俺の匂いは、生徒会に目をつけられるほどに酷いんですか!?
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「……純一。あれ、いい加減なんとかしろよ」
「俺だって、かなり頑張ったよ。朝よりは、だいぶマシだろ?」
「……まあ、机交換したのはグッジョブだったよ」
「それより、おまえは美鈴をなんとかしろよ?」
「えー? なんで俺が?」
「だっておまえ、美鈴の隣の席じゃん」
「席とか関係ねーよ。美鈴も純一の担当だろ」
「このやろう。全部俺に押しつけるつもりだな」
俺と俊介はすぐ後ろにいる美少女二人を見ながら、ひそひそ声で話している。
普通美少女なら取り合うはずなのに、完全な押し付け合いの様相。
今は放課後。
いつもどおり幼馴染四人で、一緒に廊下を歩く。
いつもと違うのは、沙雪の表情は暗く、美鈴が不機嫌そうってことだった。
今日も沙雪様は絶好調だった。
前門の委員長。
後門のお嬢様。
これに挟まれて、机は粉々。
両隣のイケメンは、ガクブル。
さすがに机だったものに何も置けない幼馴染を見てられなくなり、無理やり俺の机と粗大ごみを交換した。
一言、「沙雪のノートコピーをするからもう絶対に壊すなよ」と添えたら、なんとか机への破壊衝動は収まったようだった。
……シャーペンは、何本も折ってたけどね。
「しゃーねーな。俺は美鈴をなんとかもとに戻す。だから、沙雪をなんとかせえ。このままじゃ、佐藤と鈴木が不憫じゃねえか」
「……たしかに、あいつらのことはなんとかしたい」
三時間目の体育の時間。
1-7がどよめきに包まれた。
更衣室で着替える女子と違い、男子は教室で着替えるんだけど、そこで大事件が起きたのだ。
ズボンを脱いだ佐藤、鈴木両名が身に着けていたのは、大人用の紙おむつだった。
そう。二人は対沙雪様耐性を会得したわけじゃなかった。
紙おむつに、放出したすべてを受け止めてもらっていたのだ。
それを見た周りの男子は、からかい始める。
でも紙おむつイケメンたちは、そいつらに怒りをぶつけることはなかった。
そして紙おむつ鈴木は、ただ静かにこう言ったのだ。
「……じゃあおまえ、俺と席変わるか?」
この一言で、教室を支配していた嘲笑の空気は一掃された。
あとには、おむつが吸収しきれなかった爽やかなアンモニア臭だけが残った。
ちなみに紙おむつイケメンズとは、少し話すようになった。(鼻栓はしてるけど)
沙雪様とも普通に対峙している俺たちを、尊敬したらしい。
あいつらは普通にいいやつだった。
なんとか、パンツで登校させてやりたい。
「まあ、今夜もいろいろやってみるよ。昨日みたいに、頭なで二時間程度で終わればいいけど……」
「頑張れ純一! 教室の平和は、お前の両肩にかかってる」
「おまえも、美鈴のことちゃんとやれよ」
「まあ、俺は秘策があるから」
「……秘策?」
「気にすんなって! それよりおまえが沙雪にたくさん時間使えるように、とっとと用事終わらせて帰ろうぜー」
俺たち四人は今、生徒会室に向かっている。
帰りのホームルームが終わった直後、全員校内放送で呼び出されたのだ。
昨日の今日で、生徒会室からお呼び出しがかかる。
単純に考えたら、山下さんを助けたことについての話だろう。
でもそうなると、沙雪と美鈴も呼ばれた理由がわからない。
それに望月さんは全部処理するし、問題ないと言っていた。
その言葉を信じて、悪い話ではないと祈りたい。
「なにが出るかなー。なにが出るかなー。ふふふ、ふーふん」
……なんで、こいつはこんなに能天気でいられるんだ?
生徒会室に呼ばれた重大性とか、なんも考えてなさそうだな。
頭からっぽな親友の姿にため息をこぼしていると、目的地に着いてしまった。
緊張気味にノックをし、「橘です」と伝える。
すぐに「どうぞー」の声が中から返され、ゆっくりと扉をスライドさせる。
なんでほかの教室と同じ引き戸なのに、生徒会室ってだけで重く感じてしまうんだろうか?
