第39話・武田太郎
遂に信之の兄が登場w
天文19年(1550)3月10日
■甲斐国 山梨郡 躑躅ヶ崎館
「おい!」
今誰かが呼んだ声がしたのだが…気のせいか?
信之はそのまま気にせず廊下を進む。
なんか今日は清々しい一日を過ごせそうだ。
「おい!止まれ!」
やはり声が聞こえる…。幻聴か?だとしたら俺は病気かもしれない。
「止まれと言っている!」
幻聴だと思っていた声がまさか本当だったと驚きながらも信之は振り返るとそこには少年が立っていた。
「あぁ、兄上ですか……。何か用ですか?自分は出陣の準備があるので忙しいのですが…」
「俺もなその戦で初陣するのだ!」
「そうですか、それは良かったですねー」
信之は棒読みながらも褒める。
「それでだな!どちらが上か勝負しようじゃないか」
「嫌ですよ、めんどくさい…」
あっ!ヤベッ…声に出てしまった…
「嫌?あぁそうか、負けるのが怖くて逃げるのか?武士として情けない」
ほらね?普段から嫌味を言ってくるのに断ったりするともっと酷くなるのだ。正直うざい…。1538年生まれで12歳だ。俺より5歳年上の兄である。
「はぁ…」
・武田太郎ーー1538〜1567年
【武田信玄の嫡男。しかし後に廃嫡。史実では
1553年に室町幕府将軍の足利義藤、後の足利義輝から「義」の偏諱を貰い義信と名を変える。これは武田氏の歴代の中で始めてであり足利将軍家、清和源氏の通字でもある。1554年の佐久郡の知久氏攻めにおいて反乱を鎮め更に小諸城も降伏させている。しかし、同盟していた今川氏が衰退すると武田氏は同盟を破棄、駿河攻めを開始する。その駿河攻めに反対し父の信玄と対立し甲府東光寺に幽閉され死去した。 】
ゲーム機で内容を見たのだが決して無能ではなかったのだが、真っ直ぐと言いますか正義感が強くて史実では亡くなったのだ。でもね…。本当に出陣の準備で忙しいのに話しかけてこないでよ!しかも兄上の後ろに取り巻きであろう譜代家臣たちの子供らがいるし、しかも兄上にバレないように申し訳なく頭を下げている。兄上は別として後ろにいる少年達は苦労してるのだな。弟としてなんかすまん。一応謝っとく。
「兄上、いいですか?兄上はゆくゆく、この武田家を父上から継ぐのです」
「そうだな、当然の事よ!」
「そのままでは、父上が兄上ではなく私に家督を譲られるかもしれませんよ」
「そんなはずはない。何故なら三郎より俺の方が優秀で秀でているからな。なんの心配もいらない」
駄目だ…。全くわかってないなコイツ…。この時から死亡フラグが立っているような発言ばっかりだし、なにその自信満々な態度は。喋っているだけでも嫌なのに態度まで…。
「次期当主である俺だから怖くて勝負もできないんだな?ww」
「いえ、兄上が負けて周りの者に八つ当たりをするのでその者達の為にもやりたくないです」
今までに何度も何度も勝負を仕掛けてきては負け続けその度に兄上の後ろにいる取り巻きたちに八つ当たりをするのだ。
兄上の後ろにいる取り巻きたちの表情は信之に救いを求める表情になっている。
「お…俺が、八つ当たりだと?お前たちに八つ当たりしてないよな!」
太郎が取り巻きたちの顔を見るが皆目線を逸らす。
「ほら、誰もそんな事はしていないと言っているではないか!」
いやいや誰もそんな事は言ってないし、みんな気まずそうに目線をを逸らしているじゃん!だからどこからそんな自信があるんだよ!
信之はツッコミを心の中で入れる。
「三郎、嘘をつくな!これも負けるのが嫌だから言い訳の1つなんだろう!」
こうなると、勝負しないと罵声が歯止めが効かなくなるので…。
「はぁ…。分かりましたよ兄上。では次の戦でどちらが戦功をあげるか勝負でいいですよね?」
「やっと…勝負する気になったか、絶対に負けないからな!行くぞ皆の者」
そういうと太郎は取り巻きたちを連れて来た道を引き返して行く。取り巻きたちはこちらに一礼をして太郎を追いかけるのであった。
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