出会い
次の朝、今日の朝飯の当番は俺なので父よりも先に起きて朝食の準備をしていた。その時、あることに気がついた。卵がないのだ。仕方なく俺は新鮮な卵に手に入れようとニワトリ小屋に向かったが、異変に気付いた。
何故かニワトリが俺の家の玄関先にいるのだ。
「お前、何でここにいんの?」
俺はニワトリに問いかけた。もちろん返答してくれるとは思っていないが、つい問いかけかしまった。意外にもニワトリは鳴き声で返答してくれた。
ニワトリを捕まえた後、何故ニワトリが小屋から出ているのか考えた。どうせ父さんが小屋の鍵を掛け忘れたのだろうという結論に至った。
ニワトリを戻すためニワトリ小屋に向かうと小屋の横に大きな穴が空いていた。
「なんじゃこりゃーーーーー!!!!」
自分でも驚くくらい朝から大きな声が出た。
だが、今度は逆に冷静になって考えた。
ーーーまさか…
俺は昨日のことを思い出した。そう、悪魔騒動が相次いでいることを。俺は小屋の近くにあったホークを構え、恐る恐るニワトリ小屋に入って行った。
そこには天使のように真っ白な幼女がいた。
服は白いワンピース。肌は透き通るように白く、すべすべしていそうだった。髪は銀髪で、朝日を浴びて綺麗に輝いていた。スヤスヤと気持ち良さそうに寝ている。まるで美しく光るダイヤのようなを輝きを放っていた。
「はっ」
俺は少しの間その子に見惚れていたようだ。鼓動が早まっていたアーサーはしばらくその幼女の様子を伺っていた。
ーーーもしかして本当に天使なのかも…
そんな事を考えていると好奇心がアーサーを動かした。たが、その子を起こそうと近づくと彼女の周りには見えない壁があった。
なんとかして彼女を起こそうと声をあげたりしたが全く効果は無かった。無理矢理起こそうと思えば起こせたかも知らないが、アーサーはそのまま寝かせてあげた。
取り敢えずニワトリ小屋に応急処置を施し、外にいたニワトリたちを小屋の中に戻し、卵を持って朝食の準備の続きを始めた。朝食が出来、父を起こして席に着いた。
そして「いただきます」と言おうとした時、後ろから可愛らしい声が聞こえた。
「………いた」
振り返るとニワトリ小屋にいたあの幼女だ。
「え?今なんて言ったの?」
「…お腹空いた……」
俺と父は目を合わせ、自分達の分を少し分けてあげた。
「どうぞ」
「あり…がとう」
幼女は少し恥ずかしそうだったが嬉しそうにそう言った。こうして彼女と俺たちは一緒に席に着き、朝食の時間を共にした。
「「「ごちそうさまでした」」」
三人は食べ終え、俺は幼女に質問した。
「初めまして、俺の名前はアーサー。君の名前は?」
「ま…」
幼女は両手で口を押さえ、こちらの様子を伺っていた。
「ま?」
彼女のさっきの慌てようにアーサーは特にこれといって何も思わなかった。それにホッとしたのか改めてその子はアーサーに向き直り、名を告げた。
「………シロ」
その子、シロは透き通るような美しい声でそう言った。
「シロちゃんっていうんだね」
「………」イラッ
何故か睨まれた。
ーーーちゃん付けは好きじゃないのかな
アーサーは勝手にそう解釈した?
「君はどこから来たの?」
「………」
シロは黙ったまま来た方向を指差す。
「じゃあ、何歳かな?」
「……10歳」
ーーーお、今度はちゃんと答えてくれたぞ
アーサーはそれが嬉しかった。そして次々と質問をしていった。
「お父さんかお母さんがどこにいるか知ってる?」
「………知らない」
「そっか…じゃ、じゃあ君はなんでニワトリ小屋にいたの?」
「……眠たかったから」
「………そうなんだ、」
ーーーなんて子だ…
アーサーはシロのことを変わった子に認識した。
その後もアーサーは質問責めし続けた結果、シロは黙り込んでしまった。さすがに疲れたのだろう。
俺が彼女に手を焼いている姿を見て父さんは言った。
「君は何をしにここまで来たのかな?」
「……見にきた」
「何を?」
「世界」
「そうかそうか」
父さんはそれ以上何も聞かなかった。
俺と父さんは仕事に出かけようとした時にはもう彼女の姿は無かった。
まるで雪のように溶けて無くなってしまったかのようだった。
「父さん、あの子は一体何者だったんだろう」
「さあ、父さんにも分からないな、もしかしたら妖精か何かなのかもしれないな」
ーーー妖精か
俺はそれを聞いて成る程と思ったが、一つだけかになることがあった。それはあの子を見つけた時の見えない壁のことだ。あれは一体なんだったのだろう。その疑問は後々分かることとなった…
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