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俺の匂いは、呪いを吹き飛ばすくらいやばいんですか!?

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本当にありがとうございます!

 俺たち助っ人部は今、希の先導で呪いの魔法陣へ向けて急いでいる。

 

 希に案内をお願いしたあと、更衣室にたっぷり消臭剤を噴射し、美鈴のスマホを取り上げて出てきた。

 結局、俊介は股間の傷が癒えきらなかったようだ。

 なのでブーメランのような締め付けは自殺行為だと、もともと履いていたトランクスに足を通した。

 その結果、俊介のぶんのブーメランは、俺が履いている。

 普通に考えたら、べつにわざわざ履く必要はない。

 だが、誰も履かないまま返したら会長が怒り狂うかもしれないという沙雪の意見を、俺以外の全員が支持しやがった。

 民主主義という穴だらけのシステムに敗れた俺は、さっきまでの黒のブーメランから赤のブーメランに履き替えたのだった。

 まあどっちにしても希が消えないために、フルチンかブーメランかを選ばなきゃいけない身なので、黒だろうが赤だろうがもうどうでもいいけどね。


 つまり今の俺の姿はこうなっている。

 JKのパンツで作られたマスク。

 上半身裸。

 下半身には赤いブーメラン。

 そして、なぜかリュックを背負っている。

 ……ここまでの変質者、全国的に探してもなかなか見つからないだろうよ。


 校舎に入ったあたりで、まだカメラを取られたことに不満そうな幼馴染が口を開く。


「でさ。その呪いの魔法陣まで行ったところで、純は消す方法を知ってるの?」

「たしかになー。霊能力あったこいつでもどうしようもできないのに、純一がどうにかできるとは思えないぜ」

「……俺にも、確信はない。でも、かけてみたいこともある。沙雪、覚えてるかな? 俺が道端で占ってもらった時のこと」

「それって、あのいかにも怪しげなおばあちゃんに占ってもらった時のこと?」

「そう。それ」


 俺が自分の体臭に対する周りの反応に、とても悩んでいたころ。

 自分のせいで大切な幼馴染に迷惑をかけていると感じて、かなり苦しんでいたころ。

 そんな中学一年の時に、道端で声をかけられたのだ。


「少年。悩みがあるんじゃないかい? ただで、占ってやるよ」


 そこに座っていたのは、魔女がかぶるような真っ黒なとんがり帽子の老婆だった。

 いかにもな姿に俺は訝し気な視線を向けたが、一緒にいた沙雪の「試しにしてもらったら?」という一言で、しぶしぶ椅子に座ったのだった。


「なにそれ。あたし初耳だよ!」


「いや、たまたま沙雪と二人の時だったし。その婆さん、鼻の効かなくなった私でも感じるくらい、俺の匂いは酷いとか言いやがったんだ。占いも信じてなかったし、わざわざ話すようなことでもなかった」


「っで、その占いがどうしたんだよ?」

「婆さんはこう言ったんだ。俺の匂いは酷い。でもその代わり、呪いの類いから守ってくれるだろうって」


「……そういえば、そんなこと言ってたね」

「た、たしかに。うっすらですけど、モッコリさんの体は光って見えます。変態的なオーラかと思ってたんですけど、そういうことだったんですね」


「マジかよ!? 純一かっけーじゃん!」

「希のお墨付きも、もらえたか。まあ、その光が呪いへの耐性とは限らないけど」


 希の霊能力によって、婆さんの占いが現実味を帯びてきた。

 ……もし当たってたとしたら、あの婆さんいったい何者!?


