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「不確定になった未来だからこそ、可能性が出て面白いのよ?」

日付的には2回目の更新です。


 

 イブさんに告白された。


 ……前回は他のクラスの男子に「あの姿に惚れました。オレと決闘して付き合ってください」と言われたけど、今回は違う。

 あの時は一蹴したけど、イブさんは中身がボクだとわかった上での発言だ。


「いくら決闘を代わったからって、ボクは何もイブさんに――」

「それ以外にもあるけど……今はまだ、話せないわ」


 イブさんだけが知る未来に関わってくるのだろう。

 好意を向けられて嫌な気はしないけど、今はその、アレだ。

 押し倒したり迫られたりした状況が、余計に気まずくさせる。


「私は未来を知った上で、それでも貴方が好きなの。だから協力するし、脱線した未来の情報なんてアテにならないけど――」


 彼女としばし見つめ合う。


「貴方が元に戻ることが出来たら、付き合ってください」

「それは……その」


 即答は、できなかった。

 彼女は真剣な気持ちで向かってきてくれるので、ボクもそれに応えたい。

 親友のためとか姉さんの存在とかを理由に断るのは簡単だ。


 しかし、イブさんは未来を知って、それでもボクを好いてくれている。

 この先にどんなことが待っているか不安ではあるけど、先の結果も踏まえての決断だろう。


「も、元に戻れたらで! それまで返事は待ってください!」

「そう。私は男の貴方が好きだから、安心して? 協力の見返りに合うような返事を期待しているわ」


 イブさんが協力してくれる理由はわかったけど、もしかして手伝ってくれる報酬として付き合えって強制されている?


「あの、利用するようで悪いけど……もし期待に沿えなかったらごめん」

「不確定になった未来だからこそ、可能性が出て面白いのよ?」


 意味はわからなかったけど、彼女は楽しそうだったからいいのかな?




 その後はイブさんと細かな確認をした。

 どうやら鐘の鳴るギリギリを狙ったり、一人でいることが多いのはボクやクロイスの気を引くためだったらしい。

 未来では上手くいったので、その行動をトレースしていたとのことだ。


「といっても、もうアテにならないし私も好き勝手にしようかしら」

「それって、イブさんの目指す先は大丈夫なの?」

「私のゴールは貴方次第よ?」


 ストレートに言われるとボクも照れる。

 何でかな、ボクより男らしいや。


「ちなみにあのままいけば、クロイス様と仲良くさせようとハヤト様が画策し、何やかんやで三人で行動するようになるわ」

「え? そのポジションには姉さんが――」

「セシリア様? あぁ……あの王子に消され――何でもないわ」


 一瞬不吉な言葉が聞こえたけど、それってボクがそうなる立場だったってことだよね?


「安心して。貴方は私が護るわ」

「さっきからボクより男らしいや」

「逆にハヤト様は、私よりも女子力高いわよ?」

「えっ」


 その言葉にショックを受ける。

 確かにイブさんから渡されたぬいぐるみを抱えたままだったり、姉さんの金髪にリボンを巻かれてそのままだったりするけど、ボクは男に戻りたいと言うのにあんまりだよ。


「でも、そこが可愛いのだけど……」

「これ返すね! あとリボンも解くから!」


 ぬいぐるみを押し付け、イブさんに巻かれたリボンを解く。

 長い髪がファサと靡いた。


「あら、せっかくお揃いだったのに」

「え? あっ、本当だ」

「うふふ。なら、リボンも男に戻ったら付けてもらいましょう」

「冗談じゃないや」


 最後はお互いに笑い合って立ち去った。

 イブさんの告白は驚いたけど、事情を知っている協力者はありがたい。




 でもあれ?

 寮内を歩いていた足を止め考える。


 クロイスはイブさんが好きだ。これは本人からも聞いている。

 そしてイブさんはボクが……好きらしい。

 だとするとボクは?


 親友の片思いを応援したいけど、それにはボクが邪魔だ。

 イブさんの気持ちはボクに向いている。

 だって「彼女はボクに惚れているから、クロイスは諦めなよ」なんて、親友に言えるわけがない。


 かといってイブさんとクロイスを引き合わせると、気持ちを知っているのにイブさんを裏切るようなことになる。

 三角関係かとも思ったけど、ボクの矢印はどこにも向いていないんだよなー。

 あえていうならクロイスかな? ラブじゃなくて親友の矢印だけど。


 そのままウンウンと考えていると、数人の知り合いと遭遇した。


「あら、セシリア様ではないですか。女子寮のロビーでお一人でしょうか?」

「え? はい。少し相談にのっていましたのよ」

「そうですか。もうすぐ暗くなりますので、お気をつけて」

「ご心配、ありがとうございますわ」 


 そうして彼女たちを見送り、ハッと気づく。

 ロビーに備え付けられた姿見に映るのは、一人の女性だ。


「そうだよ。クロイスには姉さんとして近づけばいいじゃないか」


 イブさんも姉さんの身体には手を出さないと言ってくれたし、ボクとイブさんでクロイスを、姉さんの事が好きになるように誘導する。

 そうしたらボクが戻った後、イブさんと付き合ってもクロイスの恨みを買うことはない、はず。


 そのためには姉さんに誘惑してもらわないと……って。


「その役目、ボクじゃん!」


 ……頭を抱えたボクが復帰できたのは、辺りが暗くなった後だった。

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