新たな神殿
久しぶりに投稿しました。これからまた時間に余裕が出てくるので、不定期ではありますが頑張って投稿を続けようと思います。
竜巻の上に三人の人影。セト、アーサー、シロだ。三人はセトの魔法で作り出した竜巻に胡座をかいた状態で乗って、シューの領地へと向かっている。
「スゲー!めちゃくちゃ速いなー!」
竜巻は時速100キロほどのスピードで砂漠を走っている。炎天下の中、ひたすら歩いて移動してきたアーサーにしてみれば快適且つ、素晴らしい乗り物に見えているのだろう。
砂漠の熱い日差しを受けながらも、竜巻に乗って巻き起こる風のおかげで汗は一つもかいていない。
「風もちょー気持ちいいぜ!なぁ、シロ!」
ふと、後ろにいるシロの様子を見ようと振り返った。
「たぁ〜しぃ〜かぁ〜にぃぃ〜!」
いつもは難癖を付けてくるシロも快適な乗り物にはご満悦のようで、だらしなく返事を返す。
「貴様らに満足してもらえたなら幸いだ。」
それを聞いたセトも表情を顔には出さなかったが、感謝の言葉が返ってきた。
ーーー 神でも素直に喜ぶんだな。
アーサーはふと、そう思った。
そして、今が快適だからこそ、日頃の辛さも際立ち、ついついシロに言ってしまう。
「シロもこれくらい出来たら俺も楽なんだけどな〜」
楽がしたいから言ったのではなく、無意識に口から出てしまった言葉だった。
「魔法で移動してたら足腰が鍛えられないからダーメ。
もし魔法で楽したいなら魔法の一つや二つ、自力で修得するんだね」
それに賺さずシロが反論する。悪態付きで。
シロの反論は正論で、歩くという鍛錬はアーサー自身のためにもなる。それは重々承知であったが、魔法が使えないアーサーからしてみれば、シロの悪態はタブーだった。
だから、悪態には悪態を、アーサーはシロを挑発する。
「もしかして、シロってこれみたいに移動できる魔法が使えなかかったりして…」
軽く嘲笑うかのような言い方にシロもカチンとくるものがあったようだ、
「私にだってこれくらいのことはできるもん」
「ほんとかな〜」
「だいたいこんな魔法、基礎中の基礎。魔法を行使できる者だったら出来て当たり前の魔法なんだよ」
魔法を行使するシロは得意げに、そしてアーサーに対して差別的な言い方で言い返してきた。
魔法の云々をよく知らないアーサーにしてみれば、どうでもいいことであるが、この場においてはこの知識はアーサーに対するただの嫌味でしかなかった。
「けどさ、シロって俺といるときは全然、魔法使わないじゃん」
ふと、シロの嫌味から思い浮かんだ疑問をそのままシロに問いかけた。
「………だって、私の魔法だと威力が強すぎて、乗るどうこうなんて出来ないし。
それでも乗りたいって言うなら乗ってもいいよ。乗った瞬間、良くて両足欠損、悪ければ体の大半が消滅するかもだけど、それでもいいなら乗ってみる?」クスクス
「遠慮しておくわ」
お互いに弱みがある。口には出してはいないが、お互いに理解し、これ以上の言い合いが無駄であると察したのか、これ以上は続かなかった。
と思っていた矢先に、
「白いの、貴様は魔法のコントロールがあまり得意ではないようだな。この我、セト自らがレクチャーしてやろうか?」
ワザワザ口に出す、空気の読めない神が口を挟んできた。
「なんであんたみたいな犬に教えを乞わなくちゃならないわけよ。」
終わりかけたアーサーとの口喧嘩に割って入ってきたばかりか、シロの弱みに付け込んできたセトに、シロは嫌味全開で返す。
「貴様!神であるこの我を犬と言ったか⁉︎」
ーーー そりゃぁ、ここまで言われれば怒るよな
また出会い頭のような戦いが始まるのか不安になったアーサーは頭を抱えた。
「ええ、言ったけど?犬。」
ーーー やめて!これ以上火に油を注がないで!!
アーサーは全力で、目でシロにそう訴えかけた。
「我は犬ではなく、狼だ!」
「「そこなのか…」」
思いがけない返答に二人とも唖然とし、返した言葉は異口同音となった。
「まあいい、そろそろ着くぞ」
竜巻のスピードは思っていたよりも早く、あっという間に目的地が見えてきた。
しかし、目的地が近づくにつれて何の音か分からないが、その音がだんだんと大きくなるのと同じように三人の緊張感も高まっていく。
「あれは?」
まず沈黙を破ったのはアーサーだった。
「恐らく、またあのお方々が揉めているのだろう…」
そう言ったセトは項垂れ、心底関わりたくなさそうな態度を示した。
ーーー また一悶着ありそうだなぁ…
・・・・・・・
セトのおかげで結界を破壊することなく通過し、問題の場所へと向かう。ここまで来ると騒音は耳を塞いでいてもはっきりと聞こえて来るほどのものだった。
竜巻に乗ったまま神殿の中に入ることはできないため、神殿の入り口で三人は降り立った。
ふと、シロの方を見ると耳も塞ぐこともせず、シロは平気な様子であることにアーサーは驚き、声をかけた。
「シロは平気なの!?」
「…………」
ーーー あれ?聞こえなかったのかな?
「シロ!!聞いてる!!?」
またしても返事はなく、シロは沈黙したままだった。仕方なくアーサーは耳を閉じていた右手を頭から離し、シロの肩に手を置いた。
「! あっ、ゴメンゴメン。魔法で聴覚をシャットアウトしてたから聞こえなかったよ〜。何か用なら砂の上に文字を書いて教えて〜」
ーーー ………ズルイ
魔法とは便利なものだと再認識させられる。いつか自分も使えるようになりたい、そうアーサーはこの時、流れ星に願い事をするかのように将来の自分に願いつつも、鍛錬に励もうと心の中で今まで以上に固く決心した。
そうして三人は神殿の中へと足を踏み入れていった。