 俺たちは四階建ての校舎の階段を、屋上目指して一気に駆け上がる。

 ちなみに今いる校舎は、いつも授業を受けている教室がある生徒棟だ。

 職員室などがある管理棟にも屋上はあるが、魔法陣があるのはそちらではないらしい。


「こっちです!」


 階段を上り切り、希が屋上への扉をすり抜ける――


「――って、鍵かかってるじゃん! 希! いったん、戻ってこーい!」


 海浜高校の屋上は、開放されていない。

 立ち入り禁止の区域なのだ。

 当然、鍵はかかっている。

 ……そしてこんな事態を想定しているはずもないので、会長から渡された合鍵束の中にも屋上のはない。


「なにしてるんですか!? 変態なら、このくらいすり抜けてください」

「変態に、そんな特技はない! そもそも、俺は変態ではない!!」

「純。どうするの? 職員室に忍び込む!?」

「……いやこの時間なら、まだ職員室にも先生がいるはずだ」

「じゃあ、どうすんだよー!?」

「みんな。わたしに任せて」


 ここを突破する案が浮かばず手詰まりになりかけた俺たちに、沙雪が自信ありげな笑みを浮かべる。


「……沙雪? なにか、方法があるのか?」

「純一君も知らなかったっけ? わたしね、このくらいの鍵なら開けられるよ。だからみんな、そこどいて」


 軽く沙雪様の空気を醸し出して微笑む彼女がポケットから取り出したのは、何種類かの細長い金属製の棒。

 ドラマや漫画なんかでよく見る、ピッキングツールってやつだ。


「さ、沙雪? あんた、なんでそんなもの……」


「今度、美鈴にも教えてあげるね。お母さんが言ってたの。男の浮気を調べるための、必須技能だって。鍵のかかった、机の引き出しの中を調べたり。浮気現場を取り押さえるのも、鍵がかかった部屋にいきなり突入するのが効果的だって」


「……沙雪のおばちゃん、やべー。あんなにきれいなのに、こえーよ」


 みんなで扉の前のスペースをあけ、息を飲んで扉に立ち向かる沙雪を見つめる。

 何本かのツールを鍵穴に差し入れるその姿は、熟練のプロにしか見えなかった。

 もしかして沙雪、初めてじゃない?


 ……あれ? そういえば一人で留守番してる時、いきなり沙雪が入ってきたことが何回かあったような。

 親が鍵かけ忘れたのかと思ってたけど、考えてみるとその時はチャイムも鳴らないような。

 ………………これ以上の詮索はやめておこう。

 藪蛇ってやつを、体験することになりかねん。


 カチャッ、カチャッと、金属がぶつかり合う音が続く。

 一分くらい経っただろうか?

 さっきまでとは違う『カチャリ』という音が響き、ノブを回しながら沙雪がこちらに笑顔を見せる。


「みんな。お待たせしました」


 ギイィという少し不快な音を立てて、閉ざされていた扉が開いた。

 俺たちは希に続いて屋上へ飛び出す。


「ここです! 呪いの魔法陣は、ここにあります!」


 幽霊が指し示した場所は、さっきまで俺たちがいた場所の上。

 屋上に設置されている、貯水槽のあるスペースだった。

 俺は素早く、でも慌てずにその場所への梯子を上る。

 だが、先に到着していた希の視線の先に、怪しげなものはなにもない。


「……ここであってるのか? 俺には、普通のコンクリートの地面があるようにしか見えないけど」

「モッコリさんたちには見えなくても、希にははっきりと見えます。おどろおどろしい鈍い光によって描かれた、気味悪い魔法陣が」


 俺は後ろを振り返り、あとに続いてきた幼馴染たちの顔を見るが、全員首を横に振る。

 やはり見えないのは、俺だけではないらしい。

 でも、希を信じるしかない。


「希。魔法陣の中心を教えてくれ」

「わかりました。ここです!」


 希が少しだけ横に飛んで、止まる。

 俺はそこを目指して、歩を進めた。


「わあ。もっこりさん、すごいです! 魔法陣の光が弱まってます」

「そ、そうなの? 全然自覚ないけど」

「すっげーじゃん! ばばあの占い正しかったってことかよ」

「俊。あんた、よくそんなにはしゃげるね。まったく、状況見えてないんでしょ?」

「おう! まったくわからん!」

「わたしも、全然わからないよ。CGを使った映画の撮影風景とかも、こんな感じなのかな?」


 俺たち全員実感ない中、希だけは瞳を輝かせている。

 ……たのむから、裸の王様的なオチだけはやめてくれよ。

 今俺は、ちょうど水着一丁だしな。なーんてね。

 

 希の言葉を信じてその場で立ち続けるが、幽霊の顔はみるみる曇っていく。


「希どうした?」

「だめです。光は弱くなったけど、それ以上消えていきません。結界もそのままです」

「このままじゃ、消すまでは行かないってことか……」


 ……ということは、やっぱりこれしかないか。

 俺はリュックサックを俊介に放り投げ、両手を後頭部に回す。

 そして一心不乱に、スクワットを始めた。

 俺は新陳代謝だけはいいんだ。

 汗がどんどん噴き出してくる。


「き、消えてきてます! 汗が染みたところから、どんどん消えてます!」

「よしっ! 俊介! 俺の汗を、タオルで、拭いて、希に、聞きながら、魔法陣を、拭いてって、くれ!」

「よっしゃー! ついに主役の出番ってわけだな」

「いや、どう考えても今日の主役は純でしょ。もしくは幽霊ちゃん」

「わたしも手伝うよ!」


 俊介たちは俺のリュックからタオルを取り出し、俺から流れ出る汗を染み込ませては、魔法陣の外周から内に向かって拭いて消していく。

 俺は魔法陣の中心でスクワットを続け、飛び散る汗で中心部から消し去っていく。


 今の俺たちを、なにも知らない人が見たらどう感じるだろうか?


