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第30話・炬燵評定

連続投稿です!

天文16年(1547)12月31日


■上野国 群馬郡 厩橋城 信之私室


上野武田家、要するに信之の領地と与力の領地を合わせたのがこれに当たる。甲斐武田家の別家ではないがほぼ独立していると言ってもいいだろう。その本拠地である厩橋城の信之の私室では異様な光景が広がっていた。部屋には炬燵が4つあった。それに部屋の主人であり主君の信之と主な諸将19人が炬燵に入っていた。



「今年は我ら武田家が順調に信濃へと進行でき、皆の働きでこの上野も領有する事となったわけだが皆の方から何か言いたい事はあるか?」



信之は諸将を見渡す。


「ならば私が」


発言したのは国峰城の城主である小幡憲重。


「何故、今年最後の評定をすると言われてここにきたのですが、炬燵?なるものに入りながらしなくてはいけないのでしょうか?」


憲重の言葉に源五郎以外、うんうんと頷く。


「上野国も雪国、現に雪が降っている。そんな中、大広間でやるのは死ぬのに等しいし俺ははっきりと言って嫌だからな。暖かいは正義!」


「殿は正直者で正義感が人一倍大きいですからな」


段蔵が笑いながら答える。


「まぁ、そこが良いのですが」


源四郎が続いて答える。



「この間、職人に頼んで火鉢に変わる暖房器具を作らせた。それが今、皆に座ってもらっている炬燵だ。私の軍にいる限り冬の間の評定は炬燵で行う、もちろん戦の陣中であってもだ。今、職人に大きいものを作らせている」




「確かにこの炬燵があれば冷え切った身体を暖めるのは良いですな」



箕輪城の城主である業正が普段は凛々しいおじ様の顔を緩ませている。



「それでな、これを褒美として此処にいる者全員にやろうと思ってな」



「「「なんと‼︎」」」


諸将達の口から驚きの声が出る。



「しかし条件があるのだ」



「条件ですか?」



千代女が首を傾げて問いかける。その仕草は抱きつきたいくらい可愛いがグッと堪える。


我慢…我慢だ!



「あ…あぁ、まずはこの炬燵を褒美として渡す者は絶対に裏切らないであろう者たちに渡す。また忠誠心、働きを認めていることにもなる」



少し千代女のせいで動揺してしまったがなんとか言えた。


「なるほど、確かに他家では譜代衆はともかく、他国衆、外様衆は中々認めて貰うのは難しいですからな」



業正が腕を組み悩むように言う。


「俺はそこがまずはおかしいと思うのだ。譜代衆?外様衆?そんなのは関係ない。俺は武田家の為に自分なりに一生懸命に尽くしている者に対しては評価する。現に此処にいる上野衆は信じるに値する。どうだ?俺、いや武田家の為に死ねるか?」



信之の熱弁に上野衆は自然と目元から涙が溢れていた。信房たち譜代衆も頷く。



「この老骨で良ければ武田家の為に死ねますぞ…。此処にいる上野衆は武田家、いや信之様を盛り立てていく所存末長くよろしくお願いしますぞ」


上野衆の筆頭である業正は答え終わると炬燵から出ると上野衆は皆、後に続くように炬燵から出ると頭を下げるのだった。


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