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勇者もどきの異世界探検記  作者: ぽんこつ
6/7

第五話

『魔物だぁ―――っ!! 魔物が出たぞぉ―――っ!!』


 瘴気レーダーを起動すると、村の目の前まで例の魔物が迫ってきていた。

 くそ、寝る前にでも確認するべきだった。

 俺はすぐに起き上がると上着を羽織る。


「ハヤト殿!

 魔物が現れました!お二人を連れてすぐに避難を!」


 ミゲルさんがミナとトリナを連れて入ってくる。


「ワシは村の者を避難させて参りますので、皆さまも早く集会所へ行ってくだされ!」


 そう言うと、ミゲルさんは出ていった。


「ご主人さま、早く行きましょう!」

「ああ」


 ………


「うっ…」


 外に出ると瘴気レーダーで感じたような、あの気持ちの悪さを感じた

 これが瘴気か。

 目には見えないが、森の方からその瘴気が流れて来ているのがわかる。


「気持ち悪い、何ですかこれ…」

「ミナも、魔物に出くわすのは初めてか?」

「はい…」

「そうか。

 とりあえず、早く集会場へ行こう」


 集会場は散歩した際に確認した大きな建物だろう。

 もし違ってても村人の逃げる方向に進めば何とかなる。

 とりあえずミナ達を早く安全な場所へ移そう。




「ぎゃぁぁぁぁッ!」


 集会場に向っていると、魔物のいる方向から叫び声が聞こえてくる。

 近くにいた村人も、その声をつらそうに聞きつつ逃げている。

 正直、自分たちだけ逃げるのには罪悪感を覚える。

 逃げ遅れたやつが悪い、という人もいるかもしれない。

 それはある意味正しいだろう。

 しかし、今の悲鳴は魔物を食い止めているという男共の一人だろう。

 他人が戦っている中逃げるのはなんというか、気持ちが悪い。


 そうしているうちに集会場にたどり着く。

 入り口にいた人が、俺たちと周りの人たちを確認すると鐘を鳴らす。


「全員そろったぞ――ッ!!避難しろぉ―――ッ!!」


 男たちが魔物を食い止めている方向に向けて叫ぶ。

 どうやら俺たちが最後だったようだ。

 中に入ると村中の人が集まっていた。

 と、


「ご主人さま、魔物がこっちに!」

「ああ!」


 家から出たときから瘴気レーダーは発動させたままにしてある。

 その瘴気レーダーは、魔物が村を回り込んで集会場に近づいて来ている事を捉えていた。


「くそ、どんどん近づいて…

 このままじゃ男共が着く前に襲われるか?」

「え?ハヤトさん?」


 森側で食い止められていた魔物もこちらへ向って来ているので、男共を追って来ているのだろう。

 しかし、このままだと挟撃されることになる。


「ミナ、俺は魔物を何とかしてくるから、ここで待っててくれ。

 トリナは一緒に来てくれ」


 離れすぎて瘴気レーダーが使えなくなっても嫌だし、切り札にもなるかもしれないからな。


「わかりました!」

「ま、待ってください!

 一人で行くんですか!?」

「ああ。

 早くしないとここにいるみんなも襲われる。

 大丈夫、無理はしない」


 魔法が効かなければ必要以上に粘るつもりはない。

 男共が着いたら一緒に逃げ込むだけだ。


「じゃ、行ってくる」

「ハヤトさん!」




 外に出ると、すぐに三体の魔物が現れた。

 外観はオオカミのような感じだが、全体的に黒く、姿かたちそのものも禍々しくなっている。

 目は、瞳と白目、どちらも赤く染まっており、ぼんやりと光を発している。

 また、目の前に瘴気の発生元があるためか、先ほど感じた気持ち悪さの比ではないくらいの悪寒に襲われる。

 体の奥を直接気持ち悪い何かに触られる、そんな感覚だ。


「ガルルルル……」

「グルル……」

「グゥゥ」


 魔物が揃ってこちらを睨んでくる。


「…トリナ。

 一緒に来いって言っといてなんだが、避けそこなってやられるとかは無しだからな?」

「…はい」


 まずは牽制代わりに最初に覚えた下級の火属性魔法、ファイヤーボールを打ち込む。

 例のトリナを通した魔法を使おうかとも思ったが、下手に使うと周りの建物や自分自身を巻き込みそうなのでやめておいた。


「グァゥッ」

「なっ!?」


 避けられた!?


「嘘だろ…」


 かなりの速度だったはずだが、容易く避けられてしまった。

 かすりもしない。

 何より、攻撃が来るのを見てから反応していた。

 間違いでなければとんでもない反射神経だ。

 今度は、魔物が三匹同時にこちらに襲い掛かってくる。


「っ!」


 魔物の足元から石の棘を生み出す。


 ズシャァッ


「ギャゥァアッ!!」


 やった、一匹仕留めた!

