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勇者もどきの異世界探検記  作者: ぽんこつ
4/7

第三話

「さて、まずはここからどうやって出るか、だが…」


 俺はミナさんと一緒に森を抜けだすための作戦会議中だ。

 ちなみに、ミナさんの服がボロボロだったので、寝てる間にかけていたあの上着を羽織ってもらっている。


「ミナさんは何かいい案はない?」

「はい、あの、一つ提案があるんですけど、いいですか?」


 マジか!


「おお!

 ぜひ言ってみてくれ!」

「あの、妖精って飛べると思うんですけど、トリナさんに空から森の端を確認してもらうっていうのはどうですか?」


 …え?

 妖精って飛べんの?

 マジで?


「トリナ?」

「…あ、あははは……

 ……飛べるの忘れてました。ゴメンナサイ」

「…オイ」


 普通、自分のできることについて忘れるか?

 まあいい。

 こいつには後で説教するとして、今はまずここを出よう。


「…とりあえずトリナ、上から確認、頼めるか?」

「はーい」


 なんともお気楽な返事だ。

 トリナは前に出ると


「えいっ」


 という掛け声とともに翼を広げた。

 翼は肩甲骨のあたりから左右それぞれ一枚ずつ出ている。

 形は横に長いひし形で、色は黄色、というか若干白っぽいのでレモン色?まぁそんな感じだ。

 にしても、『紫』の髪に『ひし形の黄色い翼』…


「まさに悪魔か…」

「えっちょっ、ご主人さまなんでそうなるんですかぁっ!」


 あ、ちょっぴり涙目だ


「あー、いやすまん何でもない。

 とりあえず、確認してきてくれ」

「ぶぅ、わかりましたよ、もう」


 あ、ちょっと拗ねちゃったか。

 しかしトリナは素直に上に上がっていく。

 少し見渡して、すぐに降りてきたトリナは


「あっちの方に森の出口が見えました!」


 そう言って俺たちのもともとの進行方向から見て右斜め後ろを指す。

 つまり、


「俺たち、森の深い方に進んでたわけね・・・」


 ガックシ


========


 森の出口の方向に進み始めてしばらく経った頃、俺は気になっていたことについてなんとなく話題を振ってみた。


「それにしても、よくあんなでかいイノシシから逃げ切れてたな」

「え?

 あ、はい、あの、私、見ての通り獣人族なので、そのおかげじゃないかと思います」

「獣人族?」

「はい。

 私はイヌの獣人種です」

「・・・あー、実はうちの村には人間しかいなかったんで、獣人族について全然知らないんだよね・・・

 できれば獣人について詳しく教えてもらえると助かる」

「えっ?」


 あ、やっぱ常識?


「えー、あー、なんというか、すまん。

 俺こんなレベルの世間知らずなんだわ。

 頼む、教えてくれ」

「あ、いえ、すみません、そういうことではなくて…

 あの、とりあえず獣人族についてですよね。

 獣人族はほとんど人間の体と変わらないんですが、体の一部分に人間以外の動物の部位がついているんです。

 ほとんどが私みたいに耳と尻尾くらいなんですが、例えばサルの獣人種の方だと毛深い傾向にあったり、豚の獣人種の方だと時折鼻が豚のものになる方もいたりします」

「ちょい待った。

 さっきから獣人『族』と獣人『種』って言ってるけどこの違いはなんだ?」


 まあ、使い方から大体予想はつくけど、念のため。


「あ、それはですね、獣人全体を獣人『族』、獣人の中で何の動物の特徴を持っているか、という『種族』の事を獣人『種』と呼んでいます」

「なるほどね。

 ところで、その『種』ってどう決まるんだ?」

「両親が同じ種であればその種に、違う種であればどちらか片方の親の種族になります」

「ふむ。

 あ、ごめん、続きをどうぞ」

「あ、いえ、これで大体終わりです。

 あとは、人間より身体能力が高いくらいですね。

 たぶんこの身体能力のおかげで、あのイノシシから逃げ切れたんだと思います。

 でも、ほとんどスタミナ切れだったので、ハヤトさんに助けていただかなければどうなっていたことか……

 本当にありがとうございました」

「あぁ、いや、だから別に気にしなくていいって」

「ですが、本当に感謝しているんです。

 この感謝の気持ちを消すことは出来ません!」

「いやね?変に気にしすぎることは無いってこと。

 こっちも変に気を使われるとやりづらいっていうかさ?

