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俺の匂いは、超常現象と言われるくらい酷いんですか!?

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本当にありがとうございます

 会長の鋭い視線が、俺の双眸に突き刺さる。

 

 ごくりとつばを飲み込んで、体をこわばらせたまま望月さんに目だけを向ける。

 昨日のことを――山下さんのことを、伝えたかどうかの確認だ。

 望月さんは、静かに首を横に振った。

 どうやら、彼女からの情報ではないらしい。

 望月さんも表情こそ変化はないが、会長からあふれ出すプレッシャーに警戒はしている様子だった。


「――あ。君のことは、望月さんに聞いたわけじゃないからね。わたしも生徒会長だし、それなりの人脈というか、情報網を持ってるんだよ。生徒に危険が迫るような情報があったら、早めに芽を摘まないといけないしね」

「……かなりの情報網のようですね?」

「そんなに睨まないでよ。大切なうちの生徒を守ろうと思ったら、いつの間にか構築できてたってだけなんだからさ」


 つまり貫地谷の情報統制をかいくぐるような人脈を、会長は築いているってことだ。

 この地域限定だろうけど、それでもすごい。ってか、やばい。

 

「今後、下手に近所でエロ本も買えないなあ。みたいな、顔してるね?」

「かってに俺の心を読まないでください!」

「……純一君。エロ本ってなんのこと?」

「な、なんでもない! なんでもないから!!」


 またおちゃらけた空気になって、俺をからかう会長。

 いったいどの顔が、本当の彼女なんだろうか。

 

 ……にしても、この場で一番やばい人は望月さんだと思ってたけど、完全に訂正させてもらう。

 ダントツでやばいのは、会長だ。

 貫地谷家を敵に回さなければ大丈夫そうな望月さんと違って、会長はどうすれば友好的でいられるのかがさっぱりわからない。

 どこに地雷や猛獣のしっぽが潜んでいるのか、見当もつかないからだ。

 俺の体臭が気にくわないから、嘘情報流して潰しまーすみたいなこともやろうと思えば可能だろう。

 そんなことをするような人ではないと、信じたいところだけど。


「ということでさ、ちょっとした荒事に対処するためにも橘君みたいな人がいてくれると助かるんだよ。さっき言ったよね? 生徒会直属の遊撃部隊って。わたしは、本当にそう思ってるわけさ」

「……それって、みんなに危険がおよぶようなこともあるってことですか?」


 それだけは、絶対に受け入れられない。

 そんなの、もはや部活の範疇を超えている。


「……そうだねー。基本的には大丈夫だよ。でも絶対に危険がないかって聞かれたら、なんとも言えないとしか答えられないかな。そういった案件はできる限り排除するけど、思わぬところから危ない目にあったりする可能性もあるからね。まあ、普通の部活だって大怪我する時もあるしさ」

「純には危ないことを、させないってことですね?」


「させない、させない! わたしをなんだと思ってるの。君たちだって、大切なうちの生徒だよ。ほかの生徒のために、君たちが危ないことに巻き込まれたら本末転倒じゃん」

「でもさー、危険なことに発展する可能性はあるって言ってたよね? 純一が怪我したら、会長がいくら可愛くても許せないっすよ」


「そのための、人脈ってわけさ。情報収集と調査を重ねに重ねて、問題なしと判断したものしか頼まない。それに嫌だなと思うようなものだったら、突っぱねてくれてもいいよ。生徒会に100%従う義務はない」

「……俺たちがやばそうって思ったら、拒否できるってことですね」


「そうそう。だからさ、より精度の高い判断基準を得るために、そろそろ話してくれないかな?」

「……なにをですか?」


 顔は笑っている。

 でも額面どおりの笑顔じゃないのは、その場にいる全員が感じ取っている。

 絶対に逃がさないということを、意識下で理解させられる。

 ……というか微動だにせず仕事に集中してる横山先輩と今井先輩も、ただものじゃない気がする。


「まーた、とぼけちゃってぇ。橘君が、どうやって山下さんを助けたかだよ。相手の男たち、そこそこ強そうだったらしいじゃん。君はヒョロくはないけど、そいつらを瞬殺できるほど強そうでもない。なにか、秘密があるんでしょ?」


