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「あいつも案外、王族の立場を手に入れて喜んでいるんじゃないか?」

 

 さっきからおかしいと感じていたけど、まさか二人が?


「無差別に対象にするとはな。俺らまで影響を受けるとは予想外だったぞ」

「ちょっと待って。二人って遠縁で血の繋がりは……」

「あったんだろうな。現に、こうなっている」


 クロイスもやれやれと呆れたように席へと座っている。

 なんか、ガイアルよりも冷静なのが気になるけど。


 まだボクを解放してくれないガイアルだったけど、ボクのお腹から情けない音が聞こえてきた。


「……とりあえず、飯にしよう」

「~~~!!」


 その音はガイアルにしか聞こえなかったみたいだけど、ボクの顔は真っ赤に染まっていたことだろう。

 席についたボクを見て、イブさんやサラさんも察したようだ。


「ま、あれだけ泣き喚いていたらね」

「ちょ! それは言わないでよ」

「フフ。恥ずかしがるハヤト様をまだ眺めていられますのね」


 今日は話し合いも兼ねているので、サラさんもフローラさんも同じテーブルだ。

 けど、そんな微笑ましいものを見る顔でこっちを見ないでほしいかな。


 そうして食事を開始したけど、そこに姉さんとリリアさんの姿はない。


「そういや姉さんは?」

「先に食事を済ませた。俺らもな」


 言われて気づいたけど、クロイスたちの前にも食事は運ばれていなかった。

 ……結構な時間、ボクは泣き続けていたみたい。


 こちらは食事を続けているけど、ガイアルが淡々と話し出す。


「朝起きた時は驚いたぞ。メイドにもどう説明したもんか悩んだものだ」

「部屋が違うことに気が付かなければ、鏡を見ることもしなかっただろう。ま、鏡はなかったのだが」

「当たり前だろ。兄貴の部屋にはあるのかよ」


 ……そういや、ボクの部屋にも前まで置いていなかったな。

 姉さんには『は? 信じられないわ』とも言われたっけ。


「ま、ないのが普通だわ」

「え、イブさんの部屋にもなかったの?」

「そうよ。そんなの別の部屋でいいじゃない」

「うわぁ……信じられない」

「何よ。いつの間にそんな女子力上げて……このっ!」

「いたっ!」


 足を踏んづけられた。

 見えないからって、食事中だよ? といった目で非難するも、どこ吹く風といった感じでスルーされた。


「当然、元には戻れるんだよな?」

「それが、その……」


 ボクの代わりに、先に食事を終えたフローラさんが説明してくれる。

 いわく、私の配膳ミスでそうなってしまったとのこと。

 いわく、モノがないので、どうにかして旦那様に調達してもらう。

 いわく、今日中に調達できなければ、あと一ヶ月はそのままだということ。


 そんな旨を伝えてくれた。

 あと一ヶ月。

 ボクもそうだったけど、その期間は身体を手放すには長すぎる。

 具体的には、周りの人間関係と身体の順応について。


 二人の考えも同じだったようで、どうにかして今日中に戻りたいとのことだ。


「姉さんはこのことを知っているの?」

「……いや、ハヤトがどうなっているかわからなかったからな。黙ったままやり過ごした」

「リリアとのやり取りから、お前達に影響がないとはわかっていたがな」


 じゃあ、事情を知るのはここにいるメンバーだけ。

 霊草……霊草かぁ。

 父さんもストックがないと言っていたし、今から手に入れるのは大変だ。


「まずは父さんに確認してみるよ。それでもダメなら……」

「ダメなら?」

「どうしようね?」

「……ま、なるようにしかならんさ。俺は戻るぞ」


 ガイアルが部屋に戻ったのを皮切りに、各々も部屋へと戻り始める。

 あとは指示だけ出して、どうなるか。




 あれからフローラさんはローレンスさんと共にボクの屋敷へと向かった。

 父さんに霊草の有無を確認してもらって、ローレンスさんに二人が戻らないとどのような損益があるか説明してもらうためだ。


 王族が関わったとなると、父さんも全力で動いてくれるに違いない。

 だってそうしないと、父さんの首も物理的に飛びそうだからね……いくらフローラさんのせいじゃないと言っても、こうなった以上は仕方ない。


 二人は体格こそ多少違えど、普段通りに過ごしている。

 ……ボクと姉さんみたいに大幅に変わっていないからか、気楽なもんだね。


「どう? ボクの気持ちも少しはわかった?」

「あまりわからんな。動きに違和感があるが、それだけだ」


 自分じゃない人の身体を動かすといっても、クロイスはいつも通りだ。

 ガイアルも部屋に戻ってくつろいでいるらしいし、大物すぎない?


「貴方達、戻れないかもしれないのよ? それでいいのかしら」

「ああ。元から俺は立場なんて興味がない。今みたいにローレンスとのんびり暮らせればそれでよかったんだ」

「でもガイアルは……」

「あいつも案外、王族の立場を手に入れて喜んでいるんじゃないか?」


 え?

 そう思った時には、既に遅かった。

 隣りにいたはずのイブさんは、いつの間にかクロイスの目の前にいて……ガイアルの身体のクロイスに、思いっきりビンタした。


 パァン!

 乾いた音が、部屋に鳴り響く。


「お……おい」

「そんなこと……そんなことって!!」

「ど、どうしたのイブさん?」


 ボクもクロイスも、突然の行動にオロオロとするだけだ。

 やがて、ハッと正気に戻ったかと思うと、彼女はそのまま飛び出していってしまった。


「……どうするの?」

「どうするも何も、なあ」


 ボクらにはいきなりイブさんが怒り出した理由がわからない。

 クロイスは叩かれた頬をさすっているけど、あれは腫れそうだ。

 ……ガイアルの身体なのに、大丈夫かな?



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