 普通に接してくれるとうれしいかなって」

「あぅ、そうですよね、すみません…

 …あ、でしたら私のことも、あの、さん付けしないで、呼び捨てていただけますか?

 トリナさんのことも呼び捨てにされてますし…」


 なんと、そう来たか。

 女の子の名前を呼び捨てにするっていうのは、なんというか、慣れていないんだよなぁ。

 というか人のことを呼び捨てること自体が、だ。

 え?トリナ?

 あいつはヘンなのの仲間だからいいんだよ。

 それに名前付けたの俺だし。

 そのトリナは羽をしまって俺の肩の上で微睡んでいる。

 自分で飛べよ。

 にしても呼び捨てか。

 ふむ…

 まあいい。腹をくくろう。


「あー、ミナ」

「はい!ハヤトさん!」


 ガクッ

 あれ、俺にはさん付けなのね。

 まあいいや。

 しかし満面の笑みだ。

 うーん、思わず頭を撫でたくなるな。

 ええい、撫でてしまえ。


 ナデナデ


「むぅ」


 およ?

 なんかむくれてる?


「…どったの?」

「あの、なんだか子供扱いしてませんか?」

「いやまぁ、うん」

「これでももう14歳、もうすぐ15歳なんですよ?」


 なん、だと………!?


「ま、まじか…

 俺はてっきり11,2歳くらいかと…

 あ、いや、なんというか、すまん」

「いえ、見た目が子供っぽいのはわかってますから。

 種族の特性上仕方ないですし……」

「え?獣人族ってみんな見た目が子供なのか?」

「あ、いえ、そういうわけではないんです。

 犬系の獣人種には、大型と小型の2種類がいるんです。

 私はその小型のほうで、見た目が子供っぽいのはそのせいなんです」


 マジか…


「そのせいか、あの、『特殊な性癖』を持ってる人に需要があるみたいで、その、私みたいな子がたまに連れ去られそうになるんです。

 私も気を付けてたつもりなんですけど、山に薬草を取りに行ったときに……」

「そうだったのか……

 その、逃げられて、よかったな」

「はい……」

「……」

「……」


 う、空気が重くなってしまった。

 な、何か言わないと


「…ま、まあとにかく、子供扱いしてすまんかった」

「あ、いえ、別に気にしてないです。

 それにあの、ハヤトさんになら、もっと頭をなでてほしいというか、なんというか(ごにょごにょ)」


 うん?


「あ、あああのところでハヤトさんは何歳になるんですかっ?」

「俺?

 俺は17だな。

 あと半年もすれば18」

「あ、じゃあもう半年もすれば成人なんですね」


 お。

 成人が18なのか。

 まぁ、日本以外でもそういうところはあったしな。

 とりあえず、今のうちに知ることができてよかった。


「まぁ、そうなる、かな?」

「それなのにあんなに魔法を使えるなんて、すごいです!」

「あー、いや、それほどのことでは無いだろ」

「それほどのこと、ですよ。

 あの魔法、どう見ても中級以上の魔法でしたよね。

 しかも無詠唱でしたし」

「あー、あれって中級なのか?」

「まあ、たぶんですが。

 下級って基本、前に飛ばすだけなので。

 それを足元からあんなふうに飛び出させるなんて、中級以上の魔法じゃないとできないと思います。

 しかも、それを初級魔法みたいに無詠唱で出してましたから、本当にすごいと思います」


 初級?

 下級より下があるのか?

 …『聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥』だな


「……俺の魔法の知識がずれてるかもしれない。

 一応魔法について説明してくれないか?」

「あ、はい。

 じゃああの、とりあえずハヤトさんの知識を教えていただけますか?」

「ああ。

 まず、魔法は下級、中級、上級、最上級、超級に分けられてて、超級以外はそれぞれ低位、中位、高位に分けられる。

 で、魔法には火、水、土、風、光、無の属性がある。

 とまぁ、ざっとこんな感じかな?

 少なくとも初級っていうのは知らなかったし、詠唱があることも知らなかったな」

「そうなんですか。

 とりあえず、先ほどの説明は概ねその通りでした。

 なので、ハヤトさんが知らないって言っていた事を説明しますね。

 えと、まず初級ですが、別名『生活魔法』と言って、下級の更に下に位置します。

 この初級も、超級と同じく低位、中位、高位には分けられません。

 次に詠唱についてですが、普通、下級以降の魔法には詠唱が必要なんです。

 でも、必ずしも詠唱が必要なわけではないそうで、『詠唱はただ魔力制御のイメージを補助しているだけで、イメージがしっかりしていれば詠唱は必要ない』って習いました」


 マジか。

 あのヘンなの、情報抜きやがったか?

