どや?
「着いたよ……」
御者のじいちゃんが言うと、俺は体を起こし、馬車を出て街を眺める。
三日間馬車で移動し続けてやっと着きました!
『始まりの街』でござい!
「ここまでありがとさん」
代金を取り出して御者のじいちゃんの手にのせる。
「いいってことよ、じゃあな」
そう言って、御者のじいちゃんは馬車を走らせた。
うんうん、NPCとは思えない。
さて、まずはあの馬鹿共に会わないとな……
俺がまだ始まりの街にいた頃にできた、友人達である。
会ったらちょいと面倒なことになるだろうが……まぁ、大丈夫だろう。
「あいつらどこにいるかなぁ」
俺は、町中を歩いてあの馬鹿共を捜す。
やっぱり始まりの街は広いなぁ、全く見つからない。まぁ、まだ一番いそうな場所を探してないから、見つからないのは当然か……
ならば、一番あの馬鹿共がいそうな場所へ向かうとしましょう。
雑貨屋と服屋の間の道に入って少し進む。幾十にも分かれた道を右に曲がり左に曲がって、ギリギリ人が二人は入れそうな路地裏を抜けてたどり着いた場所は、一般的にスラム街と呼ばれる裏社会の集合場だ。
さて、ここまで来れば多分……
「てぇぇぇぇぇい!」
いきなり降って沸いた踵落しをミリ単位で避ける。
「セイセイセイセイセェェェェイ!」
更に、ショルダータックル、正拳突き、ドロップキック、コースクリューブローと、どんどん躱して……
スキル発動『罠設置』
スキルチェイン『誘導』
「ンンギャァァァァァァァァァ!」
新作の罠『トリモチ』を使って俺を攻撃してきた相手を捕まえる。
「きったねぇぇぇぇぇぇ!」
うわ、なにこれちょっと笑える。
「よっ。久しぶり」
俺が声をかけた先、トリモチの上では、薄汚い服を着た小僧がジタバタと罠から脱け出そうとしていた。
「うっせぇぇ!なぁにが、よっ。久しぶりだぁぁ!?」
トリモチに絡まりながらのたうち回る小僧。こいつの名前はミタマ。俺の愛すべき友人(馬鹿)である。
この小僧はデスゲーム開始早々、裏世界にのめり込み、年の近い子供達を集めて『御霊組』を作った。実のことを言うと、今現在この街を取り仕切っているのは、このミタマである。服もよく見ると、汚く見せたブロンド物だ。
「えっ?七ヶ月だと久しぶりにならない?」
「そーゆーことじゃねぇんだよ!これ外せキチ●イがぁぁ!」
はいはい、キ●ガイですよ(確信)
このガキ変わらんな。
「いやぁ、愉快痛快。物凄く馬鹿に見えますことよミタマ君」
「ウッッッゼェェェェェェェェェェェ!」
しばらく笑って笑って笑って……あれ、笑ってしかいないな?まぁ、いいか。
俺は、改めてもう少しからかってやろうと……
「そこのあなた、何をしているんですか!」
……していた所で、邪魔が入った。
はぁ……
もっと、このガキをからかってやろうと思ったのに。
「見ての通りだが……」
少し声のトーンを落として応答し、声の主の方向を向く。
大きな三角帽子に黒いローブを羽織った小柄な少女だった。
服装から見て、魔法使い。そうでなくとも魔法職の筈だ。
うーん。絶対に勘違いしているよね?
少女の方は、既に臨戦態勢のようだ。
しかし……
俺は、少し思い至って少女に問いかけた。
「なぁ、お嬢さん。俺のどこが怪しい?」
うん。
この魔法使いの少女は完全に俺を敵対視している。
そんなに俺って怪しいか?
いや、確かにクソガキをトリモチで捕縛しているが……
「全体的に、です。目元の隈とか、黒装束とか、どう見ても悪役じゃないですか!」
え?
マジ?
