シロとアーサー
その頃魔王は…
「は〜〜、つかれた〜」グデ〜
シロは昨日からずっと魔力で姿を消しながら空を飛んでいた。久しぶりに魔力を使ったせいか、思ったよりも疲れてしまい、空を飛びながら居眠りしてしまった。そして気付かぬうちにアーサーのニワトリ小屋に衝突し朝の状態に至ったのだ。
「けど、ごはん食べれたからいい〜や〜」
そう言って魔王はニワトリ小屋でもう一眠りするようだった。邪魔そうなニワトリは端に追いやって。
少しするとアーサーは再びシロを見つけた。
「あー!いたー!」
「………」zzz
「ねぇ!シロちゃん!起きて!」
「………」zzz
ーーーやっぱり起きない。どうしたら…
そう考えていると朝の出来事を思い出した。そう、朝食だ。シロはお腹が空いたから起きたのだとアーサーは推測し、そのヒントを頼りに未だに寝ているシロに話しかけた。
「ふ〜ん、じゃあシロちゃんの分のお昼ごはんは食べちゃお〜と」
「ダメ!!」ムクッ
効果てき面であった。
ーーーどんだけ食い意地張ったんだよ…
アーサーはシロの食への執着心に呆れた。
「やっぱり狸寝入りしてたな…」
アーサーはシロを漸く追い詰めた。
「あ………あの、ごはんは?」
ーーーそんな悲しい声で言わないで〜!!
この一言はアーサーの心をえぐる。罪悪感がアーサーを襲ってきた。それになんとか耐えきったアーサーはシロにツッコミをいれる。
「さっき食ったばっかりだろ!」
ーーーこれでどうだ!
アーサーは勝利を確信した。が、
「……そっか、じゃ、おやすみ〜」
あっさりと手のひら返しされてしまった。
「ちょっと待ったー!」
ーーーこれで終わらせてはいけない
そう思ったアーサーはシロが寝る前に話を続けようと急いで声をかける。
「なに?」
さっきまでの美しいかった声で冷たく言い放たれる。
ーーーこれはこれでいい
相変わらずなアーサーだった。そしてこれが本当に最後の一言になった。
「働かざる者食うべからずって知ってるかい?」
アーサーは笑顔でそう言った。
「……いじわる」ムー
悔しそうに仕方なさそうにシロは立ち上がりニワトリ小屋から出てきた。
「お昼ごはん、いらない?」
アーサーがそう言うとシロは渋々、アーサーの手伝いに駆り出されて行った。
「で、何するの?」
シロはヤル気はなさそうに質問してきた。
「そうだな、じゃあ牛小屋に運ぶワラを運ぶのを手伝ってくれる?」
「どこに運ぶの?」
「そうだね、取り敢えず小屋の前に運んでくれればそれでいいよ」
「分かった」
「俺は牛小屋の掃除をしてくるからよろしくね」
そう言って俺はせっせと牛小屋を掃除した。
掃除が半分くらい済んだ時、ふと小屋の入り口を見るとワラの山が出来ていた。
「は?」
その後、アーサーは驚いた。あんな幼い子が掃除が終わるより先に仕事を済ましてしまうとは予想だにしていなかったことに。
小屋の入り口に駆け寄ったがシロちゃんの姿は見えなかった。
「シロちゃーん、どこ行ったー!」
「ここだよ〜」
上から声がした。彼女はワラの山の上でくつろいでいた。
「これ、どうやって運んだの⁉︎」
「え?こんなの手でギュって持ってパッじゃん」
ーーーこの子何言ってんの?
アーサーはシロのことがとても心配になってしまった。
「ごめん、全然分かんないんだけど…」
「…魔法って知ってる?」
そこでアーサーは気づくことができた。シロが何をしたのかを。
「まさか!君は魔法使いなの?」
素朴な質問だった。一度は皆が憧れる人物、そして、それになることができる才能を目の前にいる子は持っているのだから。
「えっと、その、まあそんな感じ」
ーーーまだ魔法使いとは名乗れないのかな
シロの言い方からアーサーはシロが謙虚であると思った。まあ、実際はその逆だが。
「すごいじゃないか!