 というか習ったって、学校か?


「そうだったのか…

 ありがとう。勉強になった」

「いえ、あの、私の方こそ、お役に立てたようで…」


 しかし、なぜヘンなのの知識に初級魔法や詠唱についての情報が入っていなかったのだろうか。

 あのヘンなのが情報を伝え忘れた、なんてことはないだろうし、うーん…

 ……例の『魔王に対抗するための力』を制御するにはこれくらいできないとだめだから、とかか?

 まぁ、考えても仕方がないか。


「あの、ところで、ハヤトさんはどなたに魔法を教わったんですか?

 きっとすごい方なんだと思いますが」


 うっ

 やっぱ突っ込まれるか。

 誰に教わったっていうと、トリナかあのヘンなの、か?

 …どっちも『すごい』って感じがしないな…

 うーん。


「故郷の村にいる爺さんから教わったんだ。

 その爺さん、詠唱なんて使ってなかったからな。

 さっき言ってた生活魔法も、『知らなかった』っていうよりは、『当たり前に使ってて名前を知る機会がなかった』って感じかな」


 さっきもファイヤーボール(仮)以下の魔法で火種起こしてたき火したしな。


「爺さんも、そんなたいそうな人じゃなくて『普通の爺さん』って感じの人だったな」

「へえぇ、私も行ってみたいです、ハヤトさんの故郷」


 何とかごまかせた、か?


「ま、まぁ、機会があれば、だな。うん」


 そんな機会、一生無いだろうけど。


========


「そろそろ暗くなってきたな…」


 移動を開始して体感的に5時間程度が経った頃、辺りが暗くなり始めた。

 湖にいたときに太陽が真上にあったから、大体17時くらいか?

 一日が24時間であった場合は、だが。


「そうですね……

 今日は野宿でしょうか…」

「だな。

 とりあえず、火を起こすか。

 オイ、トリナ、起きろよ。

 今日はここで野宿だ」

「ん、んぅ、ふぁあぁぁ。

 ぁ、ごしゅじんさま、おはようござい、ま、ぁ、ぁぁぅふ」


 あくびばかりだ。

 結局、ずっと俺の肩で寝ていた。

 こいつには後で説教する内容が増えたな。

 しかし、これで夜寝れるのか?


「さすがに寝すぎだ、ったく。

 とりあえず薪を集める。

 手伝ってくれ」

「はぁーい……ふぁぁぅふ」


 …大丈夫だろうか。

 …まぁ、大丈夫だろう。うん。


 ………


 とりあえず薪が集まり、たき火をおこす。

 辺りは完全に暗くなってしまっているので、火のおかげで辺りが明るくなる。

 暗い森は少々以上に怖かった。なので一安心だ。

 たき火では、先ほどのイノシシの肉の余りと、ここに来る途中に遭遇したシカの肉を焼いている。

 なんとも重かったが、晩飯の時に食糧が無いのは困るからな。

 それにもったいないし。

 命を奪ったならきちんとその命に報いねば。

 なんつって。

 にしてもシカって草食のくせにやたら凶暴なんだな。

 俺たちを見るなり襲い掛かってきやがった。

 しかし、ここまで来る間に思ったのだが、この森は野生の動物が少ないのではないだろうか。

 湖のイノシシとシカ以外、何とも会っていない。

 ・・・ただの考えすぎだろうか。


「ところで、寝てる間の見張りが必要だよな。

 またイノシシとか出てきたらたまらないからな。

 二人にもやってもらって大丈夫か?」

「はい、ご主人さま!」

「大丈夫です」

「そうか、ありがとう。

 とりあえず、ミナは最初と真ん中と最後、どれががいい?」

「えと、私はいつでも構いません」

「ふむ。

 トリナは、どれがいい?」

「私もどこでも構わないです」


 どっちもどこでもいいか。


「じゃあ、最初は今まで寝てたから眠気が少ないであろうトリナ、次に俺、最後にミナの順でいいか?」


 元の世界では結構不規則な生活をしてたからな。

 寝てる途中に起きるのは得意だ。


「大丈夫です」

「はーい」


 よし、これでOKだ。


「ところでトリナ」

「なんですか?」

「お前、自分で飛べるんだったら俺の肩に乗る必要なくないか?しかもずっと寝てたし」

「うっ、すみません」


 っと、そろそろ肉も焼きあがってきたようだ。


「肉も焼けたみたいだし食事にするか。

 ほい、ミナ」

「ありがとうございます」

「ほれ、トリナの分」


 ちなみに俺やミナと同程度の量だ。

 あの湖畔でもこいつ、こんくらい食ってたからな。

 てかこの40センチの体の中のどこに入るんだろうか。

 体とほとんど同じ大きさだぞ。


「え、いいんですか、ご主人さま?

