第41話・太郎の双璧・虎昌と信憲
去年の3月から更新していなかったのですいません。短いですが…
天文19年(1550)3月18日
平倉城
太郎率いる武田軍は突如として小笠原・長尾連合軍に奇襲され成すすべもなく来た道を死にものぐるいで逃げ出す。殿軍を務めるのは板垣信方の嫡男・板垣信憲隊五百。
小笠原・長尾連合軍の追撃は激しく数を減らしながらも着実に後ろに後退していった。
平倉城に辿り着いた板垣隊は五十にも満たずどの者も返り血をつけたり自ら血を流している様であった。
「板垣殿よくぞご無事で」
虎昌は倒れそうになる信憲を支える。
「すまぬ飯富殿」
「これしきの事問題はござらん。しかし追撃は…」
「かなりのしつこさだった」
「小笠原も信濃の守護職という立場だから必死になるのは当たり前、むしろこの程度で終わったと思えば楽な方だ信憲殿」
「確かに、それで太郎様はいかに?」
「全くかすり傷は見当たらないが、戦の恐怖を知ってからか妙に怯えておる」
「無理もなかろう。初陣でお味方が総崩れで死にものぐるいで逃げてきた。誰もが最初に通る壁」
「この恐怖で戦に出ないと言われると我々が困るが……」
「悩ましいな……」
「そうですな、板垣殿は早々にお休みに。城の守りはこの虎昌が引き受けましょうぞ」
「かたじけない」
信憲は虎昌に軽く頭を下げ負傷している右足を引きずりながら城内に入って行くのであった。
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