「失礼します」
「ごめんねー。わざわざ来てもらっちゃって。」
「いえ、大丈夫です」
出迎えてくれたのは、三人の女生徒。
四角く並べた長机の、左右と奥にそれぞれ一人ずつ腰かけている。
三人の中で唯一鼻栓をしていない、奥のセミロングの少女が、代表して座ったまま言葉を発している。
「わたしは、生徒会長の西原です。よろしくね」
やはりというか、自分を生徒会長だと名乗った西原先輩は、続けて左右の少女の紹介もする。
俺らから見て、右が副会長の横山さん。左が会計の今井さんとのことだ。
二人とも仕事を続けながら、軽く会釈をしてくれる。
その時の視線は、なんだか品定めをされているような気になった。
三人ともタイプは違うが、可愛い女の子だ。
ちなみに現在の海浜高校は、一年が赤、二年が緑、三年が青のネクタイやリボンを付けている。
彼女たちは全員青のリボンなので、三年生のようだ。
「はい、よろしくお願いします。それで、どんな用件ですか?」
「うん。ちょっと、君たちの部活についてなんだけどね」
「部活?」
「そう。うちの高校って三年になるまでは、部活かそれに代わるなにかに属してないといけないって知ってる?」
「知ってますよ。だけど俺が入ると不快に思う生徒も出るだろうからって、ここにいる四人は免除されてます。校長に確認してもらえれば――」
「その校長からね、直接言われちゃったんだよ。その特例、無効と伝えてって」
「……はい?」
「だから、無効なんだってさ。全員まとめて部活入れってことだね」
なにを言ってるんだ?
免除という名の実質排除をしといて、今度は脈略もなく入れってか?
いったい俺たちをどうしたいんだ? あの禿げ狸は。
……というか、用件は昨日の山下さんのことじゃなかったのか?
「……急すぎて意味不明です。あの校長、認知症なんじゃないですか?」
「うーん。べつに、いつもどおりだったけどね。違いといえば、外車のパンフレットをたくさん読んでたくらいで――」
「今すぐ、校長の口座の金の動き調べて!!」
あきらかにおかしいだろ!
このタイミングで、外車のパンフレットって。
着服か? 賄賂か? 裏金か!?
……というか、外車買うような大金って……。
「望月さん。説明してくれるんだよね?」
「――はい。ご説明いたします」
「うおっ!?」
どこにいるかもわからない女性に声をかけると、いつの間にか眼前で姿勢を正している。
いるのは予想どおりだけど、その登場方法はびっくりするからやめてほしいんだけど。
「やっぱり、かっけー! 弟子入りしてー」
「……また、純一君の周りに新しい女が……っ!」
「沙雪、落ち着いて。あの人、たぶん貫地谷さんの御付きだよ」
「……また、貫地谷……っ!」
「……だめだこりゃ。純、早くなんとかして」
なんか後方がうるさいけど、今は前にいる人に集中しよう。
この人が、今俺が知りたいことを全部知ってるはずだ。
素直に話してくれるかは、まったくの別問題だけど。
「それで、どういういきさつで俺たちが部活なんて話になったの?」
「もう思いあたられていると思いますが、お嬢様のご希望です」
「やっぱり、貫地谷さんか」
「……貫……地谷……っ!」
「沙雪。いい加減落ち着かないと、血管切れちゃうよ?」
お嬢様の願いを叶えるために、周りが忖度したって感じかね。
というかあの禿げ、教育者として終わってんな。
「俺と一緒に部活すれば、さらにお父さんに褒められるってこと?」
「……そ、そんなくだらない理由で、わたしたち四人の時間を……っ!」
「……一緒に部活をなされば、いつかお嬢様のお考えも知っていただけると思います。それに……」
「……それに?」
「きっかけがどうであれ、そのあとに築かれたものは本物です。違いますか?」
「そのあとに、築いたもの……」
望月さんの言葉を、深く噛みしめる。
貫地谷さんが最初に俺の隣に座りたがったのは、たしかに家の教えを守るためだったのかもしれない。
でもそのあとに、笑顔で話しかけてくれたこと。
授業でわからないところを教えてくれたこと。
嬉しそうに、『おはようございます』と言ってくれたこと。