シロちゃんこんなに可愛いのに魔法まで使えるなんて!」
「そ、そうかな」テレッ
シロは素直に誰かから褒められた事がほとんど無かったため、アーサーから送られた称賛が素直に嬉しかった。
「他にどんな事が出来るの?」
「例えば、火を起こしたり〜風を起こしたり〜何もないところから水も出せるよ〜」フフーン
「すごいや!魔法ってなんでも出来るんだね!」
初めて魔法を使える人から魔法のすごさを感じた瞬間だった。が、アーサーの言葉にシロは顔を暗くした。
「…何でもは出来ないよ」
アーサーにはシロがさっきまでの様子と少し違った風に見えた。
「何かあったの?」
アーサーはこう言うところだけは鋭い。
「魔法じゃ、体は治せても心は治せないから…」
こんな事、人間如きに言っても何も解決しないと分かっていたはずだったのに、シロはアーサーに言ってしまった。
「……それは違うと思うな」
「?」
「心は治すんじゃなく、お互いに支え合って保つものじゃないかな、時には傷つけ合うこともあるだろうけど、そうやって俺たちは心を確かめ合って生きている、だから心を治すことが出来なんじゃないかな」
シロはハッとした。
「そっか…」
シロにはアーサーのような考え方が出来なかった。それはシロとアーサーには根本的な違いがあったからだ、それはシロは孤独な魔王でありアーサーは人間であると言うことだ。
シロは分かっていた。分かっていたからこそ絶望した。
孤独という心の病からは絶対に逃れられないことを…
「何かあればいつでも相談にのるし、出来ること
は少ないだろうけど何か手伝うこともできる事
も…… だからシロちゃん、俺と…」
その時、街の方から爆発が起こった。
「な、何だ⁉︎」
シロには直感的に分かった。それが魔法による爆発であったのを。そして、それが悪魔のものであることを。シロはアーサーが言いかけた言葉をもう一度聞こうとしたが、爆発が再び起こり爆風がシロたちを襲った。
シロは魔法で防ごうとしたが、
「シロちゃん!」
アーサーはシロを抱えて爆風に吹き飛ばされてしまった。
なんとかシロの身は守れたと安心し、声をかける。
「シロちゃん、大丈夫⁉︎」
「…離して」
シロは冷たく言い放つ。アーサーはこの短い間で少しは心の距離を縮めることができたと思っていたが、ここまで冷たく言われるとショックは大きかった。
「あ、ご、ごめん」
渋々とシロを離し、街の方を見る。街で火事が起こっているようで煙があちらこちらで立ち昇っていた。
「シロちゃんはここで待ってて、俺は街に行って父さんたち助けに行く」
「貴方では無理」
ーーーまただ。
シロの冷たい言葉はアーサーの体を強い力で引き止めた。
「そんなのやってみなきゃ分かんないだろう⁉︎」
ーーーそうだ、俺は間違ってない
アーサーは自分にそう言い聞かせた。
「あの爆風は魔法によるもの、貴方じゃ手に余る」
ーーーえ
アーサーはそれが何を意味しているのかよく分からなかったが、それでもアーサーは自分の心の熱を下げることは出来なかった。
「それでも…助けなきゃいけないんだよ!」
「そ、じゃあ頑張ってね〜」
ーーー所詮シロにとっては他人事だ。
アーサーはそう割り切って前向きに、そして今の現状から自分がすべきことをなそうと歩き出す。
「うん!シロちゃんもここから早く離れるんだよ!」
シロは、返事はしなかったが分かってくれただろうと思った。
「よし、じゃあ行ってくる!」
そう言ってアーサーは街の方に向かって走り出した。
「…バカ」ボソッ
シロはそう言ってアーサーの後をこっそり追いかけた。
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