第38話・今川信氏・氏豊兄弟
大変遅くなりすいません。第3章の駿河・遠江攻略です。
天文19年(1550)3月3日
■甲斐国 山梨郡 古府中 躑躅ヶ崎館 信之私室
そう言えばこの年、先月に九州の名門の大友氏家中で起きた二階崩れの変が起きたと千代女の配下から聞かされた。確かにそう言えばそうだな。余り詳しくないのでゲーム機を取り出して調べてみる。
・二階崩れの変
【1550年2月に豊後の戦国大名 大友氏で起きた内紛、お家騒動。名前の由来は当主である大友義鑑、塩市丸の父子を行った襲撃場所が大友館の二階だったから。事の発端は義鑑が正室の子である義鎮、後の大友宗麟を嫡男としていたが、三男である塩市丸を後継者にしようとして嫡男である義鎮を廃嫡しようとしたのが事の発端である。そのため大友氏家中では義鎮派と塩市丸派に分かれて対立し勢力争いになっていた。義鑑と塩市丸の母が寵臣である入田親誠と共謀して義鎮派の主要人物で小左井鎮直、斎藤長実など次々と粛正した。危機を感じた義鎮派である津久見美作、田口鑑親ら一部の大友家重臣が就寝していた義鑑と塩市丸、その母を襲撃した。これにより塩市丸と母、娘2人が死亡し当主の義鑑はこの傷が元で数日後には亡くなった。首謀者である津久見、田口の両人はその場で壮絶な最期を遂げた。これにより義鎮が当主となり後の大友宗麟が誕生した】
説明を見たが絶対大友宗麟が裏から手を引いている気がするのだが、気のせいだろうか?
そんなことを思いながら信之は西の空を見た。
それにしても平手殿、毛利殿、香宗我部殿にあってみたい。しばらくしたら上洛を考えるか。内政の方も成果が出始めていた。まず武田領内でまだ見つかっていない金山銀山を次々と見つけ、この資金を元に街道を広くしたり城の強化、更に農業兵に頼らない兵農分離を開始し領内の関所を廃止した。とは言っても自分の領地である佐久領と与力大名である上野衆だけだが。
「信之殿お久しぶりございます」
「武田殿、茶菓子を持ってまいりましたぞ」
俺の目の前には2人の男性を筆頭に数人の男性と数人の女性と子供が頭を下げながら部屋に入ってくる。初めに入ってきたのは今川家先先代の9代目当主、今川氏親の次男、今川上総介信氏。そして六男の末っ子、今川左馬助氏豊だ。
「上総介殿、左馬助殿よくおいでになった」
「いえいえ、此度は大事な用があって我々を呼びつけたのだろう?」
信氏は軽く手を振り気にしてないと答える。
「はい、お2人は今の今川家をどう見ますか?」
「今の今川家か…。良くも無く悪くも無くと言ったところだな。しかし、我が弟である義元は余り解せぬな。あれは家臣を信用していなく、手駒のように思っておる」
「うむ、信氏兄上と同意見だな。気に入らなければ家臣など切り捨てるのが義元兄上ですから、ただ雪斎だけは例外ですが」
「雪斎と言うと太原雪斎殿のことか?」
「そう、義元の教育係であり右腕でもある。義元は雪斎殿以外は信用はしていないのだ。今川家はこの2人で動かしているようなもの、どちらかが欠ければ今川家は危ういかもしれぬ」
太原雪斎か…
・太原雪斎ーー1496〜1555年
【今川義元の教育係、軍師。内政・外交・軍事に敏腕を発揮した。甲斐の武田家との関係を改善に努め、尾張の織田家を散々に破った。また甲相駿三国同盟締結に尽力した。外交と軍事の活躍が目立つが高僧を招いて駿府に開寺させたりなど僧侶としても活躍している。今川家の分国法の今川仮名目録33条に21ヶ条を追加し制定、臨済宗を中心に領内にある寺社・宗教を統制、商人を保護する商業政策なども行なっており、今川氏の最盛期に大きく貢献した】
ある意味この人もチートだよな。
「しかし信之殿なぜ、今川家の事を?」
「恐らくだが、近くに武田・今川に加え北条を同盟に加えた三国同盟を結ぶ兆しがある」
「北条を⁉︎し…しかし、今川は昔は北条と同盟を結んでいたが花倉の乱で手切れとなったはずだが、それを…」
「無論難しいのはわかっています」
・甲相駿三国同盟
【1554年に結ばれた同盟。甲相駿はそれぞれ甲斐・相模・駿河を指しており締結時に武田信玄・北条氏康・今川義元の3者が会合したという伝説(後述)から善徳寺の会盟とも呼ばれている。今川義元の家臣、太原雪斎の働きかけによって実現した。主君である今川義元に上洛には隣国の武田氏・北条氏との同盟が不可欠と説得して武田信玄と北条氏康をも説得したとされる。会談の場所は権力から中立である寺院が良いと雪斎自身とも縁が深い善得寺を斡旋した。しかし、この時代。当主である戦国大名同士が直に対面する機会は全体から見ると非常に珍しい。記録に残っている「会盟」は北条の軍伝にしかなく、この時期の武田は上杉との争いであり信玄がそのような状況に出れるかが疑問に残る。史実かどうかは不明】
まあ実際には、武田氏・北条氏・今川氏のそれぞれの重臣が協議したともいわれてるからな。都市伝説的なものだろう。
「そんな大勢力は今までに無いですな」
