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駆け出し勇者と白銀の魔王  作者: 砂糖人形
旅立ちの時
1/23

伝説のその先へ

初めての人は初めまして。一作目を読んでくれた人はどうもです。

これは私にとって二作目になります。

一作目とは全く違うものですが、読んでくれたら幸いです。

〜昔々、あるところ魔王と呼ばれる一人の悪魔がいました。魔王は自分の欲望を満たすがために人間を苦しめていました。そして魔王は次々に仲間を集め、世界を手に入れようとしました。しかし、そこに魔王に立ち向かう一人の勇者が現れました。勇者は強く、それに続くかのように多くの人間が力を合わせ、魔王に立ち向かいました。勇者は魔王の仲間を倒し、遂に魔王を退治し、勇者は一国の王となり、世界に平穏の時を与え、それからも争いは起きず、平和は続きましたとさ、めでたしめでたし〜


パチパチパチと広い部屋で一人の拍手の音だけがこだまする。


「いや〜、何度聞いてもいい物語(はなし)だね〜」


一人の幼女はソファーに寝そべってた状態で執事に読み聞かせさせていた。


「そ、そうですね、魔王様(サタンさま)


そう、このだらしなく寝そべっているいかにもダメそうな幼女こそ、かの偉大な魔界を統べる魔王である。全くもって威厳を感じさせない堕落感が幼女とは思えないほどダメさを表現しているのは言うまでもない。


「ブブ、勇者ってどれくらい強いのかな〜」

勇者、かつて魔王を瀕死に追い込んだ人間だ。魔王は自分より年長者である執事に疑問を問いかける。


「えっ! えーっと、その〜」


この場にいる二人とも、勇者がどんな人物であるのかなど知る由がない。それにもかかわらず、魔王は容赦なく執事に笑顔でプレッシャーをかけてくる。


「ブブ?」ニコッ


ーーー理不尽だ


もし第三者がいたとしたら執事に同情するだろう。


「わ、私も実際に見たことはありませんが、たぶん貴方様のお父上、元魔王様よりもお強いのではないでしょうか…」


執事はこの場を切り抜けるために、何とか魔王が妥協する返答を考えた。例えそれが魔王にとって欲しかった返事でなかったとしてもだ。それでも執事としては最善な返事であっただろう。


「ふ〜ん、そんなもんなの?勇者って。

だって、私のひいひいひいおじいちゃん(初代魔王)

が勇者と戦って勝ったんでしょう?」


「まあ、物語の中ではそうなっております。」


どんなに執事がどれだけ気を使ったとしてもそれがいい結果に繋がるとは限らない。ただの魔王の気まぐれな質問にさえ、真剣に考える執事はこの先も一生救われることはなさそうだ。


「勇者も爪が甘いよね〜、ひいひいひいおじいちゃん

を倒せてもいないのにね〜


ま、ど〜でもいいけどね〜」


ソファーの上で背伸びをしながら魔王は自分の意見を述べていく。


「そ、そうでございますか」


執事は今日も絶好調でストレスが溜まっていく。



魔王は自分の体より倍近く大きいソファーで寝そべっていた自分の体を怠そうに起こした。肌は白く、美しい銀色の髪はスルリと垂れ、その幼い容姿を大人っぽく見せている。

魔王の仕事が長引いたため、昨日の支度のまま寝てしまったようだ。銀色の髪の幼女は目の前にいる執事(ブブ)にいつものように服(寝巻き)を着せるように指示を出す。


「お待たせしました、魔王様」


「ん」


そう返事をし、着替え終えた魔王(幼女)はそのままベットへダイブした。

そう、ただ寝巻きに着替えただけで魔王は特にすることはない。大抵、日常的な事務は執事が行い、重要な案件に関してだけ魔王に報告とその後の指示を促してもらうだけであった。


「ブブ〜、お腹空いた〜」


そうなればこの魔王の状況に誰しも納得がいくはずだろう。


「はい、少々お待ちを」


ーーーはぁ〜、またか。


執事は心の中でため息をつく。


「10秒以内ね〜」

ここでも魔王は容赦ない。執事が魔王に対して何を思おうが勝手だが、この魔王はそれさえも許してはくれなさそうだ。もし魔王を怒らせたら、と思うと執事は必死になるしかなかった。