「……それは、不本意ながら俺の匂いで気絶させて――」

「だーかーら。気絶させる前の段階だよ。どうやって、そこまで持っていけたの?」


 やはり牙の鋭い肉食獣のごとく、嚙みついた獲物を逃がすつもりはないようだ。

 俺はやむをえないという気持ちを隠さずに、盛大にため息に乗せる。


「……俺の生命線なんで、他言無用でお願いしますよ」

「当然。君の生命線ということは、生徒会の生命線にもなりえるからね」


 会計と副会長も、同意の意を頷きで表明する。


「俺の濃い汗が周辺に散布されると、そこに入った人の身体能力を、本人も気づかないうちに根こそぎ奪うんですよ。俺に接近すればするほど、その症状は深くなる。もちろんこれは永久にではなく、一時的にですけど。神経系の毒ガスみたいなものでしょうか」


「……それは、ずいぶんとやばいね。君みたいなのを、本物の生物兵器って言うのかな?」

「……俺も傷つかないわけじゃないんですよ」

「ごめんごめん」


「あとは、ふらふらになったことにも気づかない相手が突撃してきたところを、焦らずに料理すればいいってだけです」

「なるほどねー。恐ろしいけど、納得もしたよ。にしても、体育の時間とかどうしてるのさ? 君のクラスメイト、危険地帯に足踏み入れちゃってるじゃん」


「めっちゃタオルを使います。一回の授業で百枚以上」

「百!? それは、すごいね」


「大変ですよ。持ってくるのも、持ち帰るのも。中学の時は、親に車で運んでもらってました。でも。今年からは貫地谷さんに助けてもらってます」

「……貫地谷さんに?」

「はい。お嬢様の命により、貫地谷家がすべてを管理しております」


 会長がちらりと望月さんを見ると、表情も変えずにそう答えた。



 俺が貫地谷さんからタオルの提供を打診されたのは、昨日――つまり席替えのあった日だ。

 数々の質問の中に、『運動はお好きですか?』というものがあった。

 俺は素直に体を動かすのは嫌いじゃないけど、汗の処理が大変だと伝えた。

 当然汗の効果については隠し、匂いで周りに迷惑かけるからという理由で。

 中学時代の苦労を語ると、西園寺さんは少し思案したあと、満開の笑顔を振りまいた。


「橘様。そのタオルの準備や処理。全部、私にお任せいただけませんか?」

「……えっ? いや、さすがに悪いよ。そこまでしてもらう義理も――」

「なにを、おっしゃいます! 私たち、お隣どうしではありませんか。それに、そんなお宝を――」

「お嬢様!!」

「うおっ!?」


 さっきの席替えに現れて耳打ちしていた人と同じ声がしたと思ったら、いつの間にかお嬢様の姿が何者かの背中に隠される。

 まあ、彼女の御付きの人なんだろうけど。

 先ほどと同様、貫地谷さんはその人の助言に耳をかたむける。

 そして決まり文句なのか、「そう答えれば、いいんですね」という明るい声が聞こえた次の瞬間には、目の前にあった背中はどこかに消え去っていた。


「橘様。困っているクラスメイトの助けになる。これも貫地谷家の教えです」

「……そう答えればいいって、教えてもらったの?」

「ええ。おっしゃるとおりです」


 嬉しそうに微笑むお嬢様。

 素直というか、なんというか。

 本物の箱入り娘って、こういう感じなんだろうか?


「わかったよ。そこまで言ってくれるなら、お世話になろうかな」

「はい! 感謝いたします」


 みたいな感じで今日の体育から、タオルの提供を受けることが決まった。

 それが想像以上に至れり尽くせりだったのだ。

 

