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故郷と兄との再会

「塔が見えたわ!」


 ナツメヤシの道の先に塔がみえたら、オアシスか隊商宿がある。それを発見するといつもほっとする。


 由香里たちは小カザルの端、シブのオアシスにたどり着いた。東の白い山は少しづつ近づいている。


 最初、本気で襲ってくるモンスターやら砂賊にびびったが、特訓のお陰か、割りと混乱せずに戦闘に参加できた。

 羊皮紙の古紙を丸めて、縄で縛ってブンブン振り回したり、水鉄砲で敵の動きを止めたり、木の実で作ったテニスボールを打ったり、近づいてくるモンスターに輸送中に欠けてしまった陶器の壺やら皿を投げつけたり、メインで役にたったわけでは無かったが、一応攻撃力の足しにはなっただろう。

 蛙を砂漠のにも抵抗なくなってしまったし。順応って怖い。


「やっぱりオアシスっていいよね。みているだけで心が癒されるわ。あとでバザールに寄らせてね」


 水鉄砲用の唐辛子とわさび、レモンとにら、にんにくは買い込んどかないと・・・。料理に使うのはもちろんのこと、砂賊にもモンスターにも結構効くのだ。


「シブの町はナツメヤシとメロンとスイカ、ぶどうなどが有名ですね」


「スイカ!メロン!ママ買って!」


「お客さん、ワインはいかがですか?」


 町の入り口で町の人が旅人にウェルカムドリンクを配ってくれる。ただで配ってくれているわけではなくティッシュ配りのような客引きの一環なのだが・・・。


「ありがと。ジュースをお願いしたいんだけれど」


「ありがとうおじちゃん!」


 娘が、早速ブドウジュースをいただいた。


「今日の宿はお決まりで?」


「すまないが決まっているよ」


 いつもは隊商と同じ宿に宿泊しているけれど、今日は実家に泊まるのだろう。


「良いワインだ。良いワインを出せるならよい宿だ。私らが使わせてもらおう。して宿の名は?」


 すげなく答える若様の代わりに隊商のおじさんたちが、にこやかに勧誘に応じた。


「若様、ここには二泊して、商売にいそしむ予定だ。いつも通り中央広場で落ち合おう」


「若様、ご実家には・・・」

「兄に顔を出すのは嫌だが、立ち寄ったからには親に顔のひとつも見ておかないと」


「家族と仲悪いの?」


「家族に暗殺者を送り込まれるほどには・・・私は下請けしただけですから、依頼者の名前までは存じませんが」


 ◇\


「ほえー。貴族って本当だったんだ。」


 門番はクラウスの顔をみるとすぐ、屋敷の中に通してくれた。


「お前なんで帰って来た?」


 クラウスの顔を1・5倍ワルにしたようなおじさんが出迎えてくれた。


「たまたまだ。俺の所有物を手に入れたら、さっさと出ていく。父は?」


「お前が、戻ってくるなり部屋に引っ込んだよ。その二人は?」


「私? 人に名を聞くときはまず自分から名乗られたほうがよろしいと思いますが?」


「トーマおじちゃん?」


 娘が首をかしげる。


「なんだ。この子供は? お前の子供か?こいつも化け物か?」


「なっ!はあ!?うちの娘をいきなり化け物呼ばわりするなんて頭おかしいんじゃないの?」


 娘は見知らぬおじさんに悪意ある言葉にビックリしすぎてぽかんとしている。


「兄上、口を慎んでください。一ヶ月で百の魔法を覚えた才媛です」


「百って、そんなに?聞いていないけれど」


(私が、水鉄砲やら、張りぼて岩回しを覚えている間に、そんなに覚えていたの?)


