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第21話・上州の黄班 離反

天文16年(1547)7月10日


■上野国 緑野群 平井城 牢獄


関東管領 上杉氏の居城の牢獄の中に1人の老将が座っていた。


その名は長野業正。


上野国箕輪城城主であり在原業平を祖先とする名門だ。山内上杉家の重臣であったのだが、10日ほど前に主君、上杉憲政に諌言をいい投獄されてしまったのだ。



「………」


ただ一言も喋らず静かに目を閉じて瞑想をしている。


(憲政様はどうしておられるのだろうか?今頃は信濃に入り武田と戦中だろうか……)


憲政に投獄された身なのだがそれでも憲政の心配をする。


(今、武田と戦えば必ずと言っても過言では無いのだが破れる…。河越の戦いから連戦で野戦が得意な武田相手に勝ち目などは無いはずだ。何故わからぬのだ!このままでは上杉家が滅びる……。しかし、今の儂では何も出来ぬし。それに既に上杉の家臣では無くただの謀反人だ……)



業正はなんとも言えないこの気持ちを必死に堪えていた。





「上杉家重臣、長野業正様で間違えないでしょうか?」


ふと、後ろから儂の名前を尋ねる声が聞こえた…。声からして少女の声だろうか?

儂の領地からわざわざ来たのか?


業正は声がした方へ身体の向きを変えながら、目を開ける。


「いかにも、関東管領 山内上杉家重臣 長野業正。と言っても儂はついこないだ、上杉家臣では無く謀反人じゃがの。お主は?」


「武田家重臣、望月千代女でございます」


そこにいたのは領民では無く忍び装束を来た少女であり武田家の重臣と名乗ったのだ。という事は敵国の…


「武田?はて…望月は滅ぼされたはず…、すまんがそう認識しておるが?」



「はい、その通りです。信濃望月本家は滅びました」



「という事は六角家の傘下であり甲賀筆頭の望月の出か?」



「はい、その通りです。流石、殿が言った通り謀反人にさせるのには勿体無いです」



「殿?それは晴信殿が儂の事を言ったのか?」



「いえ、私の主君の武田信之様です」



「武田信之…聞いたことが無い…。幾つなの

だ?」



「4つです」




「4つ‼︎なんと…。儂をその歳で評価してくれるのか……」



「失礼ながらお時間がありませぬ。気づかれぬうちにここから脱出します」



「しかし…儂は上杉家の…」



「それは昔でしょう?今はただの謀反人です。それと関東管領なのにあんな暗愚な主君でいいのですか?あれでは民が泣きまする」



「ではそうならないと?」



「はい、必ずや民を守り豊かにします」



業正は再び目を閉じた。数分後、業正は答えた。



「わかり申した、儂で良ければお力になりましょうぞ。して信之殿…いや信之様ですな、信之様のところへ行けば良いのですかな?」



「いえ、業正殿にはこの上野国を攻略して頂きたいのです」


「ほぅ、あの分からず屋に帰るところを与えないのですな。わかり申した」




業正はようやく立ち上がり、千代女と牢獄を脱獄する。



「私は上野諸将に調略を仕掛けます。業正殿は箕輪城に戻り兵を率いて制圧して行ってください」



「うむ、任された」



そう言うと業正は自分の居城 箕輪城に千代女はその場から消えて手の者達と共に各城へ調略を仕掛けに行ったのだった。



それから5日後、上野国は陥落したのだ。

その報は瞬く間に近隣諸国に広まったのだった。

誤字脱字等ありましたらお願いいたします。


遂に業正がぁぁぁ!

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