 JKのパンツマスクをかぶったブーメラン男が、屋上のしかも貯水タンク前という一番高い場所でスクワットをしている。

 おっさんのパンツマスクをかぶった変態や美少女二人が、その男から流れる汗を拭いては、地面を磨く。

 

 きっとなんかの宗教か、もしくは召喚の儀式とか思っちゃうよね。

 これがホラーやサスペンスなら、完全に目撃した人は第一の犠牲者だもん。

 全校生徒を救うために、必死で頑張ってるなんて信じてもらえないだろうなあ。


 スクワットを始めてから、三十分くらいたっただろうか?

 途中五分だけ休憩して、沙雪にお茶を買いに行ってもらった。

 冷水機まで歩いていこうとしたけど、休んでいてと止められてしまった。

 お言葉に甘えてお茶で水分補給。

 で、再開して今にいたる。 


「……希。まだか?」

「もう少しです! この中心部分が一番頑固ですけど、もう一息です!」

「頑固な油汚れは、綺麗にしたとき達成感あるけど。今回はただの地面拭いてるだけだから、そういうのは感じなさそう」

「美鈴が掃除とか嘘だろー? なに女の子ぶってんだよ」

「あたしは女の子だし、掃除くらいするわ!」

「や、やめてー! ローキックで股間狙わないで! せっかく、痛み取れてきたのに」

「二人とも遊んでないで。純一君を、早く楽にさせてあげようよ」

「……沙雪が言うと、なんか介錯するみたいだな」

「……俊介君。口を縫って上げようか?」

「ご、ご、ご、ごめんなさい」

「まだ、かー?」

「もうちょっとです、もうちょ――っ!?」

「希!? どうした!?」


 急に希が天を見上げる。

 そこには特になんの変哲もない、普通の夜空が広がっている。


「や、や、や、やりましたー! 結界が消えてます!!」

「……そっか。よかったー」


 その言葉を受けて、俺はへたへたと座り込む。

 さすがに少し疲れた。


「純一君、大丈夫!?」

「大丈夫、大丈夫! ちょっと休憩」


 心配そうに駆け寄ってきた幼馴染に笑顔で返す。

 沙雪は俺の顔を見て、ほっと胸をなでおろした。


「よっしゃー! 助っ人部のエース、中島俊介。華々しくデビューを飾ったぜ!」

「いつから俊がエースになったのかはわからないけど、まあ今日は頑張ったんじゃない?」

「おお? デレ期か? でも残念ながら。美鈴は俺のタイプでは――」

「うっさい! 調子乗んな!!」

「だから、股間狙うのはやめて!?」


 みんな楽し気に笑っている。

 実感はないけど、いちおう学校の危機を救ったという自負はある。

 少しくらい浮かれてもいいよね? 高校生だもの。


「そういや、沙雪たちはなんか変化感じる?」

「わたしは何も……」

「あたしも、なんも感じないよ」

「俺も―」

「そっか。俺はなんとなく感じるんだ。澱んでた空気が、流れだしたっていうか。気持ちのいい空気が、流れ込んでるっていうか」

「へー。やっぱ、純一なんか持ってるのかもな」

「まあ希に結界消えたって言われて、そんな気がしちゃってるだけかもしれないけど……って、希は!?」


 視線を宙に浮かぶ希に向ける。

 そこにいたのは優しい光に全身を包まれて、うっすらと透明になり始めている女の子だった。


「希!?」

「皆さん。お別れみたいです。短い間でしたけど、ありがとうございました」


「なに言ってんだよ! 希のおかげで俺の幼馴染も、学校のみんなも救われた。おまえのおかげだ。誇っていいんだよ」


「……ほんとうに、ありがとうございます。モッコリさんは、優しいんですね。だから、みんなに慕われてる。……希、最後の最後に楽しい思い出がたくさんできました」


「……希」

「希、生まれ変わったらモッコリさん――んーん。純一さんみたいな男の子と、恋がしたいな」


 希の瞳から、一滴の涙が零れ落ちる。

 ひときわ強い光が、彼女を包んだ。


「希!!」

「希ちゃん!!」

「幽霊ちゃん!!」

「忘れるなよ! 俺はちっちゃくないからな!!」

「希、もう一回だけ、純一さんの生モッコリ見たかったな――」

「希いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」


 本当に最後の言葉が、それでよかったのかあああああっ!?