「やっぱり化け物じゃないか」

「回復魔法はほぼほぼ覚えている」


「ち、巫女か」


「歓迎されていないみたいだし、私たち隊商さんの方に合流するわ、ね?」


「いかないでくれ」


 すがり付かれても、人様の家庭の問題に首を突っ込みたくない。ずいぶん難いの良い体格しているくせになんか今は萎びたほうれん草みたいだ。


「用事が終わったら、さっさと出ていけ」


 夕食前に、武器庫を漁ることになった。

 眠たそうな心愛をリズに預け、若様と二人薄暗い武器庫に行く。


「カウリー級の物がいくつかあると言われている。旅人が地獄の釜から作った、虹色の蜘蛛の水衣、雷様のステテコや武器。本物かどうかは知らないが」


「防具があるなら助かるわ。鎖帷子とかぜったい着れないもの」


 女性用の防具は少ない。あっても、革鎧などだ。カウリー級の防具もほぼ皆無。

 持っていた短剣のいくつかは行方不明になったり、腐食したりで使い物にならなかった。

 ダーツ矢も補給しないと・・・。


「私なんかでいいなら聞くけれど」

「俺はチェンジリングで生まれつき精霊に好かれて・・・憑かれていると言ったほうが正確か。いろんなことを隠しきれなくて、失敗したんだ」


 (チェンジリングって、取り替え子のことよね。妖精と取り替えられるとかいう)


 毎晩、ミラーボール騒動が起こっていたら、ちょっとびびるかもしれない。


「・・・でも、」


「おまけにここらへん一帯は、地獄の穴に近くにあるせいで、精霊主義者を悪魔の手先扱いする風潮にある」


「ちゃんと、大切にしてくれる人はいる。リズさん」


 彼の指が由香里の髪の先に優しく触れる。


「そうだな」


 武器庫探索にリズではなく由香里を選らんだのには首を傾げるしかないが、とりあえず唐突に髪の先っぽを弄るのは本日に限っては指摘しないでおこう。リズにしてあげたほうが喜ぶし、絵になるに決まっているのに。


 それにしても、こういうのは美形がやるほうが似合う。由香里の髪があともう数センチメートル長かったら様になっていたかもしれない。夫がもし急にこんなことしたら爆笑してしまっただろう。

 隊商宿に立ち寄る度に、時間の許す限り和馬を探した。隊商の人も独自の(つて)を使って手がかりを探してくれるが、それでも会えない。王都に置いてきてしまったのか、他の町で行き倒れているか、それともあの赤い炎のーー。


「だいじょうぶか?」

「うちの人(夫)だったらこのシチュエーション絶対似合わないなと思って」


「ひどいな」


 くしゃりと頭を撫でられて、なぜだか一滴だけ涙がこぼれてしまった。


 ■


「お部屋の準備が整いました。お食事を用意しますので、是非泊まってください。」


 夕方近くで、若様も用事があるって一晩だけ止まったが、翌日の朝に合流。隊商の人にくっついて必需品の買い物を済ませる。

 商売のプロはすごい。普通に半額以下に値切ってくれるから助かる。交渉に時間をかけすぎるのが、ちょっと退屈だが。


「柿に苺に、林檎。杏に、スモモ、ついでに葡萄。遠い南国のパイナップルまで。おいしい果物なんでも揃っているよ」


「ママ、あれ」


 宿に帰りたがっていた娘が急に元気になった。

 色とりどりのドライフルーツが並んでいる。甘味はナツメヤシを毎日食べているが、色々なドライフルーツの山は宝石の山のようだ。

 この世界に来て、食事に不満を覚えていた由香里も心引かれるが、でも結構高い。


「食べ過ぎないって、約束してくれるならおじさんがあげよう。主人、ドライフルーツを十袋。それに、そこのナッツの詰め合わせを一袋。」


 おかげで、娘の大好きなフルーツを予定以上に買えた。ぐずった時にはこれが一番だ。


「世界にここにしかない。地獄の釜をちょいと、見てみるかい?」


「あっつ。こっわ。マグマ?」


 かなり離れているが、ちらっとみえるだけで、まさに地獄の底という感じだ。暑いのに背中はなぜかぞくぞくする。


「ここから悪魔が出てくるって考えも納得だわ」

「そしてその悪魔は赤子にとりつく。魔術師否定派は今でもそこそこ多い。あまり遅く」


 心愛が、まるで吸い寄せられかのように、ふらふらと穴に向かってあるきだした。


「心愛!勝手に動いたらダメでしょ!」

 心愛がぶるぶる震える。火事を思い出してしまったのだろうか。


「ママ・・・糸がぐちゃぐちゃ・・火怖い」

「ごめん・・・大丈夫よ。絶対帰れるから」


 娘をぎゅっと抱き締めた。

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