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「父、さん? なんでここに?」


詳しく話を聞きたいけど、まだ息を切らしているフローラさんが落ち着くまで時間がかかりそうだ。

残っているのは、オリーブさんからもらったコレだけ?


「……まさかね」

「おい。俺の聞き間違いじゃなければ、俺達が元に戻ることもできそうにないと聞こえたのだが……」

「そ、そんなわけはないよ。ほら、探せばどこかに」

「残念だが、これが真実だ」


ボクの希望は、後から入ってきた人物によってすぐに否定された。


「父、さん? なんでここに?」

「フローラから事の次第を聞いてな。挨拶が遅れました。エニフ氏、突然の訪問失礼いたします」

「いや、それよりも説明をしてくれないか?」


元に戻れないとなると、ガイアルも他人事ではない。

そわそわとして落ち着かないのは、ボクもクロイスも一緒だ。


「わかりました。では、うちの愚息も呼んで構いませんか? これは私が始めてしまったことでもありますので」

「わかった。皆、食堂へ集まるように言おう」

「それと、この屋敷の当主にも挨拶をしたいのですが」

「それは必要ない」


そういえば、ガイアルのお父様の姿は見ていないけど、部屋にひきこもっているのかな?

前回は手を出されるかも、ということで近づかないようにしていたけど。


「今は病に侵されているのでな。そっとしておいてほしい。今は私が代行者として責務を持っている」

「わかりました。それにしても……本当にお二人は入れ替わってしまったのですね」


父さんの意見ももっともだ。

クロイスの身体でこの家がどうの言われても実感は沸かないだろう。

しかし、本人たちは既に納得している問題でもあるので、お互いに顔を見合わせたけど騒ぎ立てるようなことはなかった。


「……そのことも含めて、今後の話をしたい」

「ええ、時間は本日限りです。ハヤト、お前もすぐに決断をしなければならんぞ」

「決断って……」


チラリ、とクロイスやガイアルを見る。

気づけば三人の間で視線が交差していたけど、ボクらは何も言わなかった。

だって、口に出さなくても何のことかはわかっているから。




事の重要さに、姉さんもリリアさんも慌てて集まってくれた。

ここには事情を知る人物しかいない。


父さんを筆頭に、イブさん、クロイス、ガイアル、そしてサラさんやフローラさんも控えて、静かに待つ。

ローレンスさんは誰かが入ってこないか、扉の警備を担当してくれるらしい。


「さて……まずは集まってもらえたことに感謝する。そして、私の行動で無関係な人たちまで巻き込んですまない」

「巻き込まれたボクもいい迷惑だよ」

「ハヤト、お前にはバレるなと言ってあったはずだよな? それならどうして、今この人数が集まっているんだ?」

「…………すみませんでした」


元々、姉さんのフリをしろっていうのも無理があった。

イブさんにバレたら、クロイスにもバレるんだもんなー。


「今はそれより、今後のほうが大切だと思われるが?」

「殿下の言う通りです。さて、あえてセシリアと呼ぼう。お前のほうは、どこまでこの状況を把握している」


注目が姉さんに集まる。

リリアさんはひっついたまんまだけど、二人揃って何をしていたのか、若干服が乱れているのは何でだろうね。

そんな姉さんは、クロイス達が入れ替わったことやオリーブさんが来たことも知らなかった。


二人が入れ替わっていると知ったときの姉さんの顔ったら、ボクが何かしたときよりも驚いていてスッキリした。

そのままギャフンと言ってくれたら完璧だったのに。


「お前は警戒するだけではなく、少しは周りを見たらどうだ?」

「……ごめんなさい」

「あっ! そういえばどうして姉さんとボクは入れ替わらなかったのさ。関係のないクロイス達は入れ替わったのに」

「それは簡単なことよ。消化しなかったもの」

「え?」

「やけに籠もっていると思いましたら、そんな無茶を……」


どの料理に霊草が含まれているか不明。

そんな中で食事をせざるを得なかった姉さんは、食べたものを全て吐き出すという暴挙に出たらしい。

父さんいわく、消化されなければ意味がないらしいし、いくら吸収されやすいといっても吐き出せば影響はないそうだ。


「そこまでして、嫌なの?」

「うん。僕はこのまま、リリアと添い遂げるよ」

「あなた……」


いつの間にか発生した桃色空間に、父さんまでもがサッと目をそらした。

……もう視界に入れない気だな、あれは。




「さて、本題に入ろうか」


サクッと姉さんたちは無視して、保管庫が襲われていた件について。

フローラさんの知らせを受け、別の場所に保管してある霊草を取りに行ったところ……そこは何者かに侵襲された後だったらしい。


「どうやら何処かから情報が漏れたらしい。国家案件でもあるというのに、これが王の耳に入りでもしたら管理者はクビだ」

「それってクロイスの?」

「……ああ。殿下がこうなっている以上、隠蔽はできません」


クビというのは、物理的にもありえる。

勿論犯人もだけど、管理者の警戒が甘かったせいで盗まれた責任もある。

何かの罰で済めば良いのだけど。


「犯人はやはり、あのオリーブ氏の関係者か?」

「そのことについてだ。フローラ、サラ、厨房でおかしなことはなかったか?」

「ありましたね。見慣れないメイドが、やけに香辛料をふりかけていましたね。あとはかき混ぜすぎでは? と注意したところ、これくらいが普通ですと返されました」

「私は配膳の時に……全ての皿に均等に盛られたのが気になりました。いくらベテランといえど、多少の誤差は出るはずですが、あの方はキッチリと計量したかのように均等でしたね」


言われてみると、各々の料理に差はなかった気がする。

でもそれ、もはや人間業ではないよね。


「その人物の技術はさておき、問題は使用された量だ」

「え? そんな使われているようには見えなかったけど。大きな葉っぱ? が霊草だったみたいだし」

「ああ。それを丸ごと十数枚使い、残りの二十枚は刻んだりして混ぜ込んだのだろう」

「まさか」

「俺もまさかと思ったさ。全て盗むとは、本来の使い方も知らない犯人特有の手口だ」


とりあえず全部、そして混ぜれば効果はでるだろう。

そんな思いで使われたに違いない。

おかげで在庫はゼロになったのだけど、追加はいつ入るのだろう?


「ちなみに、霊草というのはすぐ手に入るのか?」

「それが、天候の関係で早くても数年後。遅ければ数十年後にならないと確保できないようで」

「ということは……」

「残されたのは、これだけになります。次の機会は数年後です」


全ての視線が、小さく包まれた霊草に集まる。

ボク達が戻るか、クロイス達が戻るか。


つまりはそういうことらしい。


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