「ええー!」

そう言うと執事は一瞬で何処かへ転移した。


「……………3…2…1…ゼ」


魔王がゼロと言い切る直前、執事は何とか間に合ったようだった。


「お、お待たせしました!」


さすがの執事も少し肩を上下させていた。


「チッ」


魔王の気まぐれは執事にとって命がけだ。そんなことは知らないとばかりに魔王は執事に注文をつけていく。


「どうぞ、お召し上がり下さい、魔王様」


「めんどくさい、食べさせて〜」アー


魔王は口を開ける。


「はいはい、」


そう言って執事は魔王の口に料理をスプーンですくって運んでいく。今日の料理はパエリアの様なものだった。


「まあまあだね〜」モグモグ


そう言いながらも魔王はどんどん料理を平らげていく。


「魔王様、あまり無茶な要求をしないで下さい。

心臓に悪いです」

執事は自分の気持ちをストレートに魔王にぶつけることで少しはこの状況が変わるかもと淡い期待を抱いていた。が、


「ふん、こうでもしないととつまんないじゃない」モグモグ


「………」


執事の要望は魔王の気まぐれよりも優先順位は下のようだ。淡い期待は消え去り、これ以上執事は何も言うことはできなかった。


「なら今度は5秒以内にしようかな〜」チラッ


「次は10秒でもっと美味しく仕上げてみせます!!」


ーーーもうやめて


いつもはポーカーフェイスをしている執事でさえ、気持ちが顔に出ていた。


「おっけ〜、楽しみだな〜」クスクス

魔王は執事の表情が変わったのが面白かったのか微笑する。


「はぁ〜」


もうため息は隠すことなく魔王の前で吐き出した。

執事は落胆し、それを面白そうに魔王は眺めて楽しんでいた。


しかし、魔王はこんな事では全然満足なんてしない。

いや、出来ないのだ。

何故なら今の魔王は初代魔王が成し遂げられなかった世界征服を難なく成し遂げてしまいそうだったからだ…


実際のところ、魔王は何もしていない。ただ一言、ブブに言ってみただけだった。


「暇だから世界征服でもしてみよっかな〜」グデー


その一言で魔王勢力の主力である魔王を含めた七つの大罪の何人かの大悪魔によって悪魔軍が世界征服を実行していた。


そんなことになっているとは魔王は知らなかった。

それは魔王が無意識の内に言った言葉であり夢でもあったからだ。容易には叶わない夢だと思っていた。


だが…



「え〜と…ブブ〜今なんて言った〜?」


耳の穴をほじりながら聞き間違えでもしたかのような態度だった。


「だから、順調に世界征服を遂行しております、魔王様」


「は?

ブブ、私の耳可笑しくなったのかな〜

今、世界征服を遂行しているって言った?」


魔王は、今度はしっかりと執事の方を見て真剣に聞こうとしていた。


「はい、そうでございます、魔王様」


「……………」


ーーーどうしたのだ


執事は急に黙り込んでしまった魔王を少し心配した。

執事は何かマズイ事でも言ったのかと思い、先ほどの自分の報告を見直した。が、どこにもそんな点は見つからない。一体どうしたのか。


「……………あの、魔王様?」

未だに固まったままの魔王を復活させようと声をかけた瞬間、ビックリするくらい声が響いた。


「えーーーーー!!!!!!!」


一体何にそんなに驚愕しているのか執事には分からなかった。


「歴代最強と言われている初代魔王でも出来なかった

世界征服を順調に遂行中だって⁉︎


てか、何勝手に世界征服してんのよ!」プンプン


ーーーなんで起こってるの⁉︎ 理不尽にも限度があるでしょ!

執事は魔王にいたいことを喉の奥にしまいこみ、根拠を述べる。


「で、ですが、世界征服をしろと指示を出したのは

魔王様ご自身でございますよ」オドオド


「え、そんなの出した覚えないんだけど…」キョトン


ーーーえぇーーーー!!!!


執事はさっきの魔王と同じ気持ちだった。

「い、言いましたよ!絶対に!!」


「えー、全然覚えてない…」


ーーーまさかあれも…


執事が思ったことはほぼほぼ正解だった…




そんなこんなで私、魔王は夢も希望もないグーダラな生活を送っている。


「つまんな〜いな〜、

何か面白い事ないかな〜」グデ〜


魔王の独り言は広い部屋によく響く。

生憎、今はブブもいない。


「………………………」


暇なので魔王は一人、孤独と向き合っていた。

魔王はいつも一人だった。母は元は神であったが堕天して父と結婚した。母は私を産んでくれた時に死んでしまった。父は病で死んだ。まだ幼い私は魔王の称号をたった6歳で手に入れた。確かに魔王としての実力は幼いながらにしてあった。しかし、心は弱かった。あの頃の私はブブがいなければ何も出来なかっただろう。いや、今もそれは変わっていないかもしれない。もしかしたら自分一人では何も出来ないのかも知れない。

一人で何かした事も無く、特に親しい友人がいるわけではかなった。それは魔王になった私と謁見出来る者がブブくらいだけだったのもあるだろう。いや、それ以上に私から話しかけようとしなかったからが大きな原因だろう。

魔王は孤独なものだとよく父は言っていた。

しかし、私は孤独を克服出来るとは思えなかった。それ故に、私はブブに依存してしまい、狭い世界でしか生きてこなかった。本や地図などで知識としては知っていたが、実際にその場所に行って自分の目で見た事は生まれてこの方、一度も無かった。


そこで私は閃いた。私にしては珍しく素晴らしいアイデアを。


「そうだ、世界を見に行こう!」


魔王は飛び起きてクローゼットから自分のお気に入りの服を選び、初めて自力で服を着た。


「あれ〜?なんか変だな〜」


お気に入りの服を着ようとしても自分一人では着れなかったようだ。諦めてもっと簡単に着れる服を選んでいた。


「これだ!」


魔王が手に取ったのは白い白いワンピースだ。お気に入りの中でも自分で着れそうなものはそれくらいしかなかった。

なんとか着ることができた魔王は適当に身支度を整え、小さな肩掛けカバンに必要な物だけを詰め、それを肩に掛け、魔王の証である真っ赤な宝石の指輪を外した。

これは魔王にとってのケジメだった。


魔王としてではなく、彼女、"ゲファレーナ"が一人で何かをしようとする決心を忘れない為に。


そう、彼女の物語はまだ始まってもいなかった。


ーーー今日、この時から私の本当の時間が始まるんだ!


魔王は勢いよく魔王城を飛び出した。(ちゃんとバレないように探索妨害、迷彩など姿を見られず、そして跡をつけられないようにした)


その後、ブブが魔王の行方を見つけられず倒れてしまったことは魔王はまだ知らない…



こうして魔王の旅は始まった…


広い広いこの世界(ブリタニア)を知る為に…

どうだったでしょうか。

読んで下さったみなさん、まだまだ未熟なのでどうか色々な指摘を頂けたらと思います。

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