 彼女が用意してくれたのは、今治産の中でもさらに最高級の一品。

 肌触りは優しくふかふか。汗も一瞬で吸収してくれる。

 しかも首からかけてとか、荷物に取りに戻ってみたいな使い方をしなくていい。

 汗ふきたいなあと思った刹那、横で望月さんがタオルを差し出してくれている。

 拭き終わったらすぐに回収、そしてどこかに消え去る。

 次のタオルは、また新品といった感じだった。


 とても恐縮すぎる状況だったけど、なぜか貫地谷さんのほうが興奮気味に、「貴重なものをありがとうございます!」とお礼を言ってきた。

 どういう意味かはわからなかったけど、俺に気を使ってくれたのかもしれない。

 彼女がいい子だということは、まだ隣の席になって二日だけどじゅうぶんすぎるほどにわかる。

 そんな彼女だから、俺も友達になりたいと思ったんだ。

 ということで、明日からも優しさに甘えさせてもらおうと思う。

 いつか、どこかでお返しできればいいんだけどね。



「……まあ貫地谷さんの御付きが監視しているような状況だし、ほかの生徒に被害が出るようなことにはならなそうだね」

「俺自身が、かなり気をつけてますって」


 数秒望月さんの顔をじっと見たあと、会長はそう言いながら自分の席に戻っていく。


「じゃあ、明日からさっそく活動してもらうから」

「――っしゃあ。海浜高校の助っ人が、明日から火を噴くぜえ」

「俊。意味わからないよそれ」

「……そういえば、橘君さあ」

「なんですか?」


「鼻の穴すっきりしたらわかったけど。君の匂い、想像以上に酷いね」



 オブラートに包めない系女子の一言で、心に少し傷をった翌日。

 俺たち助っ人部は、部室として用意された視聴覚室に集まっている。

 時間は午後五時過ぎ。もう放課後だ。


 今日の日中は、比較的平和な時間だった。

 朝、ヘリが二台飛んだかと思ったら、俺と沙雪の机が新品になっていた。

 ほぼ新品の机が新品の机に変わっただけなのに、沙雪はなぜかかなり不満げだった。

 それでも、沙雪様降臨までにはならず。

 結局放課後まで、山下さんが興奮したり、貫地谷さんが嬉しそうに笑った時にシャーペンが数本お亡くなりになったけど、大惨事はまぬがれた。

 

 昨日帰宅してから、彼女の希望どおり抱きしめたかいがあったようだ。

 やることがあるってことで三十分で開放してもらえていたけど、それでも効果は抜群だった。

 帰りのホームルームが終わった直後、オムツーズから「今日は、ちびったくらいでもちこたえたよ!」と握手を求められたくらいだ。


 今、視聴覚室には俺たち幼馴染しかいない。

 つい十分前まで貫地谷さんもここにいて、俺たちと談笑していた。

 沙雪も消極的な感じではあるけど、少しだけ会話に参加した。

 でも午後五時の時点で、強制帰宅となった。

 最後まで後ろ髪引かれていた様子だったけど、決してわがままは言わなかったのだ。

 

 なんで俺たちがこんな時間になっても帰っていないかというと、そりゃもちろん生徒会から押しつけられた仕事のためだ。

 そのために、待っているんだ。

 水泳部が練習を終えて、帰宅するのを。

 

 昨日会長から命じられた助っ人部初めての仕事は、『水泳部の覗きの謎を解明せよ』だった。


「これを聞いて、うらやまけしからん! 犯人許すまじと思った、そこの青少年! 甘い、甘すぎる!! なんとなあ。覗き被害を訴えてるのは、男子のほうなんだよおおおおおお!!」

「……俊介。いったい誰に向かって叫んでんだ!?」


 そう。覗かれてると言っているのは、残念ながら女子ではなく、男子なのだ。

 視線をはっきり感じるし、なんだか声が聞こえることもある。

 でも人影とかはまったくない。

 カメラとかも見当たらない。

 幽霊なんじゃないか!?