 しかし残りの二匹が棘をかいくぐってこちらに襲い掛かってくる。


「くっ!」


 とっさに魔物の目の前に壁を作る。


 ドカッ

「ギャインッ!」

「だあっ!」


 間髪入れずに壁の向こうに棘を出す。


「ギャアッ!」

「やったか!?」


 くそ、壁のせいで確認できない。

 先ほどから瘴気レーダーを使ってはいるものの、近すぎるせいか、或いは周りの瘴気が濃すぎるせいかうまく機能しておらず、あと何匹なのかはっきりしない。


「ご主人さま、後一匹です!

 森の方の魔物も迫ってきてますから、早くしないと挟み撃ちにされますよ!」


 ナイス!

 トリナが上から状況を報告する。


「了解だ!」


 叫ぶと同時に魔物が壁の脇から回り込んできた。


「グルルル、ガァッ!」


 魔物がとびかかってくる。

 くそ、壁を作れるほど間合いがない!


「こんにゃろっ!」


 とっさの判断で手のひらにファイヤーボールを作り、相手の顔面に叩きつける。


「ギャグアァァァッッ!!」


 頭を焼かれた魔物は地面を転げまわる。

 もう二発ほど打ち込むと動かなくなった。


「はあ、はあ、ふぅぅぅ」


 とりあえずやっつけられたようだ。

 壁の向こうの魔物を確認すると、石の棘が頭を貫いていた。

 これではひとたまりもなかっただろう。

 最初に倒した魔物も動く気配はない。


「やりましたね、ご主人さま!」

「ああ。

 後はあっちから来る奴らだな」


 無事だろうか。


「あっ!来ました!」


 鍬や斧、狩猟用と思われる弓などで武装した8,9人の男たちが魔物から逃げてきていた。

そのうち2人は人を背負っている。

 対する魔物は5匹程度。

 男達は皆、ボロボロになっているようだった。


「助けましょう!」

「ああ!」


 魔法の射程圏内に入るまで近づき、男たちと魔物の間に妨害用の石壁を何枚か作り出す。


「皆さんはやく!

 村の皆さんも揃ってます!」


 牽制にファイヤーボールを撃ちつつ叫ぶ。


「ああ、サンキューだボウズ!」

「あんたもとっとと逃げろよ!」


 おっさん達が礼を言って走り抜けていく。

 言われなくても逃げるつもりだ。

 さて、せっかくだから、実験がてら一発でかいのぶちかましてから逃げてみるか。


「トリナ!妖精通した魔法、火魔法でやってみるぞ!」

「ええ!?

 早く逃げた方がいいんじゃないですか!?」

「大丈夫だ。

 ある程度距離はあるし、普通に撃っても牽制にもならないしな。

 ほら、避けられる」


 実際、距離があるからか先ほどの奴らよりも危なげなく避けている。


「やってみるだけやってみよう」

「まあいいですけど、どうなっても知りませんからね!」

「ああ」


 散歩のときと同じく、俺とトリナで魔力を循環させる。

 それを火魔法として打ち出す。


「はあっ!」


 放たれたそれは魔物たちの足元に当たり、


 地面ごと吹き飛ばしてしまった。


「うわっ!」


 爆発による熱風に吹き飛ばされそうになる。

 てかなんだよこれ。

 オーバーキルどころの威力じゃねえぞ!


「…ふう、収まったか。

 トリナ、無事か?」

「だ、大丈夫です…」


 トリナは俺の後ろに隠れてやり過ごしていたようだ。

 爆心地を見ると黒焦げになった魔物の死体が5つ転がっていた。


「これはなんとも…」


 うーん、倒せたのはいいけど、周りの被害が…


「クレーターみたいになってますけど、どうするんですか、これ?」


 ………


 集会場に戻り、被害を確認する。

 避難してきた村民には特に大きな被害はなかったらしい。

 しかし、魔物と戦っていた男達で、2人が大けが、1人が死亡してしまったらしい。

 魔物が襲ってきたと知ったあの時、すぐに魔物に対しこれを撃ちこんでおけば被害は出なくて済んだのではないだろうか。

 そう考えてしまう。


「おお、これは」

「本当に、すみません…」


 避難していたミゲルさんに事情を説明し、現場に来てもらった。

 やはりというか、すごく微妙な顔をされている。


「いえ、謝る必要はどこにもございませんよ。

 村を救っていただいたことには本当に感謝しております。

 ただ、あの魔物共をここまであっさりと退治されると、なんと言いますかのぅ…」

「…自分でも、びっくりですよ……」


 村の外で風魔法を使って試したときも威力が高そうだとは思ったが、まさかここまでとは……


「最初からこれを魔物に撃ち込んでいれば被害は少なくなったかもしれないのに…」

「…とりあえず、村の皆を家に帰しましょうかの。

 早く安心させてあげなければ」

「…そうですね」


 俺たちはみんなが避難している集会場に向かった。

今までのに比べると短めですね…

ホントは前回と今回、次回でまとめて1話にするつもりだったのですが、ご覧の有様です。

話を重くするか否かで迷ってましたが、こんな感じに落ち着きました。

最初はミゲルさんも犠牲になる予定だったり。

次回も短め?


追記

一部の文と脱字を修正しました。

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