少し寂しそうに、『さようなら。また明日お会いしましょう』と言ってくれたこと。
それらを全部、家やお父さんのためだけだなんて思いたくない。
いや、もしもこれまでは残念ながらそうだったとしても、これからもっと長い時間を一緒に過ごせば、いつかは本物の友達になれるかもしれない。
きっかけや理由はどうであれ、俺と距離を取ることもなく積極的に話してくれるんだ。
部活も一緒にやりたいと願ってくれるんだ。
あとは、俺次第なんじゃないだろうか。
「……望月さん、ありがとう。俺、あまりにも幼馴染以外から敬遠される時間が長すぎて、たぶん臆病になってたんだと思う。優しく話しかけられても、全部が打算なんだろうなと思ってしまう。逆に俺から話しかけたら、きっと迷惑だろうなと決めつけてしまう。……考えてみたら俺、この二日間ほとんど貫地谷さんに話しかけてないや。貫地谷さんは、あんなに話しかけてくれたのに」
貫地谷さんの御付きは頷くこともなく、無表情のまま、だけど真剣に俺の話に耳をかたむけてくれた。
俺は二度深呼吸をして、後ろを振り返る。
家族と同じくらいに大切な、幼馴染たちと向き合う。
「俺、沙雪の気持ちわかるよ。ずっと四人だったから。その時間が楽しすぎて、心地よすぎたから。だからそこに誰かが入ることを、怖いと感じてしまう。変化が起きて壊れてしまう危険があるくらいなら、このままでいいと思ってしまう。きっと俊介も美鈴も、少なからず同じ恐怖を抱えてると思う。……でも」
俊介。美鈴。沙雪。
三人の幼馴染の目を、左から順番にゆっくりと見つめていく。
隣に住む美少女と、ほかの二人よりも少しだけ長く見つめ合ったあと、俺は三人に向き直る。
「俺、貫地谷さんと友達になりたい。……いや、違う。もっといろんな人と、友達になりたい。それで俺たちの仲に変化が起こるとしたら、きっといい方向にだと信じてる。だってみんなは俺の大切な幼馴染で、親友だから。だから……」
もう一度、緊張気味に三人の顔を眺める。
表情から、みんなの心情はわからない。
でも、真剣に聞いてくれている。
「俺と貫地谷さんと、一緒の部活に入ってほしい!!」
勢いよく、頭を下げる。
俺はきっと、とんでもないわがままを言っている。
みんなは、誰も近づかない俺とずっと一緒にいてくれた。
高校まで、同じところに来てくれた。
沙雪はもっと上の高校にいくらでも入れたのに、四人で過ごしたいからと海浜高校を選んでくれた。
それなのに、俺は新しい友達が欲しいと言っている。
四人だけの時間を、終わらせたいと言っている。
愛想をつかされても、おかしくないかもしれない。
それでも俺は、近づいてきてくれた貫地谷さんと友達になりたい。
こんなチャンス、二度とないかもしれないから。
「……純一君は、なにもわかってないよ。本当、鈍感だね」
「――えっ!?」
消えかけるような声に顔を上げると、沙雪が寂しそうな顔をしている。
わかってないとか鈍感って、いったいなんのことだろうか?
「……沙雪?」
「……んーん。なんでもないよ」
沙雪は首を横に振って笑顔を見せる。
でも無理やり作った感じというか、どこか痛々しい。
「わたしは、純一君が部活に入るなら一緒にやるよ。中学の時もわたしたち帰宅部だったし、ちょっと興味もあるし」
「当然、あたしも一緒に入るからね。ちょーっと最近の純の周辺事情には、納得できないところもあるけど。やっぱり純たちがいないと、つまらないしね」
「もち、俺も入るぜ! おまえらがいない日常なんて、想像もできないしなー」
「みんな……。ありがとう」
もう一度、深く深く頭を下げる。
俺、本当にこいつらに出会えてよかった。
自分の体臭の事実を突きつけられたとき、神様を恨んだりもしたけれど、この幼馴染たちに出会わせてくれたことは感謝したい。
神様、ありが――
「感動的な場面に水差すようで悪いけど、君らにそもそも選択権なんてないからね。一緒の部活に入らなきゃ、まとめて退学だし」
「少しは、空気読んでください!!」
――ってか、なに鼻ホジってんの!?
たしかに俺らの仲間内の話だし、会長には興味なかったかもしれないけど、鼻ホジはさすがに酷くない!?