 会長の話によると、三月ごろからそう訴える男子が何人も出ているとのことだ。


 なぜこれを生徒会で調べないのかと確認したところ、会長は悪びれる様子もなくこう言った。


「だって、めんどくさいし。こういうの全部任せるために、助っ人部作ったんだから。あと、謎の心霊現象には歩く超常現象でしょ。はい、論破!」


 ということで、歩く超常現象たる俺を部長とした助っ人部に丸投げされたのだった。


 部活終了時刻は午後七時。

 完全下校時刻はその十五分後。

 はっきり言って暇だ。


「くっそ、暇すぎる! トランプでも持ってくればよかったなー」

「俊介。それ気づけなかった罰として、家まで取りに帰ってよ」

「理不尽すぎる!?」

「そうだ! 沙雪。今のうちにあれ渡しちゃわない?」

「あっ! そうだね」

「なになになにー? もしかして、お菓子でも作ってきてくれたんか!?」

「仮に作ってても、俊にあげるぶんなんてないでしょ」

「……おまえら、もうちょっと俺に優しくしろよ」


 沙雪が自分のスクールバッグの奥のほうに、手を突っ込む。

 何かを掴んで引っ張り出すと、俺に向かって差し出した。


「はい! 純一君にプレゼント」

「…………これは、マスク?」


 幼馴染から手渡されたのは、覆面レスラーがかぶるような形のマスクだった。

 確実に市販のものじゃなく、手作り感満載。

 なんだか可愛らしいデザインの布だったり、ちっちゃいリボンが見えたり、ヒラヒラがくっついてたり……って、これ!?


「パンツじゃないの!?」

「そうだよ。わたしのパンツで作ったの」

「あたしも、提供したよ」

「待て待て待て! そもそもなんでマスクなのかわからないし、自分のパンツで作った意味も不明だし。君ら、恥じらいとかないの!?」

「……だって、純一君には何度も見られてるし」

「今さらだよねー」

「俺は見たことないけどなー」

「俊に見せるパンツなんてあるわけないじゃん」

「……そういう問題じゃないだろ」


 手に持ったパンツマスクを、まじまじと眺める。

 もしかして昨日沙雪が言ってたやることって、これを作ることだったのか?

 ……えっ? てかこれ、かぶれってことじゃないよね?


「かぶるんだよ?」

「沙雪!? いつから、人の心を読むスキルなんて会得した!?」

「そんなの、表情見てればわかるよ」

「……か、かぶれともうされたか?」

「もうしました」

「な、なんで?」

「……山下さんみたいな女の子を、二度と生み出さないためにだよ」

「山下さん?」


 俊介曰く、俺の濃い匂いを吸ってしまったために、物静かな委員長から禁断症状な委員長にジョブチェンジしてしまった女の子。

 このまま回復しなければ、俺が責任取るかもしれない女の子。

 そんな山下さんとお手製パンツマスクに、いったいなんの関係があるのだろうか?


「美鈴と相談したんです。これ以上純一君の周りに新しい女――じゃなくて、山下さんみたいな被害者を増やさないためにはどうしたらいいかって」

「それで一つ結論出たんだけど。山下さんがああなっちゃったのって、助けてくれたのが純だってわかってたことも大きかったと思わない?」


「なるほどー。たしかに、それはあるかもな。だから、純一にマスクをかぶせるわけね」

「うん。助けられた女の子が純一君の匂いを吸ってしまっても、相手が純一君とわからなければ山下さんみたいにはならない。もしも純一君がこのマスクをつけて助けてたら、どこかにいるマスクマンに想いを馳せてたはず。そう思わないかな?」


「……沙雪たちの推論にとくに文句はないよ。でも、これは……」

「大丈夫だよ?」

「……沙雪さん。このマスクを大丈夫と評されたのか?」

「うん。ちゃんと口の部分に、おしりのあたりの布がくるように計算して縫って――」

「その情報のどこに大丈夫の要素があるのか、ちゃんと日本語で説明して!?」


 じゃあなに!?

 このマスクかぶったら、俺は沙雪のお尻と間接キスってこと?

 そんなレベルの高い間接キス、聞いたこともないんだけど!?


「沙雪、美鈴。俺はマスクをかぶることに異論はない。だから、今度俺が普通のレスラーっぽいマスク買ってくるよ。ネットでも注文できそうだし――」

「やっぱり、純一君モテたいんだね」

「……えっ?」


 この空気やばいですよ。

 完璧に、沙雪様がご降臨されてますよ。


「……沙雪。落ち着いて。今の話の流れで、どうなったらモテたいなんて結論になるんだ?」


「だってわたしたちは感じないけど、純一君の匂いってかなりすごいんだよね。それはもう、特徴的なくらいに」

「てことはマスクかぶってても匂いから、純だって気づいちゃう人も出てくるんじゃない?」


「普通のマスクかぶってる純一君に助けられた。これじゃあ気づいた女の子にとって、素顔の純一君に助けられた状況となにも変わらないよね?」

「だから、あたしたちは考えた。それなら普通のマスクじゃなくて、変態がかぶるようなのにしたらいいって」


「純一君。つまり考えに考え抜かれて完成したのが、このマスクなんだよ!」

「……か、考えに、考え抜かれて……」


 ……冗談だろ。

 考えに考え抜かれた結果、パンツを材料にしておしりにキスって。

 というか、美鈴さん。なんか沙雪様と完璧な連携っすね。

 ちょっと、美鈴様って呼びたくなるような雰囲気出してますよ。


「もしも助けてくれたのが純一君だってわかっても、パンツマスクの変態だったら、きっとかなりのマイナスイメージスタートになるよ。これで山下さん化を多少なり防げるはず!」

