第15話・三郎の企み
天文16年(1547)6月21日
■甲斐国 躑躅ヶ崎館 三郎私室
「段蔵、千代、いるか?」
「は! 何でしょうか」
「はい!三郎様」
中庭から段蔵と千代女の声が聞こえた。
「部屋に入ってくれ」
「失礼いたします。」
「いよいよ、出陣が近づいてきた。そこでお主達にやってもらいたいことがある」
「志賀城に潜入し内から崩す。それと援軍でやってくる上杉軍に潜入これも内から崩すですな?」
段蔵がズバリと言い当てた。
「流石だな段蔵は。そうだ、両方とも内から崩す。段蔵は志賀城内、千代は上杉軍に」
「では、派手に動き回りましょうかな、ハッハハハハ」
「2人とも無理せず、危ないと思ったら退くこと」
「三郎様は心配性でお優しいですね」
千代女はクスッと微笑みながら首を少し傾げる。
「段蔵、この前渡した地形の地図や周辺の地図は役に立っているか?」
三郎は段蔵にゲーム機で写し書いた地図を渡していた。
「はい、良く知る信濃の地形の地図。そこの土地のもののように物分かりですな。縄張り図を書くときも書きやすいです」
「そうか、それならよかった」
「俺は笠原清繁の志賀城を落として援軍を破ることは出来ると思うか?」
「三郎様、心配はありません。私、千代と段蔵殿、それに他の方達もいるのです。志賀城の絵図面は出来上がっており既に段蔵殿の手の者がいますし、そして上杉にも既に私の手の者も潜り込ませいるので大丈夫です」
「そうか。では志賀城は包囲した次の夜、夜陰に乗じて城攻めをする。危険だが段蔵は城の中で手の者達と城門、指揮する者からの殺害」
「分かりました。最善を尽くします」
「城主の暗殺、それと高田憲頼父子が援軍として城に居るはずなので暗殺、出来るか?」
「出来ますな。ただ、暗殺をするなら早い方が良いかと、合戦中は気を引き締めるので暗殺は限りなく低くなりましょう。暗殺はその前に」
「分かった。段蔵頼めるか?」
「はい、それで首と身体はどうしましょう?」
「首は夜陰に攻めると同時に城兵が混乱に乗じて上手く清繁を打ち取ったと叫んでくれ、そうすれば敵も降伏するだろう」
「分かりました、ではその様に…」
「それとだが出来る事なら、他の城も一気に取ってしまいたい。小諸、砥石、まで取れるか?」
「恐らく大丈夫でしょう。そちらには手の者がいないので潜らせます」
「頼む、千代の方も援軍と合戦になったら側から気づかれない様に暗殺できるか?」
「危険を伴いますが大丈夫です」
「では援軍の大将以外を暗殺してくれ」
「大将以外をですか?」
不思議そうに千代女は首を傾げる。
「そうだ。大将には関東管領様に敗戦の報告をしてもらわないとな」
ニヤリと三郎笑ったのだった。
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