 てっきり寝てたのを怒って分けてもらえないかと」

「いやコラ、俺は飯抜きにするとかそこまで外道じゃねえぞ。

 湖でもこんくらい食ってたろ。

 ほら」

「ご主人さま…

 ありがとうございます!」


 うん、元気を取り戻したようだ。

 あのまましゅんとされてちゃ罪悪感がある。


「ふふ」


 お?

 何やらミナが笑っている。


「どったの、ミナ?」

「あ、いえ、すみません。

 何でもないです」


 うーん、そう言われると気になるんだが。

 まあ、少なくとも俺はこういう時追及されるのは嫌だからな。

 追求しないでおこう。


「そう。

 ほんじゃま、いただきまーす」


 がぶっ


 …うん。

 湖で食ったときはおいしく感じたけど、二回目ともなると調味料が欲しくなるな。


 ………


 俺は寝る前にトリナの感覚を借りて、瘴気、というか魔物の気配を調べる。

 この世界に来た時のあの魔物の群れらしき気配が今どこにいるか気になったからだ。

 もちろんトリナの許可は得ている。

 魔力の繋がりを通してトリナと俺の感覚を重ねる…

 よし、出来た。

 前回よりもずっとスムーズに行ったな。

 で、あの気配は…いた。

 前よりも近いか?

 俺たちの方には向かっていない。

 まぁ、とりあえず今回は大丈夫そうだ。


「トリナ」

「はい?」

「念のために、あの魔物の気配にも注意しておいてくれ」

「わかりました、ご主人さま」

「頼んだ。

 しばらくしたら起こしてくれ。

 じゃ、お休み」

「お休みなさ~い」





 …

 ……

 ………

 …………

 ……………眠れない

 地べたに直で寝るのに慣れていないせいだろうか。

 キャンプとかしたことなかったからなぁ、うちの家族インドア派だったし。

 あと、あの気持ちの悪い瘴気の気配が気になる、っていうのもる。

 …起きよう。


「トリナ」

「えっ、あれ?ご主人さま?

 まだ時間がありますけど寝ないんですか?」

「寝れないんだ。

 少し早いけど交代しよう。

 ところで、昼間あんなに寝てて、この後寝れるのか?」

「はい。

 あれはご主人さまの魔力に体を慣らしてたんです。

 まだ完全でもありませんし、すぐ眠れると思います」

「そうだったのか。

 でもこれからはそういうことは事前に言っといてくれ」

「わかりました」

「あ、それと見張りをしてる間、魔物の気配を探るあれを使ってたいんだが、いいか?」

「はい、大丈夫です。

 あれは私が寝てる間でも関係なく使えますから。

 っていうか一々言っていただかなくても、いつでも使っていいですよ?」

「そうか。ありがとう。

 んじゃ、とりあえずお前も寝てくれ」

「はぁい。

 それじゃあご主人さま、おやすみなさい」

「ああ。お休み」


 …寝たな。

 もう寝息が聞こえてきた。

 早いな。

 しかし、今日一日でいろんなことがあったな。

 異世界に飛ばされて魔法を覚えて生き物の命を奪って女の子を助けて…

 今までで一番大変な一日だっただろうな。

 あのヘンなのに無理やり飛ばされたときは結構、いや、かなり腹が立ったが、とりあえず今日は、まぁ、そこそこ刺激的な一日だったと思う。

 だからと言ってあのヘンなのに感謝の念とかは一切、これっぽっちも湧いて来ないが。

 さ、見張りだ見張り。

 例の魔物がこちらに近づいてくる気配は今のところない。

 野生動物の気配もないが、油断は命取りになる。

 気を抜かないようにしよう。


 ………


 何事もなく三時間程度が過ぎる。

 そろそろ交代か?