「ま、マイナススタートどころか、ブタバコスタートにならないかなあ……なんて」


「純も変態とバレたくないから、細心の注意を払う。一石何鳥かわからないくらい、完璧ね」

「……そのことわざに謝ってほしい気分だよ」


 やばい。やばい。やばい。

 なんとか、このピンチを脱出しないと。

 まじでこの変態マスクをかぶることになるぞ!!


「あ、あのさあ。二人とも――」

「……かぶってくれるよね?」

「……さ、沙雪」

「………………くれるよね?」

「………………い、いやだから」

「………………………………ね?」

「………………………………はい」


 あまりのプレッシャーに、声帯と口が俺を裏切り命乞いをする。

 なんて取り返しのつかないことをしてくれたんだ、おまえら!?


「はっは!! 最高じゃねえか、そのマスク。純一によく似合いそうだぜ――って、それなに?」

「なにって、あんたのぶん」


 ゴム手袋をした美鈴が、俊介になにかを手渡す。

 なんだか派手な柄と地味な色が混在していた。


「……美鈴。これ、なに?」

「なにって、見ればわかるでしょ? 俊のマスクだよ」

「な、な、なんで俺まで!?」

「だってせっかく純一君がマスクをかぶっても、そばに素顔の俊介君がいたらすぐに正体バレちゃうよ」

「だ、だからって、このマスクって!?」

「うん。お父さんのパンツで作ったよ。派手なのがあたしのお父さん」

「地味なのが、わたしのお父さんです」

「そんな情報いらねえよ!! 俺にかぶってほしいならなあ。せめて会長のパンティでも盗んでこいって――」

「…………俊介君?」

「……すいません。調子乗りました」


 俊介の反乱は、沙雪様の微笑みで瞬時に鎮圧完了。

 もう、かぶるしか道は残されていないようだ。


「俊。大丈夫だよ? ちゃんと純とお揃いになるように、口の部分におしりの布がくるようにしたから」

「…………純一ぃ。この世には、ここまで嬉しくない気遣いが存在するんだなー……」


 絶望的な表情で、パンツを眺める親友。

 その姿は『俊介、そのマスクお似合いだぜ!』って、さっきの意趣返しをする気すらまったく起きないものだった。

 胸が締め付けられる、とてもせつない気持ちにさせられた。

 

 俺、二度と自分のマスクに文句言わないよ。


「俊介君も納得してくれたみたいだね。二人とも、さっそく今日からかぶってね?」

「な、なんで今日からおっさんのパンツかぶらないといけねえんだよ!? 今日は生徒いなくなってから活動なんだから、必要ないだろ!?」

「俊、落ち着きなって。生徒がいなくても先生はいるでしょ。この学校、結構独身の女教師いるんだよ?」

「なにが起こるかわからない。純一君に女教師が群がるなんて、許される事態じゃないよね?」

「てことで、あたしたちは少し時間をあけて出るから。あたしたちには、マスクないからね」


 ということで、助っ人部活動初日。

 夜の学校を、二人のパンツマスクをかぶった変質者が徘徊することとなったのだ。



※1-7 クラスメイト概要※


    ・体臭がキツすぎる男子


    ・体臭男子の幼馴染三名(うち一名、沙雪様少し落ち着き中)


    ・体臭男子に好意的なお嬢様


    ・お漏らしイケメン二名→紙おむつイケメン二名


    ・体臭男子に近づきすぎると、アへ顔晒しそうになる委員長

 

   etc

読んでいただきありがとうございました


完全に全編真面目パートでしたね


少しでも楽しんでいただけてたら嬉しいです


次回もよろしくお願いいたします!

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