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「うん、嫌」

 


 訳のわからない状況や周りの視線に怯え、クロイスの腕に抱きつく力が更に強くなる。

 胸の鼓動、クロイスにもバレちゃっているかな。


 頭の中でグルグル考えながら過ごす時間は、意外とすぐに終わった。

 学園内に入ると同時に、クロイスが腕を解いたのだ。


「え?」

「では、また教室でお会いしましょう」


 それだけ伝えて、クロイスはスタスタと先へ行ってしまう。

 ボクは少しの間その場に残されたけど、すぐに我を取り戻した。

 姉さんの機嫌を損ねないため、いつも学園までという距離限定で腕を組んでいるだけだよね? 

 こんな行動もしてくれるから、姉さんや他の女性はクロイスに夢中なのかもしれない。

 ボクには女性と密着することが難易度高いや。


 ただ……姉さんとクロイスで見慣れた光景のはずなのに、後ろから感じる多数の視線はなんだろう。




 教室に入ると、席に着く暇もなく囲まれた。

 ……こう質問攻めが続くと、ボッチになれた日がいかに貴重だったか実感できるな。


「先日の決闘、お見事でしたわ!」

「あの……セリシア様。私はまた貴方様の元に付きたいですわ」

「次のお茶会では、是非とも優雅に舞うコツを教えてくださいませ。なんなら貸し切って希望者に指導でも……」


 うん。

 せっかく派閥から解放されると思ったのに、皆のキラキラした目を見ているとそんなこと言い出せないや。

 後ろのほうで、オリーブさんがハンカチを噛んでいるのが見える。


「あ、あの……私はただ一生懸命だっただけですわ。皆様に教えられるようなことなんて何も」

「何をおっしゃいますか。あの動き、素人でないことは明らかです。もしかして弟のハヤト様と特訓でもなさったのですか?」

「いえ、弟様と同じ師に教わったのではなくて? ああ、私も役に立たないと切り捨てるのではなく、自己鍛錬に励むべきでしたわぁ!」

「これからお茶会の議題に剣技の舞も取り上げましょうか。いかにダンスへと取り入れ男性の気を惹くか……」


 弁解しようとするも話が飛躍しすぎて、もうついていけないや。

 イブさんは……姿が見えないからまだなのかな。

 昨日の件もあるし、彼女とは話をしたいのだけど。


 鐘が鳴ったのでその場は解放されるも、休み時間になる度に囲まれるのはウンザリだ。

 しかも皆、ボクを褒め称えてばかりなので恥ずかしい。


 イブさんは鐘の鳴る直前に来た。

 話す機会が欲しいのだけど、これじゃ近寄ることもできないや。




 お昼休みになった。

 皆の誘いをやんわりと断り、さて食事をしようと思った時に気づいた。

 ボクの知らない女子が一人、近づいてくる。

 ウェーブのかかった髪に、周囲の注目を集めるほど綺麗な姿と整った姿勢。制服の色は同じなので同学年だけど、立ち振舞はどれも一流だ。


 姉さんの派閥だった人でもないし、この前来たオリーブさんでもない。

 こんな美人が、一体何の用だろう?


「あ、あの! 私と……お昼をご一緒してくださいな!」

「え?」


 知らない女子の登場に、突然の宣言。

 クラスの人には一人で味わいながら食べたいと伝えたところなので、この人は別のクラスの人だろう。


「お誘いは嬉しいのですけど、私は静かに食事を取りたいのです」

「で、では! 対面で私も食事を取ってよろしいでしょうか! 音を立てず静かにしますので!」


 うーん、それならいいかな? ボクの迷惑でもないし。


「ええ、大丈夫ですよ」


 その宣言に、周囲からガタッ! と音が鳴り響く。

 突然の出来事に驚いたのだけど、入り口にクロイスの姿が見えて納得した。

 どうやら王族の礼と重なっただけみたいだ。

 危うくボクの発言のせいかと思い上がるところだったよ。


 彼女も着席していざ食事……となったのだけど、周囲からやけに注目されているみたいだ。

 どうしてボクらの机周りだけ閑古鳥が鳴いているのかな?


「そういえば、あなたのお名前を聞いておりませんわ」

「……まさか、お忘れになられたのですか!」


 この世の終わりといった顔をされるも、彼女の顔に見覚えはない。

 しかし、ボクにはこのクラスでも使った切り札がある。


「私の心に深く、刻み込みたいだけですわ」

「お姉様……ッ!」


 お姉様っていう呼び名、姉さんも呼ばれていたけど慣れないや。

 彼女はいきなり立ち上がるも、椅子は音を立てずに下げるという徹底ぶりだ。

 この人、熟練メイドさん並の技術を身につけていそう。


「では、改めて名乗らせていただきます。私はリリア・フォーハウトと申します。貴方には今までの謝罪と、これからの方針を伝えにまいりました」

「リリア・フォーハウト……謝罪、ですか」


 もちろん身に覚えはない。むしろ誰ですか?


「昨年は派閥同士で対立していた故、あのような態度を取ってしまいました。しかし! 私は昨日のお姿に感動したのです! 同時に後悔しました。ああ、私は何て愚かなことを! この方と対立していたなんて! と」


 そこまで聞いて思い出した。

 今までの派閥というのは第一勢力の姉さん、第二勢力のリリアさん、第三勢力のオリーブさんと分かれていたはずだ。

 ということは、この人って第二勢力の中心人物なの?


「なので、私達はお姉様の傘下……セシリア派に全員が加入しますわ。どうか、受け入れてくださいませ」

「うん、嫌」


 だって派閥とか面倒だからオリーブさんに丸投げしたのに、今度は別の勢力まで加わって再結成されようとしているなんて。

 食事どころではなくなったけど、ここはハッキリ伝えておかないとね。



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