 こうして俺たちは、一人の女の子を夜の学校の屋上で見送った。

 俺たち以外誰も知らない、海浜高校を救ったヒロイン。

 でもずっと、希は俺たちの胸の中で生き続けるよ。


 その後、屋上をあとにした俺たちは、沙雪にもう一回ピッキングで鍵を閉めてもらい視聴覚室へ――


「きゃああああああああああっ!? へ、へ、変態――っ!?」


 そこで事件が起こった。

 廊下を歩いていた女性教師と鉢合わせしたのだ。

 彼女は音楽の教師で、海浜高校のマドンナ的存在。

 男子生徒から大人気なのに、女子生徒からのやっかみもないという希有けうな存在だった。

 

 JKパンツマスクに赤いブーメランの変質者と遭遇し、意識を失った先生。

 そんな彼女を放置するわけにもいかず、職員室の近くまでおぶって、風邪をひかないように未使用のワイシャツをかけてあげた。


 こうして海浜高校の七不思議から『男子更衣室を覗く幽霊』が消え、『夜の学校を徘徊する赤ブーメランの変態レスラー』が加わったのだった。





「――うおおいっ!?」

「お、お兄ちゃん!? どうかしたの!?」

「な、なんでもない! ちょっと、こけそうになっただけ!」


 妹にそう言って、慌てて風呂場に駆け込む。

 目を閉じて、三回深呼吸。

 落ち着いたところで、目を開けるがやはりその光景は変わらない。

 俺は夢を見てるわけじゃない。


「ど、どうしておまえがここにいる!?」


 指を目の前の存在にさした。


「希!?」

「てへ。戻ってきちゃいました」

「てへ、じゃない! おまえ、成仏したはずじゃ」


 そう。俺の目の前にいるのは、二時間ほど前に成仏したはずの少女。

 幽霊の希がぺろっと舌を出して、そこに浮かんでいるのだ。


 音楽の先生を運んだあと視聴覚室に戻った俺たちは、素早く着替えてそそくさと帰宅。

 夜飯を食った俺は少しまったりしてから、疲れを癒そうと風呂に入ることにした。

 そして脱衣所でパンツを脱いだ時に、それは起こったのだ。

 興奮気味に顔を上気させた希が、いきなり目の前に出現したのだった。


 ――で、さっきの俺の驚きの叫びに繋がったのである。


「希も成仏したと思ったんですけど、最後に純一さんのそのご立派を見たいって願ったじゃないですか」

「って、見るな!?」

「えー、いいじゃないですか。まあとにかくその願いが相当強かったみたいで、気づいたらさっきの脱衣場にいたってわけです」

「……マジかよ」

「はい。で、ですね。どうやら希、なっちゃったみたいです」

「……な、何に?」


 ……すげえ、嫌な予感がする。

 外れてくれ。俺の勘頼むから外れてくれ!

 俺は心の中で手を合わせて、神にこれでもかと願う。


「だから、背後霊です。純一さんの。希、純一さんに取りついちゃったみたいです」

「外れろよおおおおおおおおおおおおお!!」


 神様!? なにしてくれてんの!!

 どこまで、俺に試練を与えれば気が済むの!?

 それとも俺は、山中鹿之助の生まれ変わりかなんかなの!?


「未練が幽霊を作るって説、あながち馬鹿にしたもんじゃないですね」

「……えっと。もしかして、ずっとここにいるの?」


「はい! これから一生、よろしくお願いしますね純一さ――いえ、希はもうあなたなしでは存在できませんから。これからは、ご主人様って呼ばせていただきます!」


「ご、ご主人様?」

「はい。一度、呼んでみたかったんです。希を可愛がってくださいね。ご主人様?」


 こうして俺には、ご主人様と呼んでくる女の子の背後霊が取り付いてしまったのだ。

読んでいただきありがとうございました


少しでも楽しんでいただけてたら嬉しいです


幽霊ヒロインゲットです


次回もよろしくお願いします!

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