少なくとも、大剣を装備しているからNINJAとかアサシンとかには見えない筈……多分。
「とにかく、その子を解放してください!」
…………。
「はぁぁぁぁぁ……」
深い溜め息を吐き、アイテムストレージを確認。
うーん。
これなら、あの罠が作れるな……
「嫌だと言ったら?」
ガキを一瞥して言うと、少女は手のひらをこちらに向けた。
「実力行使です!」
まぁ、こうなるよね。
少女の周りに黒い粒子が舞い、淡く輝き……ピリッ、と肌に不思議な感覚が伝わる。
ちょっと待て……この感覚は……『呪い』!?
「ギルティカース:スピード!」
隠しステータス、カルマ値によって変動する呪い『ギルティカース』
犯罪者相手なら、これ程有用な『呪い』は無い。
俺も、犯罪歴が無い訳ではない。
はい、ごめんなさい嘘つきました。ものっそい犯罪歴があります。カルマ値も半端ありません。
閑話休題。
『ギルティカース:スピード』を掛けられた場合、犯罪者は指一本動かすことができないだろう。
そう、普通は……
「やっぱり動くな」
肩をぐるぐると回して体が動くかどうか確かめる。
うん、問題無し。
「え、な、んで?」
驚愕する少女を尻目に、体のどこにも異常が無いかを確認……
ステータスにも異常が無いので……問題は無いと思う。
『ギルティカース』は基本ステータスをカルマ値の数値で倍にした分、ステータスがマイナスされる。
俺のステータスは器用さ極振りだ。その他の能力値が0になっている。
つまり、マイナスされる数値も0になる。
あっ、因にコレが現在のステータス。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
名前『ジャノメ』
性別:男
種族:人族
職業:罠師
レベル:63
HP:6300
MP:4380
STR:0
DEF:0
VIT:0
DEX:966(×2)>>1932
AGI:0
INT:0
BP:0
スキル
『罠制作Lv78』『罠設置Lv42』『隠密Lv31』『誘導Lv39』『大剣術Lv23』『極振り(DEX)』『偽装』
称号
《異世界人》《極振り》《犯罪者》《ボマー伯爵》《ジョーカー》
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「あぁれぇ?実力行使はどうしたのかなぁ?」
口元に手を当てて陰湿に笑う。
人を煽るのって面白いから止められない。
少女の額に青筋が浮かんだのを見計らって、俺はスキルを発動させた。
スキルブースト『罠設置』
スキルチェイン『誘導』
少女が空中に魔法陣を描き、黒い粒子が再び飛び交う。
感覚だけでわかる。
この呪いはヤバい。
恐らく、直接ダメージを与えるタイプのスキルだ。
俺が食らったらひとたまりも無いだろう。
「どうにでもなって下さい!『ギルティカース:フレア』ッ!」
粒子が魔法陣に浸透し、赤く輝く。
そして炎の奔流となって俺を呑み込…………まなかった。
確かに食らったらひとたまりも無い。
だから、食らわなければいいのだ。
原因はコレ。
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『魔力吸収装置』
レア度:★×8
効果: 周囲(半径10m以内)の魔力を吸収し続ける。
素材:鉄、吸魔草、魔法瓶
設置方法:『罠設置』
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どや?
すげぇやろ。
即席で作ったんやで、コレ。
因に、魔力を吸収し続けるので半径10m以内では魔法を使うことができない。
もちろん、その効果範囲には俺も入っているのだが……俺は魔法を使わないので全く関係無し。
さてさて、どう致しましょうか。
このままからかうのも一興かね?
俺は、背負った『錆びた大剣』を抜刀する。
そして……
そのまま地面に突き刺した。
「……遅いかもしなれいけど、闘う意思は微塵も無いから♪」
その後の少女は笑い物でした♪
ヒロインキターーーーーーー( ゚∀ ゚)ーーーーーーーーーーッ!
的に考えてくれれば、幸い。