「そうです左馬助殿、武田が抑えている甲斐・信濃・上野。今川が抑えている駿河・遠江半国。北条が抑えている相模・伊豆・武蔵半国・下総の一部・上総の一部。日の本で一番の大勢力となるでしょう。武田は越後・美濃・飛騨方面へ。今川は三河方面へ。北条は北関東方面へ。後方を気にせず攻めることができます」
納得したような表情をする信氏と氏豊。
「成る程……。しかし信之殿、これは今川が有利なのでは?この同盟により今川は全力で上洛を開始出来ることになるのでは?」
「確かに、上総介殿の言う通りかもしれません」
「同盟は構わないが我らを呼んだ意味をそろそろ教えていただきたい」
「私は同盟を結ぶ際、それぞれの当主が向かい合いそれぞれ腹を割って話しをしてもらいたいと思う。その会談に上総介殿と左馬助殿もご一緒にどうかと」
「まことか⁉︎兄上を毒殺した義元なぞに合わなくてはいけないのか!」
「そうです!信氏兄上の言う通り氏輝兄上を殺した者に会いたくは無い」
信氏と氏豊は着物の裾を固く握り締める。目元からは涙が溢れていた。2人は優しく頼りになる兄・氏輝を思い出したのか自然と目元から涙が溢れ出てきた。
「お二人のお怒りはわかりますが、これはチャンスでは?」
「ちゃん…すとは?」
「あ…あぁ、えっと…契機ですね」
「契機…」
「はい、お二人は今や今川家の血筋ではありますが既に武田家の一員。何を恐れると言うのですか?」
「……」
「それに堂々と振る舞った方が義元も悔しがる事でしょう」
「しかし…義元が我々を殺しに刺客を差し向けるかもしれぬ…」
「そこはご心配はいりません。千代女、段蔵」
信之は2人の名前を呼びかける。すると信之の後ろに2人が姿を現わす。
「千代女、段蔵。上総介殿と左馬助殿を刺客から守れるか?」
「ご冗談を信之様。今川の忍びに負けるなど半人前以下です」
「千代女の意見に同感だ。伊賀・甲賀。長尾の軒猿、最上の羽黒など尼子の鉢屋衆。毛利の世鬼一族。これらは強敵だがな」
「2人もこの通り心配ないようです。上総介殿と左馬助殿は必ずや守りましょう」
「わかりました。これも今まで助けていただいた武田家の皆様に恩返しとは程遠いのですがよろしお願いします」
「では今川殿と後ろに控えている家臣の皆様のお名前をこの紙へ書いてくだされ」
信之は近くにある机の上にある神へと手のひらを向ける。信之に言われ信氏と氏豊の後ろに控えて座っていた家臣達が紙が置いてある机へと向かう。
甲斐今川家
・今川一族
甲斐今川家当主・今川信氏(彦五郎)
那古野今川家当主・今川氏豊
遠江今川家当主・堀越貞基
堀越氏延
瀬名政興
瀬名氏教
瀬名氏興
瀬名氏縁
瀬名氏俊
瀬名氏次
瀬名虎王(後の信輝)
関口親永
佐江姫(井伊直平の娘、親永の室。
義元の側室後→義元養妹)
鵜殿長持
鵜殿長成
鵜殿長祐
鵜殿長照
鵜殿長忠
椿姫(お田鶴の方)
西姫(西郡局。史実ではの徳川家康の側室。督姫
の生母)
・今川家重臣
葛山氏広(北条早雲の三男)
葛山氏元
葛山貞氏
葛山長嘉
葛山元清
久野元宗
久野宗経
久野宗能
江尻親良
朝比奈泰能
朝比奈泰長
朝比奈元智
朝比奈泰朝
朝比奈元長
朝比奈信置
三浦義就
三浦正勝
三浦氏員
由比光教
由比正信
由比正純
蒲原氏徳
岡部信綱
岡部正綱
岡部元信
岡部親綱
岡部貞綱
岡部長綱
岡部貞次
伊丹康直
小原鎮実
三浦義鎮
松平清善
松平清宗
……。
…………。
えっ?今川家の重臣の名前が有名な人もいる。というか今川一族もかなりいる。それに三河松平?三浦・朝比奈は重臣中の重臣だ。
そういえば父上が言ってたな。俺が生まれる前に今川で当主の今川氏輝と彦五郎こと信氏くんは食事に毒を盛られた。勿論、毒味はしてあり安全だったのだがその後に入れられたらしい。氏輝はそれを口にしたとたん倒れ悶え苦しみながら亡くなった。信氏くんは口にする前に兄が倒れたのを見ると、自分のにも入っている可能性があると思い数名の家臣を連れて穴山氏の領地へ逃げ込んだらしい。それを知った氏輝・彦五郎の重臣達も穴山領へ集まり武田がそれを密かに保護したのだ。後に弟の義元が仕組んだことを知ったのだ。
「皆さまありがとうございます。皆さまには先代の氏輝公、上総介殿の命を狙い氏輝公がその毒牙にかけた今川義元を成敗したいとお思いかと思われますが今は堪えてください。それと皆様には出来る限り今川方の将を調略して頂きたい」
「分かり申した。各々の親戚など縁がある者であちらについている者に調略せよ」
信氏が旧今川家臣へと呼びかける。
「「おう!」」
気持ちのこもった返事を家臣達は信之と信氏に返したのであった。
誤字脱字等ありましたらお知らせください。
今川彦五郎の元服した名前を今川信氏にしました。信は武田の通字を氏は北条との関係…してるのですが今後の北条家との関わりがありますのでご期待ください。
・編集
駿河攻めの予定でしたが三国同盟に変更しました。