――って、飛ばすな!!
「にしても、部活かー。やっぱ、テニス部か、水泳部がいいなあ。……いや、新体操も捨てがたい」
「俊、あんたわかりやすすぎ。アンスコや水着、レオタード目的ってバレバレじゃん。うち、男子新体操はないはずだし。とにかくあたしは、やだからね」
「べつに、美鈴の水着とか興味な――」
「……なーに?」
「――くはないけど、ありもしないかなーって」
「それ、つまりはないってことだからね。……まあ、あんたに興味持たれても嬉しくないし、どうでもいいけど」
「どうでもいいなら、三発も殴んなよ!?」
「わたしは、どこでもいいよ。純一君がやりたいところで。……でも、水着は恥ずかしいかも」
「いや、みんなで話して決めようよ。明日、貫地谷さんも一緒に」
「盛り上がってるとこ申し訳ないけど、既存の部活には入れないよ」
「「「「えっ!?」」」」
――って、今度は左の穴ですか!?
どんだけ、溜めてんですか!? そんなに、生徒会長の仕事って忙しいんですか!?
だから、飛ばすな!!
「オブラートに包まずに言うけど、君たちが入ることに難色を示さない部活はないと思う。歓迎してくれる人もいるだろうけど、部員全員がそうである部活はたぶんない。それにこれは、望月さんからのお願いでもある」
「望月さんが?」
「はい。お嬢様を護衛するうえで、大所帯の部活はできるだけ避けていただきたいのです。少人数の、それも信頼できる人たちに囲まれていてほしい」
「……なるほど」
たしかに貫地谷さんを守るとなると、少人数で固まってたほうがやりやすいんだろう。
普通の部活入って大会参加とかになったら、さらに大変になることは想像に難くない。
「ということで、わたしが君たちの入る部活を決めておいた」
そう言って、会長は立ち上がると俺たちのほうに近づいてくる。
「……会長が?」
「そうだよ。じゃーん!」
俺たちの前までくると、掛け声とともにさっきまで鼻をほじってた手で持った紙を披露する。
そこには、こう書いてあった。
「……助っ人部?」
「そう。かっこいいでしょ?」
「そうですか? ……ってか、よく見ると、すでに俺ら全員の名前書いてあるんですけど!?」
「そうだよ。望月さんが、みんなの筆跡真似して書いたの。うまいでしょ?」
「照れますね」
「かっけー」
「照れるな! そして、俊介は興奮するな! 文書偽造されてんだよ!?」
「あ、ご安心ください。お嬢様のお名前は、ご自身に書いていただいております。本日は用事がありましてご参加できませんでしたので、お先にご記名いただきました」
「……べつに、俺はそんなこと心配してないけどね」
望月さんは、絶対に敵に回したらやばい人だよ。
だってこの筆跡、幼馴染の俺らでもたぶん偽物だって気づけない。
なんだか、頭痛くなってきた。
「……それで助っ人部って、具体的になにをするんですか? 名前からすると、誰かを助けるような活動になりそうですけど。純一君とバラバラな場所に行くとかなら、わたしはいやです」
「あたしも、内容によっては拒否したいかな。純たちと楽しめるならなんでもいいけど、なんか名前的に怪しいし」
「そうかー? なんか、かっこいいじゃん。助っ人! 俺は、惹かれてるぞー」
「……俊。あんたは、少し黙ってて」
「心配しなくても、大丈夫。基本的に、全員一緒に活動してもらって構わない。活動内容は、名前のままだよ。ちょっとした生徒の悩みとか、学校の不満点とかを解消するために動く。まさに、我が校の助っ人!」
「……それって助っ人ってより、生徒会の便利屋って表現のが正しいんじゃ……?」
勢いで押し切ろう感プンプンな生徒会長へ、俺は胡乱げな視線を向ける。
瞬間、それまで正々堂々としていた会長の動きが、ピタリと止まる。
俺は、ますます目を細めていく。
会長の額から、一筋の冷汗が垂れる。
「――っかりましたあ。認める。認めますぅ。認めればいいんでしょ? たしかに生徒会の仕事少し手伝って欲しいかな、なんて思ってましたあ。すいませーん」
「開き直りすぎでしょ!? そして、いい加減鼻をほじるな!」
「えー? 美少女がほじると、男って興奮するんじゃないの?」
「……少なくとも、俺にそういう趣味はないですよ」
「……俊は、まんざらでもなさそうだけどね。このド変態は」
「会長……いい」
そういや、俊介って色っぽい年上のお姉さんがタイプだったっけ?
