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出会い

 ルードたちが隊商とはぐれ、遭難してから一週間後。

 出会ったのは、金髪の男性、茶髪の女性、黒髪の女性、そしてその女性の子供と思われる黒髪の幼女の四人のパーティだった。


「えーさっき川を渡ったばっかりで、天文台からも大して離れていないでしょ」


 三十代の黒髪の女性が不満そうに返す。


「そう思って川まで戻ったんだが、橋は消えていた」


「は?うそ。それこそ馬車も通れるくらいの立派な橋だったじゃない!」


 黒髪の女性はちらりと馬車に目線をむけて言った。


「上空からユキに何度も確認させたんだが、どこにも無かった」


 証明するために川まで戻るが、橋はどこにもない。


 彼らは方位磁石で地図と照らし合わせて、橋があったはずのところを確認し、

「ちょっと嘘でしょ」

 やがて、三十代の女がガックリとへたり込んでしまった。


「私たちが、手元に持っているのが、ドライフルーツ、砂糖、塩、米、多少の小麦、豆、卵など、合わせて、四人で一週間分。水は川から汲むなり、若の魔法でなんとかなります」


 栗毛のメイドが、所持食料を告げる。


「俺らも後、後五日分てところだ」


 ルードたちが森をさ迷い続けて一週間。

 馬車に食料はしっかり詰めてきたし、狩りをしてきたとは言え、またこれから何日も森をさ迷い続けることを考えれば少々心もとない。


 さてどうしたものか。最悪、彼らの食料を奪うことも...。


「冷静になろう」

「甘いもの食べたら、元気になれるよ」


 まあ、そうだが。

 明るい子供の声で、理性を取り戻す。子供から食料を奪うなんて、気づかないうちに相当自分を追い詰めていたようだ。


「そうです。乳は鮮度が命です」


 メイド姿の女性が食いぎみに力説する。


「わかった。わかった。砂糖、卵、牛乳...ついでドライフルーツを入れてよく混ぜながら温めて冷やす。だったような」


「私は、ドライフルーツ無しで!」

「わかったから落ち着け。精霊たち。分け前が欲しかったらちゃんとやれよ。あと余ったミルクはしばらく冷蔵で冷やしといたらいいだろう。」


「魔法使いですか?すごく細かい作業ができるんですね」


「いや、精霊使いだ。実際は精霊に遊ばれているが、餌で釣ったときだけはやけに協力的なんだ」


「女、今夜空いてるか?」


 アレックスが目を血走らて知り合ったばかりの女性に声をかけた。これから協力士会わなければならないのに警戒心を持たせるようなことするな!


「空いてないですが」「私マッチョはタイプじゃない」


 女性二人とも、アレックスから距離を取った。メイドは短剣を構えている。

 とりあえず早めに勇者の頭を杖でこついておこうか。間違っても同類認定されたくないし。


 ゴスッ


「一週間もさ迷ってて、やっと見つけた女だぞ」


「黙れ。少しは勇者らしくしろ。こいつ、ちょっと病気なだけでして」

「おまえも男なら俺の気持ちがわかるだろう?」


 アレックスは向こうのパーティーの唯一の男性に話を振った。


「黙れ。死ね」


 ガスッ。 これ以上第一印象を悪くするな。


「つうか、勇者じゃないのにハーレムとかおかしいだろ。一人くらいこっちに寄越せ」

「...」


 パーティーのリーダーらしき金髪の男の方はにっこり微笑んでポーカーフェイスを保っている。


「どうする?」

「さっさと...って、今変な単語混じってなかった?翻訳ミス?」


「おじさん勇者なの?」

「嬢ちゃん。せめて後五年年取ってから俺に声をかけな。たっぷり可愛がってやるよ」


「子供の敵!?」


 ぷしゅという音がして、何か液体が盛大にアレックスの顔にかかった。


「うぇええ。死、死ぬ。何しやがった!」


 アレックスが悲鳴をあげ、次いでモワーッと刺激臭が広がる。


「唐辛子とわさび、レモンとにら、にんにくを煮出した汁」


 はい?


 ぽかーんと黒髪の女性を...彼女の持つ武器を見た。


「痴漢撃退スプレー」


「この、うっえええぇ」


 仕方がないので、水魔法で勇者の顔を強制的に洗って(包んで)

「ごぶがぼ、ぶ、ぷ、がほ」

 水を遠くに、ぽいする。これで悪臭は少しましになった。


「おまこんなことして...っておい、おまえ役立たずの偽物勇者か?」


 アレックスの言葉で、金髪の男とメイドが同時に黒髪の女性を見る。彼女は不快そうに眉を寄せた。


「こんな変態知りませんけれど?」


「王宮で見かけただけだ」


 彼が女性を見間違えるはずがない。


「勇者なんですか?」


「えぇっと?」


 ルードが彼女に近づいて問うが、黒髪の女性は答えあぐねて首をかしげている。

 どういうわけか彼女はこの世界に召喚されて、最初に王命を受けた勇者。


「フフフフ、ファハァはっはっ。的が増えたこれで勝てる!」


「やばい」「逃げますか?」「ココア、若様から離れちゃダメよ」「うん」

「大丈夫か、ルード?」「ど、どうしたんですか?」《何かしらないけれど気をしっかり持って》


 嬉しすぎて高笑いしてしまった。初対面のパーティばかりか、アレックスとルシア、メーナにまで不審がられた。


「私はルードリット。ハーデン。失礼ですがあなた方は?」


 彼らは互いに顔を見合わせて、まず男が答えた。

「クラウス」


「私は由香里」

「ここあ、8歳です」

「ココ明らかに不審者なおじさんには答えちゃダメよ」


 ユカリ……。おもいっきり日本人名だ。おじさん扱いされたことは目をつぶっておう。


「私はメイドと呼んでいただければ十分です」


 展開ぶった切って、現れたもう一組の勇者一行。この女は辛子水鉄砲でアレックスを撃退できたし、精霊使いも結構レベルが高い。メイドは短剣を持っている。子供だけは少々不安だ。この面子でよく砂漠を越えられたな。


 人数が増えたのなら、回復役がもう一人欲しい。とてもルシラ一人で全員はカバーできないだろうし、下手したら、増えた彼らが足手まといになる可能性もある。精霊使いが回復魔法を使えるのなら良いが...。


 などと思っていたら、少女がぽてぽてとアレックスに近づいた。


「おじさんいたい?」

「なんだガキ」


 まだ目をびばたたかせているアレックスに物怖じせず、アレックスの顔にかざして「いたいのいたいの飛んでいけ」と言うと、ミノに蹴られた痕や真っ赤だった目の色が薄れた。


「 大じょう夫? いたくない?」


 子供は首をかしげる。ああ、この子が聖女なのか。


「ちょっとましになったぜ。大きくなったら俺の女に...。」


 ユカリと名乗った女は青ざめたまま、どこからか取り出したフライパンでアレックスをガスッと殴り付けた。

 だーかーらー、なぜ交渉しづらくするんだ?うちの勇者(バカ)は。


「この男のことはふんじばっておきますので、森を抜けるまでは互いに協力しましょう。なんなら《静寂》呪文をかけた上、猿ぐつわを噛ませますが...。」


 例え子供だろうと貴重な回復役は、ぜひ確保しておきたい。


「どうする?」


 金髪の男クラウスが深くため息をつき、自身のグループの女性陣に意見を求めた。本人はこの話に乗り気ではなさそうだ。

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