「すぅ、すぅ」


 ミナは俺の上着にくるまって眠っている。

 しかし、よく眠っているな。

 起こすのは少々忍びないが、仕方がない。


「おーいミナ、そろそろ交代だぞー」

「う、んん」


 む、起きない。


「ミナー」


 ゆさゆさ


「んぅ、ん、すぅ…」


 …やっぱり起きない。

 まぁ、さらわれて逃げ出して追いかけられて、ミナもかなり大変だったようだ。

 相当疲れていたんだろう。

 …無理に起こすことは無いか?

 よし、寝かせておこう。

 元の世界じゃ睡眠3時間はざらだった。

 何とかなるだろう。

 今も目がギンギンだしな。


「ふふふ、なんだか楽しくなってきた」


 深夜だからか?


 ………


「…ん、ぅ」


 森の中に朝日が差し込む。

 元の世界じゃこんな自然の中で朝日を見たことは無かった。

 嗚呼、なんてきれいな光景なんだろうか。


「あれ?え、朝!?」

「おおミナ、起きたか。

 おはよう」

「ああぁ!すす、すみません私!」

「なあ、ミナ、この景色を見てくれよ。

 本当に、きれいだと思わないか?」

「…え?あの、ハヤトさん?」

「俺はこんなきれいな景色を見たことがなかったんだ。

 自然の中で迎える朝、昇る朝日!

 嗚呼、なんてきれいなんだろうか!

 ハハハ!生きてるって素晴らしい!」

「ハヤトさん!しっかりしてください!」


ユサユサ


「っ!

 ………お、おはよう」

「大丈夫ですか、ハヤトさん!

 いったい何が!?」

「い、いや、ごめん、ただの寝不足。

 ホントごめん」

「寝不足…」


 うう、頭痛い。

 この感覚は久しぶりだ。

 ここ数年、完徹しても何もなかったんだけどなあ。


「すみません、私がきちんと起きていれば」

「いやいや、起こさなかったのは俺だし。

 よく眠れたようでなにより」

「でもハヤトさんが」

「あっはは、俺は大丈夫だよ。

 一日くらい徹夜でも大丈夫だもん。

 このくらいへっちゃらさ」

「へっちゃらさって…

 目を充血させながら言うことじゃないと思います…」


 まじか

 充血してるの?


「ふぁぁ、おはようございます、ってどうしたんですか、お二人とも?」

「あぁいや、何でもないさ」

「?」


 トリナが起きてきたのでその場はあやふやにしました。


 ========


 出発してから約3時間。

 とても、頭が痛い。

 寝てないからだ。

 体を動かしたらそれほどでもなくなるかと思っていたし、実際ぼんやりした感覚は抜けた。

 しかし、注意力が低下しているのかよく躓く。

 あと朝の比じゃないくらい頭が痛い。

 大丈夫大丈夫と言い張って出るべきではなかったかもしれない。

 くそ。

 短時間睡眠や徹夜は慣れてるはずなんだが。


「あの、大丈夫ですか?

 少し休んだ方が…」


 ああ、ミナに心配かけてしまっているな。


「もう少しで森の出口だったみたいだし、まだ大丈夫」


 さっきトリナに確認してもらった。

 どうやら森を出た近くに村があるようだ。


「でもまぁ、もう徹夜はしないようにする。うん」

「そうしてください」


 でもほんと、なんでだろうなぁ……



~1時間後~



「あ、ハヤトさん、森の出口ですよ!」

「おお…」


 ようやっとか!

 この世界に来て二日、やっと森以外のところに出る。

 これで頭が痛くなければなぁ。

 やっぱあの時ミナを起こすべきだったか。

 ああ、水飲みたい。


「トリナさん、この先に村があったんですよね?」

「はい。遠くから見えただけですが、たしかにありました」

「とりあえずハヤトさんを早く休ませないと」


 …やっぱりもう少しとか言わずに休むべきだったかもしれない。

 しかし、森の出口はもう目の前だ。


「森を、抜けた……!」


 目の前には草原が広がっていた。

 少し先を見ると道も見える。

 道を目で追っていくと、村が見えた。


「村ってのは、あれか…」

「みたいですね。

 さあ、ハヤトさん、早く村で休みましょう」

「ああ…」


 ほんと、迷惑をかけてしまった。

 反省しないとなぁ

 くそ、頭がぼんやりと…

 うぅ、水飲みたい…


「あれ?ご主人さま?」

「み…水…」


 ばたっ


「ハヤトさん!?」

「ご主人さま!?」


大変遅くなりましたが、次話もこんな感じかもしれません…


~補足~

紫+翼=悪魔について

劇場版第25話最後の方を参照

わかる奴だけ、わかりゃええ。

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