シロの遊び
食事を終えたシロの周りにはたくさんの人が群がっていた。二人が悪魔を倒した事を褒め称える点いがいにもう一つ、街のみんながこぞって集まる理由。
それはシロだ。
珍しい銀髪に整った顔立ち、まわりはどこかのお姫様か何かかななーんて思っているのだろうとアーサーは勝手に想像していた。(ちなみにアーサーは天使だと思ったのだが。)
改めてシロの美少女っぷりを感じながら流石に人が集まりすぎていて外に出ることができない状態だった。そんな状況下でアーサーがどうしたらいいものかとグズグズしていると道場の友人たちが大勢駆けつけていた。
勿論、目当てはシロを一目でも見るためだろう。道場のやつらの表情を見れば一発で分かる。みんな鼻の下伸びっぱなしだ。
ーーーこんなところ、師範に見られたら何てどやされるか…
アーサーはそんな心配をしていると道場の仲間が質問してきた。
「おいアーサー、あの子は誰なんだ?」
仲間の一人が言った言葉にみんなが頷きながらアーサーの返答を真剣な眼差しで待っていた。
「あー、名前はシロって言って、俺の師匠だよ」
アーサーは簡単にシロの紹介をした。
「「「「「「シロちゃーーん!!!」」」」」
街の男達からシロへの猛烈なアピールは見ていて異様だった。いつもは喧嘩ばかりしている奴らが何故か今日は息が合っている。そればかりか、妻持のオッサン達までもがこの通りだ。
それに対し、シロはニッコリと微笑み返す。それはもう可愛すぎるほどいい笑顔で。
その笑顔でまわりに群がっていた男達はメロメロだ。中には奇声を上げる者やその場に倒れ込む者までいた。
シロの笑顔は男達に効果抜群だ。
だが、一人だけメロメロでない男がいた。
ーーー俺がちゃん付けした時はめっちゃ睨んだくせに、何なんだよ!てか、何だその態度は⁉︎
シロのまわりへの対応に対し納得いかない様子のアーサー、どうにかしてここから離れたかったのか男達の間を割って入り、一人何とか外に出ることに成功した。
ーーーふー、やっと出れた〜
ひと息つくがすぐにまた、まわりは質問する為、アーサーに言い寄ってきた。
みんな、一度にたくさん言うものだからアーサーは全ては聞き取れなかったが、それでも聞き取れた例を上げるなら
「あの子はお前の何なんだ」や
「どこで知り合ったんだよ、あんな可愛い子!まさかお前の妹か⁉︎」や
「お前ら付き合ってんのか⁉︎」や
「どこで知り合ったんだよ⁉︎」などなど、みんなして言いたい放題だ。
ーーー勘弁してくれよ〜
そう思っているとシロが突然アーサー達のいた後方に瞬間移動してきた。先ほどまでシロがいたところでは急にいなくなったシロにあたりは騒然としていたが見つけるやいなやシロの元へみんな、全力ダッシュ。
男達がシロの元へ到達する前にシロはアーサーに近づき、耳元で囁いた。
「ヤキモチでも焼いた〜?」
「な、え、あ、」////
シロはニヤニヤしていた。本当に楽しそうに。アーサーは図星だったため、反論しようにも言葉が続かない。
そんな中、モタモタしていると男達が駆け寄ってきた。そしてすぐにシロの周りは囲まれ、アーサーとシロは離れ離れになってしまったが、意外な事にシロがその場を切り抜けるためにみんなに話始める。
「みんな〜、私、アーサーに大事な用があるの〜、ゴメンね」
シロは可愛くそう言って、最後にウインクをした。
ーーーそんな声も出せるのかよ…
アーサーは一度も見たことなかったシロの猫を被った姿に呆れていた。
「じゃ、アーサーこっちきて」
シロに言われるがままにアーサーはシロの前まで近づく。その時、まわりからの殺気を痛いほど感じていた。それを見ていたシロは笑いを堪えているようで顔に力が入っていた。
ーーーまた俺で遊んでるんだな…
日頃のシロを見ているアーサーにはシロのこの行動の意味を察した。
目の前まで来るとシロはアーサーの手を掴むと同時に魔法を発動した。二人はその場から消えた。
「あれ?」
アーサーは突然起こった事に目を白黒させていたが、すぐにシロが瞬間移動をした事に気付いた。
「さ、これで静かに今後のことが相談できるね〜」
満足そうな顔でそう言った。
ーーーなるほどね、もう堪能したのね…
アーサーは疲れた顔をしながらシロの話に耳を傾けた。