まあ会長は出るとこ出てるし、たしかに顔も美人系で可愛い。
でも俊介、この人はあかんやろ。
「……じゃあ、こっからはちょっと真面目にいこうか」
そんな会長の顔が一変する。
寸前までのおちゃらけた雰囲気はいっさいなく、身を正して聞かざるを得ない空気。
今日初めて、西原先輩のことを生徒会長だと納得できる姿だった。
「もともと生徒会って、結構オーバーワーク気味でさ。ちょこちょこいろんな人に、手伝ってもらったりしてたのね。でも最近、この学校病気とか怪我とかが増えててさ。まあ、お手伝いの人くらいならなんとかなったんだけど、ついには生徒会メンバーも二人脱落してね」
「二人も……?」
横山先輩と今井先輩は、黙々と仕事を続けている。
言われるまで特に気にもしなかったけど、たしかに生徒会役員が三人は少ない。
「そう。書記の女の子と、男子のほうの副会長ね」
「なぁっ!? てことは、その男はハーレム状態ってことっすか!? ハーレム、許すまじ!!」
「俊介君。少し、頭冷やそうか……?」
「さ、沙雪様!? な、なんでご降臨を!?」
「俊。今、沙雪の前でハーレムはNGワードでしょ」
「そ、そんなトラップが身近に!? ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!」
「……じゃあ、ちょっと静かにしててね?」
「……はい」
「君たちは、本当におもしろいね。心配しなくても大丈夫だよ。彼はゲイだから」
な、なんてことをカミングアウトしてるんだこの人は!?
しかも、本人のいない場所で!?
「どうした、橘君。もしかして、BLに興味あるの?」
「……BLってなんですか? 嫌な予感しかしませんけど」
「BLはボーイズラブのことだよ。男と男の純愛の話さ。好きだったんだろ? べつに、隠す必要なんてないから」
「ち、違います! 俺は副会長に会った時、どんな顔すればいいのか困ってるだけで……」
「いいよねー、BLは。彼と君の場合、うーん。……そうだね。君がタチのがそそられるね」
「少しでいいから、人の話を聞いて!!」
俺、副会長とまともに話せるのか心配だよ。
……てか、沙雪も美鈴もなんか頬染めてない?
「とにかくさ、君たちが助っ人部として活動してくれれば、わたしたちも助かる。もちろん、つねに君たちに仕事を回すわけではない。生徒会もできるだけ頑張るけど、どうしても手が回らなかったり、これは生徒会よりも君たちのほうがみたいなものだけ頼むことになる」
「でも助っ人部って名だけで、実質使いっぱしりってことっすよねー。助っ人はかっこいいけど、使いっぱしりはなー」
「君たちは使いっぱしりではない、生徒会直属の隠密部隊。もしくは遊撃部隊。わたしはそう考えている」
「それかっけー! やるやる! 俺やります!!」
「俊。あんたの将来、あたし不安だわ」
俊介の趣味趣向を、会長は完全に把握してる。
もしかして、助っ人部って名前もそれを考えてのことなんじゃ。
「……それにさ」
「――っ!?」
その刹那、会長の雰囲気がまた変わる。
先ほどの生徒会長っぽい、威風堂々といった感じでもない。
背筋をいくつもの汗がつたう。
手汗も止まらない。
今の感情を一言で表すなら、恐怖。
恐怖を感じずにはいられないプレッシャーが、会長から発せられている。
「橘君。君、ずいぶんと強いらしいじゃないか。悪漢から、うちの生徒を守れるくらいに」
ニヤリと笑みを浮かべた会長の顔に、俺たち四人は凍りついた。
※1-7 クラスメイト概要※
・体臭がキツすぎる男子
・体臭男子の幼馴染三名(うち一名、沙雪様ご降臨中)
・体臭男子に好意的なお嬢様
・お漏らしイケメン二名→紙おむつイケメン二名
・体臭男子に近づきすぎると、アへ顔晒しそうになる委員長
etc
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