クラスを確認すると、姉さんとは別のクラスだった。

 代わりにボクはクロイス、ついでにイブさんと同じクラスらしい。


「あちゃー……でも、これでクロイスは喜ぶかな?」

「あら、セシリア様ではありませんの。これから一年よろしくお願いしますわね」

「え! あっ、こちらこそ、お願いします……わ?」


 お互いの友人関係は教えあったはずだけど、まだ顔と名前が一致しないんだよなー。

 この方は……えーと。


「あら、セシリア様。同じクラスになれて光栄ですわ!」

「わたくしは離れてしまいましたが、どうかお茶会の際は誘ってくださいませ」

「ささ、いつまでも立ち止まっておらずに、移動しませんこと?」


 ダメだ。多すぎてわからない。

 というかボク、ここまで女子に囲まれたことないんだけど!


「わわ、そうですね。早く移動しましょう!」

「? どうかしたのでしょうか? まさかお気分でも……」

「大丈夫ですのわよ! いきませう!」


 そのまま段々と集まりつつ女子を置いて、一人早足で教室へと向かう。

 皆呆気に取られていたみたいだけど、勘弁してよ!




 男性用と女性用の場所の違いに困惑したり、ハヤトと間違えて別のクラスに入室してしまうトラブルはあったにしても、無事に教室へと辿り着いた。


 そこには既にクロイス、あとはさっきボクを囲んでいた女性たちが既に居た。


「あの、ご気分が優れないようなら。お休みになっては……」

「大丈夫ですわ。ですので、しばらく一人にしてください」

「ですが……」

「頼みます」


 免疫がないのに、いつまでも女子に囲まれているのはつらい。

 そう考えると、よくクロイスは平気であれだけの人数を相手にしているもんだ。

 今だってボクの周りに居た女子、そして新しいクラスメイト達にキャーキャー騒がれて集団の中心に立っている。


 そんな彼の想い人は……あれ、イブさんはまだ来ていないのかな。


 彼女は鐘の鳴るギリギリに入室してきた。

 クラスメイトはそれを一瞥しただけで、何事もなく授業は始まる。

 でもボクは、そんなイブさんの行動がちょっとだけ気になった。




 今日はお昼までしかないので、早めに姉さんと落ち合うことにする。

 ボクに言い寄ってくる女子は、悪いけど全員体調不良ということで断った。

 こうしてみると、姉さんって女子グループの中心人物だったりしたのだろうか?


 隣のクラスヘ行こうと扉に向かうと、ちょうどクロイスと鉢合わせした。


「あっ」

「おっ、セシリア嬢でしたか。これから弟のハヤトさんと一緒に遊びに行こうと思っていましたが、そちらは?」

「え、えーと……」


 姉さんなら、間違いなくクロイスと遊ぶことを優先させるだろう。

 ……ちょっと気に食わないな。


「すみません。これから弟と帰宅しお勉強がありますの。遠慮してくださいませ」

「お、おう?」

「では失礼しますね」


 クロイスには悪いけど、これは嘘だ。

 そのままニコッと微笑み、姉さんを回収するために隣のクラスへと向かう。


 クロイスはその場で棒立ちになっていたようだけど、何かあったのだろうか?


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